デイヴィッド・ブルックスの「あなたの人生の意味」の書評

道徳的に優れた人間には、そういう人間だけの喜びがあり、その喜びは周囲に放散される。他人が刺々しい態度で接してきた時でも、柔らかく応えることができる。不当な扱いを受けても、大げさに騒ぎ立てることはしない。たとえ侮辱されても、堂々としている。挑発を受けた時でも、自分を抑え、怒るようなことはない。彼らはただ黙々と自分のすべきことをする。たとえ自らを犠牲にして他者に奉仕する時でも、それを誇示するようなことはない。ただ日々の食糧を調達するような淡々とした態度でそれをする。(デイヴィッド・ブルックス)


photo credit: dedrawolff #winnieandwalter #kindness stamps and #echopark stencil along with #claritystamps #claritybrushes. Christmas gift from youngest son. via photopin (license)

ニューヨーク・タイムズのコラムニストのデイヴィッド・ブルックス
『人間には2種類の美徳がある。「履歴書向きの美徳」と「追悼文向きの美徳」だ』という言葉を
アマゾンで見つけ、あなたの人生の意味――先人に学ぶ「惜しまれる生き方」を衝動買いしました。
ここには現代人とは異なる道徳的な生き方をした10人が紹介されています。
著者のデイヴィッド・ブルックスは1945年の8月15日のラジオ番組の再放送を聞くことで
今とは違う生き方を送っている人たちの言動に感動を覚えます。
戦争に勝ったと浮かれるのではなく、自分の内面との対話を重ねる人たちがいたことに
デイヴィッド・ブルックスは驚きます。
思いやりの心や慎ましさを持った当時の人たちに興味を持ち、本書を書き上げたのです。

今日はデイヴィッド・ブルックスの言葉を紹介しながら
本書あなたの人生の意味の魅力を伝えていきたいと思います。

人生を送るのなら、総じて今の時代の方が良いというのは確かである。ただ、過去にはあったはずの美徳の一部が、現在の人間から失われてしまっているのも一方で事実だ。以前は何世紀にもわたって当たり前に存在したものがめったに見られなくなった。たとえば、かつては自らの欲望を否定的に見る人が多かった。自らの長所ではなく欠点に目を向け、それを克服すべく努力する人が多かった。生まれつきの欠点を直す努力、また弱みを強みに変える努力をするのが普通だった。そういう時代には、自分の考えたこと、感じたこと、成し遂げたことを瞬時に全世界と共有しようなどと考える人は少なかっただろう。

当時の人たちは自分の強みを伸ばすのではなく、弱みを改善することで
自分を成長させていたのです。
自分の欲望を否定的に見るなど生き方は今とは全く異なっていますが
弱みを克服することで、自分の内面を鍛えることに成功します。
強みを伸ばすばかりで、弱みを強みに変えていく生き方を忘れていた私は
本書からレジリエンスのヒントをもらいました。

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著者のデイヴィッド・ブルックスは、現代人と昔のアメリカ人をわかりやすく比較しています。
昔はメッセージの書かれたTシャツなどを着て、目立とうとする人はいませんでしたし
タイプライターには「!」記号のキーすらありませんでした。
各種難病の患者に対する支援の感情を表現するリボンもなかったですし
バンパーにステッカーを貼って、自らの思想、信条を知らしめることもしませんでした。
車のリアウィンドウに貼ったステッカーで旅行した場所や
卒業した大学を知らせることもなかったのです。
自分の存在をアピールするのではなく、自己鍛錬に時間を使っていたのです。
自己宣伝や自画自賛を強く戒める雰囲気が、当時のアメリカ社会にはありました。
自分を必要以上に大きく見せようとするなどもってのほかとされていたのです。

謙虚を良しとする文化から、自己顕示を良しとする文化への変遷は実際に起きたらしいとわかった。それは「小さい私」の文化から、「大きい私」の文化への変遷と言ってもいいだろう。文化は、自分をできるだけ小さく見せ、自分を脇に置くようなものから、自分をできるだけ大きく見せ、自分を宇宙の中心に置くようなものへと移り変わっていったのだ。

フランクリン・ルーズベルト大統領の側近だったハリー・ホプキンスは
第二次世界大戦で息子を一人失ったのですが
軍の幹部たちは、ホプキンスの他の息子たちを危険な任務から外そうとしました。
その際、ホプキンスは、『息子の一人が「太平洋で少々の不運に見舞われた程度」のことで
他の息子たちが危険を免れるなどということがあってはならない』と言い、申し出を断ったそうです。
昔のアメリカ人には謙虚という美徳があったのですが、それは今は見る影もありません。

最近のトランプ大統領の家族やスタッフの言動は
このホプキンスとは真逆で、私は危機感を持っています。
周りの人のために貢献することがないがしろにされ
「自分が、自分が」と前に出るのがあまりにも鼻につくようになってきました。
目立つことも確かに大事ですが、謙虚さを持ち合わせることも重要です。
両方のバランスを上手に取らなければ、世の中がうまく回っていきません。

人間は謙虚になると、自分がいかに優れているかを証明する必要から解放される。自尊心が強いと、常に飢えに苦しむことになり、また狭いところに閉じ込められて窮屈な思いをすることになる。自分を認めて欲しいという渇望に苦しむのだ。また、常に他人と競争し、他人との違いを際立たせなくてはならないので、行動に自由度が少ない。謙虚になると、他人を称賛したくなるし、また他人と協調する気になる。他人への感謝の気持ちも生まれる。どれもが心地の良い感情である。

デイヴィッド・ブルックスは、謙虚になることの重要性を語っていますが
他人との競争を意識するよりも、謙虚になる方が価値があることがわかります。
仲間との協調を考え、感謝の気持ちを持つことで、幸せな気分を味わえます。

人は自らを黙らせるようになる。自分を黙らせない限り、世界を正しく見ることはできないのだ。自分を黙らせない限り、他人は理解できないし、他人のありようをそのまま受け入れることはできない。自分を黙らせると、新たに空間が生まれ、そこに優しさや思いやりの心が入り込んでくる。自分が実は思いがけない人たちに助けられているのだと気づくこともある。

当然、今の時代にはパーソナルブランディングは欠かせません。
アウトプットすることで、多くのチャンスを得られます。
しかし、自分を黙らせることも時には必要です。
冷静にならない限り、世界を客観的に見ることはできません。
人の意見を聞くこと、傾聴すること、相手を認めることを
忘れないようにしたいと思います。

本書の登場人物はトランプとは正反対の人たちですが
彼らのような昔のアメリカ人の方が、私には新鮮に感じられます。
目立つだけでなく、時には黙り、人の話をしっかり聞くことで
相手との関係を改善できるのです。
自分の内面と対話したい方には、オススメの一冊です。

今日もお読みいただき、ありがとうございました!

      

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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