望月衣塑子氏とマーティン・ファクラー氏の権力と新聞の大問題の書評②

第ニ次安倍政権になってから、メディアへのコントロールと並んで目立っているのが、司法への影響力が強まって見えることです。政権の意向に逆らうような活動をしたり、政府にとって不都合な発言を繰り返したりする人物や組織が不当に勾留されるケースが、かつてないほど行われています。(望月衣塑子)


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司法にも影響力を行使する安倍政権

望月衣塑子氏とマーティン・ファクラー氏の権力と新聞の大問題書評ブログを続けます。安倍政権はメディアだけでなく、司法への影響力も強めています。自分の権力を強化するためになんでもありの状況を作り出しています。司法に影響力を行使するということは人権を侵害すると同義です。

沖縄基地反対運動のリーダーの象徴的存在である山城博治氏は、2016年10月に沖縄県高江の米軍ヘリパッド建設に反対する抗議活動中に、有刺鉄線を二本切った疑いで逮捕されました。その後、再逮捕されましたが、その容疑は「沖縄防衛局職員に暴行を加えた」というもので、実際の暴力行為はなかったそうです。ふつうはこれで逮捕されることはなく、この逮捕自体が「沖縄県民への弾圧だ」という指摘があったほどでした。この軽微な犯罪で、山城氏は五カ月の長期にわたって勾留されましたが、同種の容疑と比較してもこれは異例の長さでした。この逮捕・勾留は安倍政権の司法へのコントロールが窺える象徴的な事件だと望月氏は指摘します。実は、この逮捕には伏線があったというのです。山城さんが逮捕される9日前に菅官房長官が沖縄の防衛局を訪れています。当局は政府の意向を汲んで動いたとしか考えられません。

国会でも問題になり、未だに安倍総理からはしっかりとした説明のない森友疑惑でも籠池夫妻が長期勾留されていました。これはある種の口封じで、今年の5月まで長期に拘留されていました。弁護士やジャーナリストもこの長期拘留を問題視していました。原発などの裁判も地裁までは住民側の判決が出ますが、最高裁まで上告されても、結果が最終的には覆り、国に有利な判決が出ます。「憲法と法律にのみ拘束」されるはずの裁判所が、政治に左右されているのです。最高裁が政権に忖度し、国家寄りの判決を出すことに国民が慣れっ子になることはとても危険です。政治や最高裁に私たちはノーというチャンスを与えれられています。選挙と最高裁判事の国民審査によって、私たちは政治と司法をコントロールできるのですから、この権利を無駄にしてはいけないのです。

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ジャーナリストは政府をしっかりと監視すべき!

時の政府は、自分の政権に都合の悪い存在を法的に潰そうといつも狙っています。どんなストーリーで捕まえるかということを周到に練り上げて、そこにいくつかの調査で見つけた事実を入れ込んで逮捕まで持っていくのです。(マーティン・ファクラー)

司法のコントロールや別件逮捕には事前にしっかりとストーリーが作られています。日本の場合、アクセス・ジャーナリズムが中心のため、公式発表を鵜呑みがちにしがちで、権力サイドが作ったストーリーを見落とします。望月氏は小沢一郎氏が失脚した西松事件にもストーリーがあったといいます。取材をする中で、普段は話もできないような東京地検の幹部が自ら望月氏に近づいてリークしてきたと言うのです。

その必死な様子を見て「これは何がなんでも逮捕したいと思ってやっているんだな。マスコミを使って世論を味方につけようとしてリークしてるんだな」と思いましたけど。

西松建設が小沢氏のパーティー券を買っていたことは事実ですが、自民党の森喜朗元総理大臣も二階俊博氏も同じように買ってもらっていると言われていましたが、政治資金規正法違反に問われたのは小沢氏の秘書だけでした。この後、小沢氏の力は削がれ、政治への影響力を急速に失っていきました。これが日本の政治をつまらなくしたきっかけだったと思うと、政権側のストーリーに簡単に乗ってはいけないことがわかります。

ファクラー氏はNHKのニュースにストーリーが仕組まれていると以下のように述べています。

当局のストーリーがどういうふうになっているのかを読み取るためには、NHK七時のニュースがいちばんわかりやすいですね。「政府は北朝鮮情勢をこう分析して対応を急いでいます」「今日、敬言察が発表したところによると……」「……と東京地検は見ています」「安倍首相はトランプ大統領にこう働きかける方針です」。すべて主役が決まっていますよね。どのストーリーも、主役側が伝えたものなのです。それをNHKが「正しいかどうか」を疑問視せずに、権力者が主役であるストーリーをそのまま伝えています。それだけでは、実は中国の国営放送CCTVとあまり変わらないんですよ。「今日、習近平国家主席がこう言いました」というのと同じです。

当局のストーリーによって標的とされた人の人権を守るには、記者が独立し、しっかりと取材を重ね、事実を明らかにすべきです。当局が本当に正しいことを発表しているかどうかをチェックし、東京地検が描いたストーリーを疑問視することが求められます。本当は違うストーリーがあるのではないかと取材し、権力の暴走を食い止めないと国民の人権が守られない社会になり、民主主義がどんどん後退していきます。

まとめ

公権力は嫌な相手を潰すために、様々なストーリーを仕掛けてきます。特に安倍政権になってから、メディアや司法がコントロールされるようになりました。長期の勾留や見せしめの逮捕を許すと個人の人権がどんどん失われてしまいます。それを避けるためにはメディアがしっかりと取材し、権力側のストーリーを鵜呑みにしないことが重要です。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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