山口周氏の世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?の書評

千利休という人は、歴史上はじめての「ディレクションはするけど、クラフトはしない人」だったからです。洋の東西を問わず、美的なものを生み出した人物のほとんどは、彼ら自身が創作者であり、制作者でした。(山口周)


photo credit: Jason Riedy Informal, educational tea gathering via photopin (license)

世界初のクリエイティブ・ディレクターは千利休

毎月、茶会に出ることで、千利休が身近な存在になりました。
今読んでいる世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?
MBAよりもクリエイティブのわかる人の方が
これからは価値が高くなるというビジネス書なのですが
その中で千利休が世界初のクリエイティブ・ディレクターとして
紹介されていたことに驚きを感じました。

千利休よりも有名なクリエイターやアーティストは世の中にたくさん存在します。
芸術家というとミケランジエロやピカソやダビンチなどが
私たちの頭に浮かぶはずです
千利休と言われてもあまりぴんときません。
なぜ、利休が世界初のクリエイティブ・ディレクターなのでしょうか?

ここで山口氏はプロデューサーをしていた運慶や快慶と利休を比較します。
慶派というチームを作り、運慶・快慶は彫刻家としての高い技能を持った上で
多くの職人を束ねることで、数々の作品を残していました。
ところが千利休はそういうアプローチをしませんでした。
今日、利休が制作に関わったとされる物品は数多く残っていますが
そのうち、利休が手ずから制作したものは、茶杓や花入くらいしかないそうです。
茶室や庭はもちろんのこと、茶道具である風炉と釜
水指や炭とりなつめ斗、夷束や茶入れ、そして茶碗などは作らず
利休はコンセプトを考える立場に徹したのです。
彼は職人にアイデアを伝え、手を動かさずに作品を仕上げていたのです。
これが、彼が世界初のクリエイティブ・ディレクターである理由なのです。

利休の立ち位置をビジネスの参考にする

山口氏は本書で利休を経営という視点でも分析しています。
戦国時代を終息させ、世を平和にするために彼は
クリエイティブという視点で貢献していたのです。
著者は利休を会社経営で言う所のCCO
(チーフクリエイティブオフィサー)に見立てます。

利休というCCOがクリエイティブな側面で
信長、秀吉の天下取りをサポートしていたのです。

利休は、言ってみればCEOに該当する織田信長や豊臣秀吉に対して、彼らが支配する社会の美的側面についての領域を担う責任者、いわばチーフクリエイティブオフィサーの役割を担ったと言えます。信長や秀吉は、自らの権力のもとに利休を保護することで、利休の才能を自らが支配する社会の文化に反映させ、影響力を高めようとしました。 重要なのは、信長や秀吉が、あからさまに側近だけで周りを固める他の武将と比較して、アートを担うアドバイザーである千利休を重んじた、という点です。

豊臣秀吉が成功していた時代は、秀吉は組織運営を心がけていました。
自らリーダーが暴走しない仕掛けを作っていたのです。
秀吉はアートとサイエンスを取り入れながら、チームを運営していました。
アート・クリエイティブにおいては利休を
サイエンスの側面については異父弟である秀長を重用することで
政権内における意思決定のクオリティを高い水準に保っていたのです。

うまくいくベンチャーは3人で経営していると言われていますが
秀吉は「利休-秀長」とのトライアングルによって
人心を掌握する仕組みを作っていたのです。
特に茶器に価値を持たせたり、政治を茶室で行うことで
部下をコントロールしていたのです。

この後、秀長が亡くなり、利休に切腹を命じたあたりから
秀吉の没落が始まります。
アートとサイエンスを担う人材を組み合わせることで組織は強くなりますが
このバランスが崩れると経営がうまくいかなくなることが
この豊臣家の事例から理解できます。

サイエンスとアートを組み合わせる経営が強い会社を作る!

山口氏は個人でも会社でもアートとサイエンスが組み合わさることで
パフォーマンスが向上し、強くなると指摘します。
ノーベル賞受賞者は絵画や楽器演奏等に興味を持つなど
人生をエンジョイしながら結果を出すことがわかっています。
アートを見ることで観察力が上がりますが、ただ見るだけでなく
感じて、それを言語化することで「見る力(VTS)」を鍛えられます。
これにより、過去のパターンにとらわれないアイデアが浮かび
企業のソリューション能力が高まります。
アートで未来を予測する力を高められることがわかってきことが。
世界のエリートを芸術に走らされているのです。

クリエイティブに発想し、経営をジヤンプするためには
サイエンスのみにこだわるのは危険なのかもしれません。
AIにできない経営を実践することが、企業を成長させるのかもしれません。
アートやクリエイティブを経営に取り入れることが求められています。
パターン認識が当たり前になると見る能力を失います。
パターン認識を超えた所に経営のヒントが隠れているのです。
そのために、アートを通じて見る力を養う必要があるのです。

ビジネス茶道で見る力を鍛える!

実は、茶道によって、多くの文化や芸術を学べることに気づけました。
最近、みずかみまゆこさんとビジネス茶道のイベントを行っていますが
茶室の掛け軸やお花や茶器を愛でることで
五感と教養を深め、人間力と直観力を鍛えられます。
本書を読みながら、経営に茶道が効果があることに気づけました。
目の前の事象を美しいと感じたり、一期一会だと思うことが
パターン認識にとらわれなくなる早道なのです。

まとめ

サイエンスとアートは対照的ではなく、両立することで力を発揮します。
以前のような「サイエンス重視の意思決定」では
現代の複雑な課題を解決できなくなっています。
美意識のない経営は共感されませんし
グレーな発想をよしとすることでDeNAのように経営判断を間違えます。
それを避けるために、経営にアートを取り入れることが求められています。
ビジネスをしっかりと成長させるためには
サイエンスとアートを組み合わせるべきなのです。
千利休が秀吉と生み出した茶道が、よりよい経営につながりそうです。
茶室に入ることで、心が落ち着き、虚心坦懐に見ることで
私たちは自分の能力を高めることができるのです。

今日もお読みいただき、ありがとうございました。

     

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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