アマゾン・エコーとアレクサのエコシステムの凄みを田中道昭氏から学ぶ。

エコシステムとは、プラットフォームをその中核や土台とするビジネス上の生態系や産業構造を表す言葉です。アマゾンのビジネスにおいては、アマゾン・エコーがプラットフォームとなり、アマゾン・アレクサがさまざまな商品・サービス・コンテンツを外部からも取り込んで大きな生態系を形成しています。(田中道昭)


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アマゾン・エコーとアレクサが変える世界

田中道昭氏のアマゾンが描く2022年の世界を読むと、アマゾンの「すごみ」を実感できます。アマゾンが恐ろしい勢いで私たちの生活の中に侵食しています。アマゾンエコーアレクサがプラットフォームになることで、買い物という概念が変わり始めています。本や水、ビタミン剤など日常のアマゾンでの買い物を私はPCやiPhoneから以前は行っていました。しかし、エコーを購入して以降は、アレクサに話しかけることが増えています。以前に買った商品をアレクサに伝えると過去の履歴からあっという間にオーダーができます。一度この体験をするとパソコンからオーダーするのが面倒になります。デス・バイ・アマゾンという言葉がこの数年流布していますが、アマゾンエコーが普及すれば、ますますアマゾンが強くなりそうです。

筒型のスピーカーに話しかけるだけでものが自宅に届いてしまう体験を一度してしまうと、日常品を買いに行くという選択肢がなくなります。ビタミン剤や水をドラッグストアに買いに行くために、無駄な時間を使う必要がなくなったと感じる人が増えたり、PCを開いて検索・買い物をするのが面倒だと考える人が増えれば、競合のリアル店舗やECサイトの売り上げは激減するはずです。

今後ますますエコーとアレクサの経済圏は広がっていくと田中氏は指摘します。

すでにスマートホームの領域から、AWSがカバーする広範囲の法人顧客網、さらには自動運転車であるスマート・カーの領域に至るまで、「アマゾン・アレクサ経済圏」ともいえる産業構造を形成しつつあります。アマゾンと商品・サービス・コンテンツを提供するさまざまな企業との間には強固な協調関係や相互依存関係が構築され、相乗的、自律的、連鎖的に拡大していく。それがエコシステムなのです。

巨大な経済圏が生まれることでアマゾンの力はどんどん大きくなります。複数のパートナー会社とネットワークを構築することで他者を圧倒するサービスを提供してくるはずです。結果、アマゾンにはより多くの顧客情報が集まりますから、ビッグデータ解析によって、ユーザーのライフスタイルを押さえることができるのです。ユーザー情報の質と量の差が他の競合の脅威になることは間違いがありません。

アマゾンに侵食されないように競合も動き始めています。アメリカではウォルマートがグーグルの音声スピーカー・ホームを活用したサービスをスタートしました。日本でも楽天と西友(ウォルマートの子会社)がネットスーパーを開始するなど流通業界で合従連衡が起こり始めています。

音声認識というユーザーインターフェースがアマゾンを強者にする

スマートスピーカーのシェアは先行したアマゾンが7割と圧倒的で、グーグルを凌駕しています。昨日アップルからスマートスピーカーの「ホームポッド」が英米で発売されましたが、こちらは今のところ高価格・音楽路線をとっているため、アマゾンエコーと上手に棲み分けそうです。買い物分野においては、UI・UXがユーザーから評価されているアマゾンが覇権を握る可能性が高そうです。

スマートスピーカーはタッチ操作が不要なので、使い勝手がよく多くのユーザーから支持されています。田中氏は「エコーはアマゾンが何より重視するユーザーエクスペエリエンスの一つの到達点だ」と指摘します。

なぜ、アマゾン・エコーが爆発的な人気を博しているのか。それは「ただ話しかけるだけですべて済んでしまう」というユーザー・エクスペリエンスが評価されているからに他ならないのです。スマホを顔の前にかざす手間もなく、その場でただ話しかければ質問に答えてくれる、話しかけるだけで音楽を流してくれる。アマゾンで買い物をしてくれる。IoT家電のスイッチを入れてくれる。次世代のスマートホームはアマゾン・エコー起点に構築されていくことになるでしょう。

アマゾン・エコーとアレクサがプラットフォームになることで、私たちの生活はよりよくなるはずです。アマゾンにビッグデータを握られるという代償はありますが、私たちの生活の質は間違いなく高くなります。自動車やIoTにアレクサが搭載されることで、手塚治が提示したワクワクな未来を私たちは体験できるはずです。自動運転している車からアマゾンにオファーするとロボットが温かい料理を運んできてくれる未来を私はイメージしました。

田中氏はアマゾンの様々なサービスやベゾスの思考をフレームワークで読み解きますが、本書を読むことでアマゾンが目指す未来を予測できます。アマゾンに打ち勝つ戦略を立てたいビジネスパーソンやマーケティングのフレームワークを学びたい人にオススメの一冊です。

まとめ

アマゾンエコーとアレクサがプラットフォームになることで、私たちのユーザーエクスペリエンスは高まりそうです。エコーに話かけるだけで買い物ができれば、私たちは他のことに時間を使えるようになります。買い物体験を変えるアマゾンは様々な企業と提携することで、私たちの生活や体験を一変させそうです。アレクサに話しかけることが当たり前になるとスマホとの付き合い方も変わる可能性があります。アレクサを中心にした音声サービスが私たちのライフスタイルをより面白くしてくれそうです。

     

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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