茂木誠のニュースの“なぜ?”は世界史に学べ 日本人が知らない100の疑問の書評

中世のカトリック教会は、「蓄財は罪」と教えました。だから、お金が貯まったら教会に寄付することが奨励されていました。教会が販売する贈宥状(免罪符)というお札を購入すれば、罪をあがない、神の赦しを得ることができるというわけです。「金儲けは罪」「教会に寄進をすれば救われる」という教えでは、頑張って働いて、お金を稼ごうというモチベーションが起こりません。蓄財より消費に励み、教会にどんどん寄進するような国民性が育まれていったのです。(茂木誠)


photo credit: Andreas Komodromos Statue of Liberty Series – V4, Vintage & Textured via photopin (license)

世界史の視点を持って、世の中を見よう!

社会人になって世界史をほとんど学ばずに生きてきました。時々国別の歴史書を読むことはあっても、歴史を俯瞰することがなくなりました。先日高校の娘と一緒に世界史の試験勉強をするうちに、歴史の面白さを再認識し、人気予備校教師の茂木誠氏の本に出会いました。ニュースの“なぜ?”は世界史に学べ 日本人が知らない100の疑問を読み進めるうちに、宗教が現代の経済にも影響を及ぼしていることがわかりました。カトリックとプロテスタントのどちらを信仰するかで、その後の経済の発展が全く異なってしまうのです。

ヨーロッパのギリシア、ポルトガル、イタリア、アイルランド、スペインは巨額の財政赤字に悩んでいます。これらのPIIGSと呼ばれる国が成長できずにいるのは、彼らがカトリックだからだと茂木氏は指摘します。イタリアやスペインの国民は教会に寄進すれば救われるというカトリックの教えを信じることでお金を稼ぐよりも、消費や蓄財などを選ぶようになったのです。

現在、財政赤字に陥っている南欧諸国とアイルランドがカトリック教国であるのは、偶然ではありません。また、イタリアやスペインは、ギリシアと同じく冷戦中は親米軍事政権で、さまざまな支援を受けられた。つまり「甘やかされていた」ことも財政が悪化した原因のひとつといえます。

一方、ドイツやイギリスなどの成長国はカトリックではなく、プロテスタントを信仰していました。ここで昔懐かしい宗教革命の話が出てきます。ルターの宗教革命がその後の国の成長を左右したのです。

資本主義の発展にはプロテスタントが影響していた!

ヨーロッパの多くの国が財政赤字に苦しむ中で、ドイツ経済は好調を維持しています。ハードに働くわけでもなく、資源に恵まれているわけでもないドイツが、なぜヨーロッパ経済のリーダーになっているのでしょうか?。

カトリック教会は「勤労と蓄財は罪」だと説明しましたが、こうした教えを公然と否定したのが、ドイツのルターとスイスのカルヴァンです。いわゆる宗教改革ですね。彼らの教えを信じる新しいキリスト教徒を総称してプロテスタント(新教徒)といいます。プロテスタントは、寄付金集めに熱心なカトリック教会を否定し、勤労や蓄財を罪と見なさない。一生懸命働くことが神のご意思にかなうことである、という教えです。教会で祈ることだけではなく、日々、自分の仕事を真面目に頑張ることを奨励された教徒たちは、がむしゃらに働きました。働くことが一種の信仰だったのです。このプロテスタントの勤勉さこそが、現代の「資本主義」のバックグラウンドとなっています。

実は、プロテスタントが広まったのは、ドイツ、イギリスをはじめとする北ヨーロッパの国々だったのです。熱心に働くドイツとイギリスはこの数百年発展を続けています。イギリスからの移民が建国のリーダーになったアメリカ合衆国もプロテスタントの教えを信じることで、経済的な発展を遂げることができたのです。主にイギリス系移民の新教徒(プロテスタント)が、必死に働く勤勉な人々だったからこそアメリカ合衆国は発展し、超大国になり得たのです。

アメリカの開拓と同じ時期にヨーロッパの移民が海を渡って建国した中南米の国々が、アメリカ合衆国のような経済発展を遂げられなかったことも宗教が影響していました。この時中南米に乗り込んでいったのは、スペイン人とポルトガル人の移民だったのです。カトリック教徒の彼らがリーダーになることで、勤労に価値を見出せずのんびりした空気が蔓延します。中南米が北米に比べ、経済発展で後れをとったのもカトリックの考え方が影響していたのです。ロシアが発展しないのも、一緒懸命に働くという気持ちがロシア正教にはなかったことが原因だと茂木氏は指摘します。このようにどの宗教が広まるかによって、その後の国の発展が決まってしまうのです。

まとめ

ニュースの「本質」をつかむためには世界史の知識が不可欠です。歴史を学び、文化や宗教など様々な点と点をつなぐことで現代の諸問題を理解できます。宗教や人種、文化などの「世界の常識」を知っておくと現代の国際ニュースの理解が深まります。本書を読むことで、教科書では学べなかった世界史の本質をわかりやすく学べました。

今日もお読みいただき、ありがとうございました。

      

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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