グロースハッカーこそがマーケティングの基本を理解しているのかもしれない。ライアン ホリデイのグロースハッカーの書評。

今年も連日面白い書籍に出会えて、とてもハッピーなスタートが切れています。
新しい書籍に出会うことで、古い自分のカラーを捨てられます。
今日ご紹介するグロースハッカー(Growth Hacker)ライアン ホリデイ著
古い時間とお金をかけたマーケティングから新しいソーシャル型のマーケティングに
時代がシフトしていることを教えてくれる好著です。

まず、グロースハックの定義を明らかにします。グロースハックとは
インターネットとソーシャルメディアのツールを使い追跡とテストを繰り返し
最小限の投資でより多くの見込み客とリピーターを獲得する手法です。
旧来型の勘に頼る非生産的なギャンブル的なマーケティングではなく
日々、 データやユーザーの声を分析し、開発とマーケティングを融合させ
ユーザー数を増やし、顧客を満足させる仕組みを作り出すことで
企業を短期間、低予算で成長させるマーケティグ活動です。

そして、グロースハッカーは高度なIT技術を有したマーケティング担当者で
今のアメリカのベンチャー企業では必須のスキルになりつつあるのです。

本書は、とてもコンパクトにグロースハッカーについて整理していますが
DropboxやEvernoteがどうして短期間に急成長できたがよくわかります。
そして、グロースハックが実は新しい手法でありながら
マーケティングの本質をしっかり突いていることがよくわかります。

マーケティングとは、何をを明確にし、誰に伝えるかを考えることなのです。
その際、製品、プロダクトを日々改善し
それが誰に役立つモノなのかを決めることなのです。
プロダクトとユーザーを定義し、誰が自分たちの製品を評価し
応援してくれるかを見極め続けることなのです。

その際、ITとソーシャルメディアを駆使し、ユーザーの声を分析し
誰がなぜ、自分たちを応援してくれるかを見つけることなのです。
以下、本書のユーザーの声を聴きながら、製品を改善するPMFについて引用します。

グロースハッカーが「プロダクト・マーケット・フィット(PMF)」と呼ぶレベルにサービスが到達するまで、長い時間をかけて調査とイテレーションを行っている。PMFとは、サービスと顧客(のニーズ)が完全にシンクロする状態を指す。『リーン・スタートアップ』の著者、エリック・リースは、PMFを獲得する最善の方法は、まず「実用最小限の製品」でスタートし、ユーザーからのフィードバックに基づいて改良していくことだと説明している。旧世代のマーケターが、サービスが完成してからマーケティングを始めるのとは対照的だ。今や、PMFへの到達はマーケターの仕事だ。マーケターは、PMFが奇跡的に達成されるのを待つのではなく、このプロセスに参加する必要がある。サービスの顧客を見極め、彼らのニーズを把握し、圧倒するようなサービスをデザインするーこれはすべてマーケティングの決定であり、開発設計のプロセスではない

 
また、ITベンチャーだけではなく、一般商材にもグロスハックの考えは応用できます。
私も実は乗り遅れるな! ソーシャルおじさん増殖中!をリリースした際には
この考えを使い、タイトルやSPのプランを作成しました。
実際、動画でのレコメンドやブロガーの方に書評で取り上げられたり
ソーシャルメディア上で多くのみなさんから応援いただけました。

書籍のマーケティングについて書かれた文章をグロースハッカーから引用します。

失敗する書籍というのは、著者が何年も閉じこもって執筆し、書き終えたものを出版社に渡すものが多い。そういう著者はベストセラーを夢見るが、実現することはまずない。一方で、書籍を出版する前に大々的にブログを書きまくる著者もいる。彼らはブログの読者から強い反応があり、自分でも自然と関心を強めたテーマに基づいて書籍のアイデアを構築する(ある著者は、自分のプログサイトが検索結果に表示されているグーグル検索ページの画面ショットを使った企画書を持ってきた)。こういう著者は、執筆中の書籍のアイデアをプログに書いてみたり、講演の際に話してみたりする。彼らはブログの読者に、書籍でどんな内容を読みたいか尋ねる。テーマの可能性をブログ投稿へのコメントの数や、フェイスブック上で何回共有されたかで判断する。タイトルやカバーの案をオンラインで公開し、A/Bテストでフィードバックを求める。影響力のあるプロガーが扱っている旬のテーマを探し、それを書籍に取り込む方法を考える。後者のような著者は、前者が絶対に達成できないPMFに到達する。


グロースハックを行う際には、以下の質問を繰り返すとよいと思います。

顧客がこの製品を話題にする理由はあるだろうか?この製品には顧客が人に薦めたくなるような工夫がしてあるだろうか?そもそもこの製品には話題にするだけの価値があるだろうか?私を含めて、この疑問にあえて答えようとする人は驚くほど少ない。

実際、Dropboxはユーザーが喜ぶキャンペーンでバズを巻き起こし
類い稀な成功をおさめています。
サービスのトップページには「無料で容量アップ!」というボタンを追加し
友達にDropboxを紹介し、その友達が会員登録すれば
紹介した友達1人につき500MBずつストレージ容量を
無料でもらえるというキャンペーンを実施しました。
その際、招待された側の友人も500MBをもらえるというモノで
Dropboxも既存ユーザーも新規ユーザーも喜ぶ三方よしの企画だったのです。

今では、ドロップボックスのユーザーの35パーセントは紹介プログラム経由でサインアップしている。ここで言いたかったのは、ただ一つ。”ゴー・パイラル”したければ、クチコミの種を製品の中に仕込む必要があるということだ。製品の中にクチコミを拡散したくなる理由と、拡散するための手段が内在していなければならない。簡単なことではない。だが、この視点で世の中を見るようになれば、あなたもチャンスを見極められるようになるだろう。動画をユーチューブに投稿しただけでは1000万ぺージビューを獲得できないことを理解するだろう。その動画がコミュニティで注目を集め、話題に上るためには、そうせずにはいられないような理由が必要だ。顧客があなたの製品やサービスを自ら宣伝するエバンジェリストになるのをただ待っていても無駄だ。顧客がエバンジェリストになりたくなるようなインセンティブとプラットフォームを提供しなければならない。


みんながハッピーになるという企画を作れるかがポイントですね。
バズを起こすユーザーのモチベーションをプロダクトを改善しながら
作り上げる姿勢は多くの企業が見習うべきだと思います。
そのためにはユーザーの声を徹底的に聴くことが必須ですね。
簡単にバズが起きないことも、本書では紹介されています。

みんな、「ゴー・バイラル」1人から人への急速な情報伝播から恩恵を受けることーは魔法のようにどんな製品にも起きることだと思っている。だが、クチコミは偶然発生するものではない。 あらゆる場所で話題になりたい、動画を数百万回再生してもらいたい、ツイッターの「トレンド」になりたいーこういう感覚はよくわかる。こういうマーケターは、あらゆるところに行こうとして、結局どこにもたどり着けない。なぜなら、”あらゆる人”のほとんどは自分の製品のユーザーにはならないからだ。グロースハッカーはこの誘惑(というか、もっと適切に言うと、妄想)を退け、アーリーアダプターだけを魅了するよう慎重に動く。しかも、可能なかぎりコストを掛けない方法を探す。実際、この本に登場する挑戦的な新興企業やサービス、アプリが必ずしも有名だったり日常的に話題に上るものだったりしない理由は、創業者たちが成長を目指して製品開発に集中してきたからだーその結果、余計な”バズ”なしで今やユーザー数百万人規模になっている。彼らは、少なくともスタート段階では、マスマーケットに訴求したいという衝動を無視することで、結果的にマスマーケットにリーチしたのだ。 

ターゲットを明確にすること、プロダクト彼らに喜んでもらうことが
バズのスタートラインであることを私たちは認識しないといけないのです。


本書でも紹介されていますが、Evernoteのフィル・リービンの言葉を最後に引用します。
「最高のサービスを作ることばかり考えているようでなければ、
最高のサービスなんて作れないんだ」
今後のコンサルの際に、この言葉を肝に銘じて活動したいと思います!


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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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