リチャード・コッチとグレッグ・ロックウッドのSimplifyの書評

商品価格を半額にすれば、需要は”飛躍的”にー何十倍、何百倍、いや何千倍にもー伸びる。(リチャード・コッチとグレッグ・ロックウッド)


photo credit: crackdog Tourists in a Ford Model T at the “Devil’s Den” at Gettysburg Battlefield in Pennsylvania, c1910-1915 via photopin (license)

ヘンリーフォードのシンプル化戦略を学ぼう1

リチャード・コッチグレッグ・ロックウッドSimplifyの邦訳が
ダイレクト出版から届き、早速読んでみましたが
これがとても面白かったので、記事で紹介したいと思います。
リチャード・コッチといえば、人生を変える80対20の法則で有名ですが
本書はこれに勝るとも劣らない一冊でオススメです。

ヘンリー・フォードは自動車を大衆化するというビジョンを示し
複数生産していたモデルをT型フォードに一本化します。
このシンプル化戦略によって、彼は独自のイノベーションを見つけます。
生産方式を据え置き組み立て方式から流れ作業方式に変え
カラーリングを黒一色に絞り込みます。
シンプル化と事業規模拡大の効果によって
1905年に1000$や2000$したモデルを
1914年には一気に550$にまで下げてしまいます。
3年後には360$に下げ、自動車の大衆化に成功します。

シンプル化は売る側と買う側の両方が得をし、どんなことにも応用できる。つまり、余分なものを削ぎ落とせば、落とすほどつくりやすくなり、価格は下がり、その結果、販売数が伸びる可能性が生まれるのだ。

ヘンリー・フォードは自社だけでなく
自動車の大衆化によって、世の中の仕組みを変えてしまったのです。
彼がシンプル化戦略をとったことで
世の中の利便性は一気にアップしたのです。

著者たちはシンプル化のためには2つの戦略があるといいます。
価格のシンプル化(Price-Simplifying)と
プロポジションンのシンプル化(Proposition-Simplifying)がそれで
自社の文化と方針によって決めるべきだと言います。
競合会社がポジションをすでに確保しているのなら
そのポジションを奪い取る手立てがあるかを考え
それがあった場合にはすぐに実行に移すべきです。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

 

2つのシンプル化で成功する方法

本書にはホンダとハーレーの熾烈な競争が紹介されています。
ホンダはアメリカ進出の際に経験がないにもかかわらず
市場調査の結果を信じ、大型バイクで巨人ハーレーに挑みます。
しかし、彼らにはこのマーケットを戦う能力がないことを
マーケットはすぐに見極め、ホンダの販売は低迷します。

当時アメリカに送り込まれていた川島喜八郎は
この苦境の際中に 遊びの中から解決策を見つけます。
同僚と50CCのスーパーカブ3台でLA周辺の悪路を走っていたら
ツーリングしていた他のバイカーたちに賞賛され
自分たちの強みである50CCのスーパーカブの力を発見するのです。
川島はプライスではなく小型化というユーザーベネフィットを見つけ
プロポジションのシンプル化でハーレーに挑むことを決めます。

しかし、ホンダの本社は頑なで大型バイク市場にこだわります。
時間が経つにつれ、この戦略が間違っていたことに本社も気づきます。
実績のないホンダが大型バイクで勝てるわけがなく
小型市場に参入し、新たなマーケットをつくります。
当初小型バイクはオフロードライダーに歓迎され
次に通勤市場のマーケットを生み出します。
1959年に55万台だったアメリカのオートバイ市場を
ホンダは低価格戦略をとることで、一気に拡大しまします。
製造コストと販売価格を下げることで
マーケットは1975年には500万台となり
そのほとんどがホンダの小型バイクによって占められました。
ホンダは運良く新たなマーケットをつくることで
アメリカのオートバイ市場で成功したのです。

ホンダが自らのポジショニングを最初から理解していれば
ストレスやコストを相当減らせたはずです。
このように自分の強みがないマーケットには
いきなり参入してはいけません。
ユーザーに使う喜びを提供できるまでは
強引にそこに割り込もうとしてはいけないのです。
価格のシンプル化のポジションが空いていて
商品を半値にできる手立てが思いついた場合のみ
競合に勝てると考えましょう!

価格を半分にできるならば、そのマーケットで勝負すべきですし
利便性や有益性、芸術性を向上できるなら
ユーザーに使う喜びをもたらせますから、成功する確率が高まります。
Appleはユーザーが直感的に使える商品を生み出すこと
(プロポジションンのシンプル化)で、新たなマーケットを作りました。
ユーザーが喜ぶ商品やサービスを提供するプロポジションンのシンプル化と
価格のシンプル化によって、企業は成功を手に入れられます。

プロポジションの価値は、たいていシンプル化によって大いに増大する。そのために必要なのは十分な創造力と共感カーすなわち、価格に頓着せず、優れた商品になら割高でも受け入れてくれる顧客の立場になって考える能力だ。

ベンチャー企業がいきなり、価格勝負はできないはずですから
「プロポジションのシンプル化」を考えるべきです。
まずは世の中をよくするビジョンを作成し
ユーザーを幸せにする価値を提供すべきです。
以下のケーススタディに商品開発のヒントが隠されてます。
Apple 直感的
ネスレのエスプレッソマシン スピーディ
Walkmanの小型 軽量
iTunes 買いやすさ

「プロポジションのシンプル化」は、サービスビジネスにとって大きな鍵であることが多い。シンプル化によって有益性・利便性・芸術性を向上できれば、利益率の拡大とともに収益も増える可能性がある。

ウーバーはタクシーを街中で拾うという労力からユーザーを解放し
現金不要のシステムや割り勘を簡単にできる「利便性」でユーザーから支持されました。
また、ドライバーの評価システムやアプリ一つで利用できる「有益性」に加え
従来のタクシー体験とは全く異なる「芸術性」も兼ね備えていたのです。

過去の事例を見ても、シンプル化によって
世の中に貢献できる可能性が広がります。
イノベーションと価格で世界を変える人たちが、成功を手にするのです。

まとめ

自社と競合の関係を整理し、自社のシンプル化について考えてみましょう。
人間にとって有益性の高い商品やサービスは世の中をよりよくしてくれます。
スマホやAIの普及によって、私たちの生活は改善しますし
それらが大衆化することによって、社会全体がよくなっていくのです。
経営者がシンプル化戦略をとることで
企業とユーザー、そして社会がWin-Winになれるのです。

今日もお読みいただき、ありがとうございました!

       

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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