バリー・シュワルツの「なぜ働くのか」の書評

あらゆる仕事に、人に満足を提供するという要素が内在しているのだということです。多様性、複雑性、技術的修練や成長といったものを仕事に求めることは可能なのです。主体性を持って物事を見られる人々が、そうした仕事を通じて生まれるのです。そして、おそらく最も重要な点は、他者との幸福な関わりを通じ、仕事は有意義になるということです。(バリー・シュワルツ)


photo credit: DafneCholet Panning** via photopin (license)

働く意味とは何か?

TEDの良質なスピーカーであるバリー・シュワルツ
なぜ働くのかは日本の経営者にぜひ読んでもらいたい一冊です。
従業員に残業を強いるよりも、はるかに企業を改善できるヒントが
本書にはたくさん紹介されています。
まず、従業員はお金のためだけに働いているのではないということを理解すべきです。
金銭的なインセンティブやルーティン化した作業の徹底的な監視では
従業員はやる気を失い、ひどい仕事が社内に蔓延していきます。

ではどうすれば、従業員は楽しみながら、働けるようになるのでしょうか?
多くのアメリカ人は働くことは給与を得るためで
つまならないものだと考えています。
しかし、仕事に満足感を感じ、幸せに働いている人もいます。
その違いは一体どこから生まれるのでしょうか?

日々の仕事を楽しく変えるためには、人とのつながりを意識すべきです。
自分の価値を通じて、人に貢献していると理解できれば
目の前の仕事をワクワクなものに変えられます。
自分の労働が世の中に役立っていると理解できると
同じ仕事をしていても、働き方が変わることがわかっています。
アダム・グラントは仕事の中に潜む他者へのポテンシャルが鍵になると指摘します。

本書には奨学金の寄付金集めというつらい仕事が紹介されています。
多くの学生たちの勧誘電話は無視されたり、冷たく切られてしまいますが
アダム・グラントは勧誘の目的を学生に意識させることで
結果に大きな変化が生じることを発見します。
奨学金をもらった学生をコールセンターに連れてきて
感謝の念を伝えることで、彼らに仕事が変化したのです。
賃金などの条件が変わらないにも関わらず、電話の成果が倍増したのです。
自分たちの努力がもたらす結果を目の当たりにすることで
モチベーションが生まれ、彼らの働き方が激変したのです。

働き方がポジティブになると人生をワクワクなものに変えられます。
バリー・シュワルツの次の言葉を読むと、経営者が何をすべきかがわかります。

ネガティブな心理状態にある人は防衛的になり、間違いを犯したり誤った方向へ進んでしまうのではないかと恐れます。危機が迫ると、私たちは視野狭窄に陥るのです。しかし、そのような恐怖がなく、仕事から満足感を得られれば、その前向きな心理状態により、より良く働いて、そのことでさらにポジティブな心理状態が生まれ、結果として仕事がうまく運びます。ポジティブな状態とは自己増殖するものなのです。仕事がどんどんうまくいき、働く人々の満足度がどんどん高まる環境が形成されます。そして、労働者も、雇用者も、クライアントも、顧客も、誰もが得をするのです。

経営者、従業員、クライアントのつながりができれば
生産性が高まり、みんなが幸せになれるのです。
ポジティブな心理状態を作る仕掛けを経営者は意識すべきです。
給料やノルマなどに頼る前に従業員に仕事の価値を教えるのです。
そして、その価値を従業員とともに深堀していくのです。

ジェフリー・フェファーの機能する組織の共通点

本書には人材を活かす企業で有名なジェフリー・フェファー
機能する組織の共通点が紹介されています。
とても興味深い話なので以下引用します。

機能する組織の共通点
1、提供する福利厚生の水準が高く、それによって従業員の忠誠心と信頼が構築される。
2、各チームの自己管理を信頼し、意思決定を中央機関に頼らない。つまり、従業員に、より多くの決定権が与えられている。そのことにより信頼関係を深め、同時に従業員の監視を主な役割とする人員の必要性が低下する。
3、市場の平均より高い賃金が支払われることで、従業員は自分が評価されていると感じられる。反面、個々人のやる気を上げるためのインセンティブには、あまり重きが置かれない。組織が成果を上げると、すべての従業員になんらかのかたちで利益の分配がなされる。全員が一体である。
4、未経験者に対しても経験者に対しても、職業上の育成を広範囲にわたり提供する。こうした育成は職員に対する重要な投資であり、やはり忠誠度と信頼度を増強するものである。継続的な育成は、職員が常に新たなチャレンジと向き合い、技能を高めることを意味する。
5、被雇用者の業績の評価は行なうが、その業績評価を過大視せず、充分な育成の成果として、いずれすべての職員が組織のために、正しく活動し成功へと到達すると信じている。
6、企業理念を重視し、それをCEOが折に触れて訓示するのみならず、上層部から末端にいたるあらゆる活動において強調される。

このジェフリー・フェファーの6つの共通点を読むと
日本のブラックな企業が、今後負け組になることがわかります。
逆にこれらすべてを兼ね備える企業を目指せば
リーディングカンパニーに生まれ変れます。
出来高報酬などのインセンティブや厳密な管理体制は時代遅れな働き方で
社員も経営者も不幸になるシステムなのです。
社会を良くするという経営者のビジョンがあり
それを共有している会社が強い会社なのです。

まとめ

顧客への貢献を理解させ、社員の自主性に任せることで会社を強くできます。
社員も幸せを感じながら働けるので、会社の空気をポジティブなものにできます。
より良い仕事を成し遂げようという社員のモチベーションを高め
企業体質を強くすることを経営者は目指すべきです。
社員を資産として捉え、従業員とともに成長を目指す経営者が
真のエクセレントカンパニーをつくるのです。  

今日もお読みいただき、ありがとうございました!!

     

    

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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