イヴォン・シュイナードの社員をサーフィンに行かせよう―パタゴニア創業者の経営論の書評

私の役目は、社外に出て、新しいアイデアを持ち帰ることだったと言える。会社には、外に出て世間の温度を体感してくる人間が必要だ。だから、私は、新製品や新市場、新素材などのアイデアを見つけてはわくわくしながら帰社していたわけだ。ところがそのうち、世界がすごい勢いで変わっていくのを見るようになり、帰社すると環境や社会の荒廃について語ることが増えていく。(イヴォン・シュイナード)

80年代のイヴォン・シュイナードとパタゴニアの先進性を振り返る

経営者の仕事の一つに社会との接点を持つことがあげられます。
変化する世の中の課題をしっかりと見つけ
ソリューションを提案し、新たなマーケットを創造するのです。

世の中の課題としっかりと対話するパタゴニアのイヴォン・シュイナード
新版 社員をサーフィンに行かせよう―パタゴニア経営のすべて
リリースされたので、早速再読しました。
パタゴニアはマーケットだけではなく、社員の課題を見つけ
それらを解決する経営で世の中を驚かせています。

1980年代半ばから90年にかけて、会社の中に託児施設を作ったり
健康的な食事を提供するカフェテリアをオープンさせるのです。
働きながら社内で子供と食事をする時間を生み出すなど
理想的な職場を実現していきます。

我々は、動植物の生息域を守る活動やよみがえらせる活動をしている小さな団体に寄付をするようになった。大きなNGO(非政府組織)を選ばなかったのは、そういうところにはたくさんの職員を抱えて間接費が多く、企業とのつながりが強いからだ。そして、1986年、毎年利益の10%を寄付すると宣言。のちには支援額を増やし、売上のー%か税引前利益の10%のいずれか多いほうとした。以来、利益が上がっていようがいまいが、この誓いは守っている。

また、環境破壊に対しても早い段階から、寄付を行います。
彼らのビジネスは自然がなければ、成り立ちませんから
NGOやNPOに積極的に支援を行うことを決め
鮭の住む川をよみがえらすなど、次々に成果をあげていきます。
イヴォン・シュイナードはサステナブルな会社経営を
早い段階から志し、成功させた理想の経営者なのです。
彼は顧客と直接話すために、直営店にも力を入れ
東京にも1989年に進出するなどスピーディな海外展開を行いました。
そして、今も真のグローバル企業になるために
日々、思考とデザインを変化させているのです。

パタゴニアが100年企業になるために

しかし、成長は長続きしませんでした。
1991年にパタゴニアは大量生産による過剰在庫で、危機的状況を迎えます。
あれほど社員を大切にしていたパタゴニアに転機が訪れ
仲間を解雇せざるをえなくなったのです。

ここで彼らは自分を見つめ直し、一から会社の理念を作ることにしたのです。
100年先もパタゴニアを存在させるために
彼らは自分たちの価値について、徹底的に考えました。

なぜこんなことをしているのかがわかった。環境活動に寄付をしたいという気持ちにうそはない。だがそれ以上に、私は、パタゴニアでモデルを確立したかった。我々のピトンやアイスアックスが他メーカーのお手本となったように、環境経営や持続可能性について考えようとする企業がお手本にできるモデルを確立したかった。

理念策定後、パタゴニアは一気に息を吹き返します。
焦点が定まり、ブレがなくなることで、経営が安定したのです。
そして、稼いだお金を彼らは世の中に還元します。
理念を社員としっかりと共有することで
世界中の社員は誰でもどこにいても、自ら動けるようになります。
彼らのミッションステートメントをパタゴニアのサイトから引用します。

最高の製品を作り、環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える。そして、ビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する。

パタゴニアが環境保護のために使った金額を見ると
彼らの素晴らしさを再認識できます。
有言実行するパタゴニアの経営者と社員のパワーを
私たちも見習うべきだと思います。
その点をイヴォン・シュイナードも誇りにしています。

我々が一番誇りに思っているのは、販売の数字でも製品ラインアップでもない。1985年以降、草の根の環境保護活動などに現金や現物で総額7900万ドルもの寄付を行ってきたことだ。その成果は、皆伐をまぬがれた古い森、原野に掘られずにすんだ鉱坑、散布されなかった農薬など、回避できた危機の数で評価している。この成果は、また、目に見える形となっている。

今年の日本の異常気象を見ていると地球温暖化の影響が
私たちの生活を脅かしています。
パタゴニアモデルを多くの経営者が意識するだけで
環境破壊を防げるはずです。

気候変動の影響が次第に大きくなっているいま、消費は美徳という考え方を一人ひとりが見直さなければならない。消費者ではなく所有者になろう。どうしても必要でないかぎり新たな負担を地球に強いるのではなく、修理をしよう。(ローズ・マーカリオ)

お客様に消費者ではなく、所有者になってもらう道を
パタゴニアは絶えず選び、変化し続けます。
コアな所有者のために、彼らは流行を追うこともせず
本気でパタゴニアを必要としている人たちのために働きます。

天然素材にこだわり、洗濯してもダメにならないウェアを製造し
積極的に自社製品を修理するなど消費の総量を抑えることを厭いません。
以前、パタゴニアの考え方を以前もこのブログで紹介しましたが
今回、CEOのローズ・マーカリオの言葉を読むことで
ますますパタゴニアのファンになりました。

最後にイヴォン・シュイナードの言葉を紹介します。

100年先も存続している企業とは、危機意識を持ち、あえて外縁部に身を置いて多様性や新しいやり方に触れ、進化していく企業だけだ。

のんびりしたカルチャーであるにも関わらず
絶えず変化しているからこそ、パタゴニアは強者になったのです。

まとめ

最高の製品を作るために最上の託児所を作り、最高の製造部門を用意し
最上の仕事をするパタゴニアの強さを本書で学べました。
デザインだけでなく、耐久性や品質、機能性、修理可能性など
経営者と社員がルール化し、確認するなど
パタゴニアの強さは「楽しさ」だけから
生まれているわけではありません。
最高の製品をワクワクな仲間と作り出す企業文化が
この会社を理想の会社に変えたのです。
100年企業を作りたいベンチャー経営者や
経営に悩んでいる会社の代表にぜひ読んでいただきたい一冊です。

今日もお読みいただき、ありがとうございました。
      

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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