これまでの仕事 これからの仕事 ~たった1人から現実を変えていくアジャイルという方法 (市谷聡啓)の書評

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これまでの仕事 これからの仕事 ~たった1人から現実を変えていくアジャイルという方法
市谷聡啓
技術評論社

本書の要約

イノベーションとは、常に進化し続けるプロセスです。イノベーションを起こすためには、他者に関心を持ち、チームと協力し、リスペクトを示し、越境することが大切です。 関心、チーム、リスペクト、越境を意識しながら、柔軟なマインドセットを持ち、積極的に取り組むことで、イノベーションを起こせるようになります。

変化に適応するために、仮説・検証のステップが重要な理由

私たちに必要なことは、自分たち自身に必要な「変化」に気づき、促す機会にほかなりません。変化の機会を得続けること、そして変化に適応するすべを自分たち自身で作り出すこと。それが、この先も変わることがない「これからの仕事」のあり方と言えます。(市谷聡啓)

私たちの生きる世界は、日々変化しています。技術革新は加速し、社会情勢も大きく変化しています。このような変化の激しい時代において、私たちは変化に適応していくことが求められています。 変化の機会を得るためには、アンテナを高く持ち、新しいことに挑戦することが大切です。また、変化に適応するためには、柔軟な思考力と行動力が必要です。

経営者は、仮説を繰り返し自分の中で問い直し、周囲との対話も重視する必要があります。これによって顧客や社員、パートナーからの共感を得ることができます。

その際、現在地点(From)と行きたい場所(To)を明確に捉える必要があります。現状の状況と、目指すべき目標を明確にすることで、具体的な行動が見えてきます。 まず、現状のゴールデン・サークル(From)を書き出し、その隣にありたいゴールデン・サークル(To)を描くようにします。

物事を考える際には、なぜ(WHY)から始めることが重要です。その後、どのように(HOW)実現するかを考え、具体的な行動(WHAT)に取り組みます。

商品やサービスをローンチする際には、まず顧客の課題に合致するか(Custmor Problem Fit)や解決策が適切か(Solution Problem Fit)を考えることが重要です。

「このサービスや商品で解決するのは、どの顧客のどのような課題であり、その解決策はどれだけ適切か?」、「課題解決によってどれくらいの顧客を満足させることができるか?」などを自問するようにします。 このようなアプローチによって、経営者はビジネスの方向性を明確にし、顧客や関係者との共感を得ることができます。

本質的な問いに答えることなくして、ただ決められたアウトプットをタスクとしてこなしていっても、成果とは無関係に近い。やってる感は出るが、本当に手がけるサービスや商品が価値あるものなのかわからないまま、ただ時を費やすことになる。

顧客起点のサービスやプロダクトを開発するためには、問いを立て、仮説を立て、検証するステップが重要になります。

顧客起点のサービスやプロダクトを開発するためには、以下のステップが重要になります。
1、問いを立てる。
2、仮説を立てる。
3、仮説を検証する。
4、仮説検証の結果を踏まえて、次のステップに進む。

仮説検証の結果、仮説が真であると判断できた場合は、問いへの回答として十分かを確認します。問いへの回答が充足するならば、仮説検証を終えて、次の段階へと進めます。

一方、まだ問いに答えきれない部分があるようであれば、再び「仮説を立てる」へと戻り、必要な仮説検証を追加します。多くの場合、有用性、継続性、可能性を一度に確かめることは難しいです。仮説検証を重ねることで、これらの観点に答えられるようになっていくでしょう。

仮説検証では探索バックロッグと適応バックログの両方を意識しましょう。探索バックログでは、具体的な仮説検証を行うための切り口やテーマを挙げておくことが重要です。一方、適応バックログでは、どのような変化を生み出すかを具体的に扱い、そのための活動候補を洗い出します。

例えば、新しいサービスの機能性を検討する場合、どのような課題を解決する必要があるのか、そしてそれをどのような機能性で実現することが顧客にとって最も適しているのかを探索します。

探索バックログでは、「新たな課題仮説XXXの検証」という具体的なタスクを挙げて、顧客インタビューやその分析などを捉えておくことが重要です。 探索の結果、必要な機能が見えてきたと仮定しましょう。実際にそれを実現し、ユーザーへの本格提供を始める場合、適応バックログには「新たな機能性XXXの開発」という具体的なタスクを挙げ、開発作業を進めていきます。

このように、探索と適応のバックログを運用することで、プロジェクトの進行状況や探索・変化の度合いが明確になります。もし探索や適応のバックログが存在せず、具体的な項目が挙げられていない場合は、危険な状況と言えるでしょう。まずは最初の可能性や変化を一つでも積み上げることが重要です。それが、新たな可能性を切り開き、変化を生み出すための第一歩となります。

顧客からのフィードバックは小さく、スピーディに行おう!

実際にアウトプットを見たり、触ったりしてもらう。そうして相手から得られるリアルな反応や評価こそが、アウトカムを理解するための手がかりになる。もちろん、本番さながらのアウトプットを一式揃えると、もう完成品を作るのと変わらなくなる。だから、必要そうなアウトプットのうち、特に相手にとって重要な箇所を特定して、部分的に実現し、試してもらうという作戦になる。実現する方法も、逆に言うと「試す」ことができればいいわけだから、実際に相手が試すところ以外は、人力で補ったり、張りぼてであってもかまわない。むしろ、そうしたほうが早くアウトプットが用意できて、早く試すことができる。

アウトプットを部分的に実現し、試してもらう戦略を採用することは、効率的で早い結果の検証や改善を可能にする方法です。相手にとって最も重要な部分に焦点を当て、素早く反応や評価を得ることで、より良いアウトカムを追求することができます。

このアプローチにはいくつかの利点があります。まず、時間と費用を節約することができます。全ての要素を完全に実現する前に、重要な部分のみに焦点を当てることで、スピードを上げながら検証や改善を進めることができます。また、フィードバックや反応を早期に得ることができるため、その結果を基にさらなる改良や修正を行うことができます。早い段階で自分たちの「理解を正す」ことで、成功する確率を高められます。

理解を正すまでの間の時間のことを「ターンアラウンド」と呼んでいる。ターンアラウンドが長くなればなるほど、理解違いをしている時間が長くなるわけだから、リスクが高まる。ターンアラウンドはできる限り短くなるようにしなければならない。この時間が短くなるように、仕事の進め方をチューニングしよう。

仮説検証に取り組む際は、有望な仮説がいくつもあっても、まずは絞り込んで検証に取り組むことが重要です。それにより、検証にかける時間を短縮することができます。早く検証を終えることで、自分たちの理解を迅速に深めることができます。

また、最初の検証結果を踏まえて、次の検証内容を決定することも重要です。最初の仮説が的を外しており、別の顧客について検証を行う必要があると判断することは自然なことです。しかし、そのような場合でも、「失敗した」と考えるのではなく、ある仮説が間違っていたという「学び」を得たと考えましょう。

解決すべき状況や課題が特定され、それに対するソリューション側の仮説を立てることもあります。最初に想定していた「順序」と異なるアプローチを取ることもあります。つまり、順序を考慮しながらも、多様な仮説の存在を認め、時間による区切りを設けることで、順序の適切さを向上させるのです。

このようなアプローチは「タイムボックス」と呼ばれます。 タイムボックスを導入することで、仮説検証の進行を効果的に管理し、限られた時間内で集中的に検証を進めることができます。それにより、素早く学びを得ることができます。また、検証結果に基づいて次のステップを計画し、より良い結果を目指していくことができます。

ネガティブなチームを変える4つの要素

チームでの越境、組織の越境、いずれも相手との対話を重ねることが、相互理解へとつながっていく。

イノベーションを促進するためには、異なる場所やコミュニティに越境し、そのメンバーと対話するようにしましょう。

まず第一に、相手に対する「関心」を持つことが重要です。越境することで、多様な考えや問題、そして人々と出会うことになります。関心は、未知のものに触れる際に自然に湧き上がるものです。関心を持つ対象を見つけることに困ることはないでしょう。目や耳を開き、相手に向けて関心を向けることから始めましょう。

ただし、関心は放置すると次第に薄れていく傾向があります。他の優先事項や日常の忙しさによって注意が奪われることがあります。そのため、他者との接点を作り、維持することが重要です。人は「単純接触効果」として知られる法則に従い、初めは興味がなくても、接触回数を重ねることで徐々に興味を持つようになる傾向があります。

ミーティング時間を事前に設定するタイムボックスを活用することで、定期的な接触が約束された仕組みを作り上げることができます。時間と場所を共有する機会を設け、それを継続的に行うことで、関心が持続するようになります。チーム間の越境でも、組織間の越境でも、共に越えていく相手と最初にタイムボックスを設けましょう。

組織の成長を阻害する無関心や他責、面従腹背、思考停止といったネガティブな要素を変えていく手がかりとして、以下の4つを挙げることができます。
・関心
・チーム
・リスペクト
・越境

イノベーションを促進するためには、相手への関心を持ち、チームと協力し、相互のリスペクトを持ち、異なる領域やコミュニティに越境することが重要です。これらの要素を意識し、実践することで、より豊かなイノベーションの環境を築くことができます。

イノベーションは単独で行うこともできますが、多くの場合、チームの協力が不可欠です。異なるバックグラウンドやスキルを持つメンバーが集まり、共同でアイデアを出し合い、お互いの視点や専門知識を活かして成果を生み出します。

また、「リスペクト」は、他者の意見や貢献を尊重し、信頼関係を築くことを指します。相手のアイデアや意見に対してオープンマインドで接し、批判的な思考や建設的なフィードバックを通じて、共同でより良い結果を追求します。

異なる領域やコミュニティに越境することで、新たな視点や知見を得ることができます。他の業界や文化との交流、異分野の専門家との共同プロジェクトなどを通じて、クロスポーリネーションが生まれ、アイデアの幅が広がります。

他者に関心を持ち、チームと協力し、リスペクトを示し、越境することで、多様な視点や知識を結集し、より創造的で意義のある成果を生み出すことができるのです。 イノベーションは常に進化し続けるプロセスです。以上の要素を意識しながら、柔軟なマインドセットを持ち、積極的に取り組むことで、新たな可能性を発見し、持続的な成長を実現できるようになります。


 

この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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