礼節を経営に取り入れると会社の業績がアップする理由

いわゆる「良い人」が勝つ。そういうことは、私たちが考えるよりも多い。(クリスティーン・ポラス)


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マキャベリ型リーダーを目指してはいけない理由

前回、クリスティーン・ポラスThink CIVILITY(シンク シビリティ) 「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略であるから、無礼な態度が健康を損ねたり、人や企業のパフォーマンスを下げることを学びました。今日は無礼の態度を改め、礼節な人になることの効果について紹介したいと思います。(参考 本書の書評はこちらから

著者は、「無礼」とはその人が下品であることを証明し、尊敬できないなと思わせるような言動をとることだと定義します。人は無礼でさえなければ、礼儀正しい、礼節を守っていると、つい考えたくなります。しかし、実際には無礼でないだけでは、ただ中立的なふるまいをしているにすぎません。礼節ある人になるためには、他人を大切にするなどの努力が必要です。

礼節ある人とみなされるためにはそれ以上のことが必要だ。他人を尊重し、また品位を感じさせる丁寧で親切な態度で、周囲の人たちの気分を良くしなくてはいけない。 礼節ある言動とは、つまり相手を丁重に扱う言動ということだが、必ず心から相手を尊重する気持ちがないとうまくはいかない。

いくら礼節のある態度で接しても、心がこもっていなければ、相手に見透かされてしまいます。真に礼節のある態度で人と接しなければ、人間関係がうまくいくわけがありません。

礼節が大事であるにも関わらず、多くのリーダーは丁重な態度を部下にすると、自分の威厳を保てなくなると心配しています。そのため、礼節な態度を取らず、傲慢な態度を取りがちです。以前の私も部下に対して厳しく接していましたが、多くの成功者とお付き合いするうちにこの考え方を改めました。リーダーは礼節によって、成功できるのです。部下を丁重に扱うことで、部下との信頼関係が生まれ、組織を強くできるのです。

著者はヴァンダービルト大学のジェシカ・ケネディと共にリーダと礼節との関係の調査を行いました。被験者を2つのグループに分け、半数には、能力のある医師(仮にジェンナー医師と名づけた)に関するシナリオを読んでもらいました。このシナリオでは、ジェンナー医師は、常に下にいるスタッフに対してひどい態度を取り、皆はそれに不満を持っています。彼は部下の麻酔医とよく揉めており、機嫌が悪い時には看護師に余計な手間をかけさせることも多いのですが、研修医がジェンナー医師の下につくと、研修修了後に職を得ることができます。医師はスタッフにはひどい態度で接し、嫌われていますが、病院の取締役の中に何人か、彼を非常に気に入っていたのです。ジェンナー医師の知性、能力は非常に優れており、病院の経営を考えれば、他に代わりはそういない人物なのです。残りの半数には、もうひとつのシナリオを読んでもらいました。このシナリオも基本的な状況は同じでしたが、唯一違うのが、彼の言動に礼節があることでした。スタッフは誰ひとり、医師の言動に不満を持っていません。

被験者には2つのシナリオを両方読んでもらい、医師の社会的地位はどちらが高いを質問しました。その結果は驚くべきもので、被験者が社会的地位が高いとみなしたのは総じて、礼節ある医師の方だったのです。しかも、両者の差は大きく、礼節ある医師の社会的地位が高いと考えた人は、無礼な医師よりも36パーセントも多かったのです。著者は「愛されるよりも恐れられる方がはるかに安全だ」というマキャベリ型のリーダーを目指すのは、現代では得策ではないと指摘します。礼節な態度があなたのキャリアに大きく作用するというのです。

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礼節がある人が得られるメリット

皆の上に立つリーダーは、ただ下の者に命令するだけではなく、会話をした方がより礼節ある態度と言える。そして、良い仕事をした部下は、時間を取って称賛することが重要だ。

リーダーは部下のことを意識し、意識的に褒めるようにすべきです。また、それだけではなく。リーダーは自分の欠点をよく認識し、また自分の言動が他人にどう影響するかも自覚していなくてはなりません。リーダーは周りの人が近づきやすい雰囲気を醸し出し、現実的にものが見れる人であることをアピールすべきです。

礼節を保つことで得られるメリットを著者が整理しています。まずは、個人として得られるメリットを3つあげます。
■仕事を得やすい
礼節がある人(他人に優しく接する人、気分の良い接し方をしている人)には声がかかりやすいので、仕事を得やすくなります。礼節ある人は無礼な人の1.2倍就職への推薦を受けやすいこともわかっています。
■幅広い人脈を築ける
礼節がある人は、そうでない人よりたやすく大きな人的ネットワークを築けます。礼節ある人は発想、情熱、人をつなぐ役割を果たすことができます。
■出世の可能性が高まる
礼節ある態度によって、もう一段上の出世が狙えます。

礼節ある態度の利点はそれだけではない。もしあなたが企業の中でリーダーの地位まで上りつめたいと願うのなら、周囲の人たちにその地位にふさわしい人だと思ってもらう必要がある。

著者がサリー大学のアレクサンドラ・ゲルバシ、ロス・アンデス大学のセバスチャン・ショルチとともに実施した調査では、一般に礼節ある人ほど「リーダーにふさわしい」とみなされやすいという結果が得られました。

あるバイオテクノロジー企業を対象とした調査では、周囲から礼節ある人とみなされている人は、無礼だとみなされている人に比べ、「リーダーにふさわしい」と評価される可能性が2倍になるということが明らかになりました。また企業内での業績も約13パーセント、礼節ある人の方が高いというデータもあるほどです。

自分が礼節ある人間であるという証拠を見せると、周囲の人に有能なリーダーと思われやすくなるということもわかっています。7万5000人以上を対象とした国際的な調査では、優れたリーダーとみなされている人の多くが、他人から「思いやりがある」「協力的」「公平」という評価をされていたのです。世界各地の合計2万人の会社員を対象に私が実施した調査でも、「敬意ある態度で人に接する」ということが、リーダーが皆の忠誠心を勝ち得る上で何より重要だとわかったのです。

今、望ましいとされるリーダーは、「気配り」「優しさ」「思いやり」など従来「女性的」とされてきた資質を持った人であることが数々の調査が示しています。

また、礼節ある態度は、組織を強くし、企業の業績アップにも寄与します。
■礼節あるチームは高い業績をあげる

リーダーが礼節ある人なら、チームの業績、創造性は高まる。良いのはまず、誰かが何かミスをしてもそれが早く見つかること、そして誰もが自分の意志で率先して行動を起こすこと、メンバーの精神的な消耗が少ないことだ。

コストコの創業者、ジェームズ・シネガルは、小売企業にとって顧客と従業員は株主よりも重要だと考え、自らこまめに店舗に足を運び、そこで働く人たちに挨拶をしました。そして、自分が感謝していることを従業員に伝えたのです。会社としても、従業員を尊重し、その努力に報いる姿勢を見せたのです。

コストコ従業員の給料は平均1時間あたり20.89ドルで、これはウォルマートに比べて65パーセント高くなっています。また、従業員の定着率が高く、長く勤める人が多いのもコストコの特徴です。コストコに1年以上勤務した従業員の離職率は、業界の基準に照らすと非常に低く、離職率が低いことは1年あたり数億ドルのコスト削減につながっています。

コストコの株価は2003年から2013年の間に、200パーセントを超える上昇を見せましたが、一方のウォルマートの株価の上昇は50パーセント程度にとどまっています。従業員に対し敬意と思いやりを示す経営方針が、ビジネスに良い効果をもたらすことが、コストコのケーススタディから学べます。

■礼節ある経営者は従業員に安心感を与える
リーダーの礼節を示すちょっとした態度だけでも、企業全体にかなりの良い影響があることがわかっています。礼節によって、チームや企業に属するメンバーたちの態度、行動が良い方向に、チームや企業全体の価値を高める方向に変わるのです。

敬意ある態度を取る人と、そうでない人を比較したある調査では、前者と情報を積極的に共有したい人は、後者に比べ59パーセント多いという結果が得られました。また、前者から助言をもらいたい人は後者に比べ72パーセント、前者から積極的に情報を得ようと考える人は後者に比べ57パーセント多くなったのです。

リーダーの礼節ある態度がチーム、企業にとって良いのは、それにより従業員が安心を感じられ幸福な気分になり、自分自身もより良い人間であると思えるからなのです。

礼節ある態度とはたとえば、人に感謝する、人の話をよく聞く、わからないことは謙虚に人に尋ねる、他人の良さを認める、成果を独り占めせずに分かち合う、笑顔を絶やさない、といったことを指す。こうした態度は業績の向上にも役立つ。反対に、無礼な態度は、仕事で成果をあげる上で足枷になってしまう。

マイクロソフトやグーグルでも礼節を経営に取り入れるようになっています。企業の中で影響力を高め、キャリアをアップさせるためには、無礼な態度を取るよりも、他者に対し敬意と礼節のある態度で接した方が良いのです。ぜひ、勇気を持って、礼節ある態度で人に接するようにしましょう。相手を喜ばすうちに、自分にも良い結果がもたらされてきます。

まとめ

礼節ある態度を取ることで、自分に価値があると感じ、力を発揮できるようになります。リーダーが丁寧に部下と接することで、従業員のモチベーションが高まり、組織が強くなります。業績をアップしたければ、無礼な態度を改め、他者に敬意を払い、丁寧な態度で接しましょう。

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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