ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体(原田曜平著)を読んでいて
今の20代のヤンキーの生態が、私たちバブル体験世代とは、
全く別世界の考えを持っているに驚いています。
地元愛、5キロメートル圏内の超地元をこよなく愛する若者達が増えているという話は
新聞や雑誌記事で知ってはいたのですが
ここまで内向き指向の若者が増殖していることを
この「ヤンキー経済」の調査レポートで知って、私は相当びっくりしました。
気持ちが優しく社会への反抗心も見られません。
(親が弱くなり、反抗の対象ではなくなった。)
この時点でヤンキーという言葉がこの若者達にふさわしいのか?という疑問は残ります。
実際、地元の友達とのネットワークと彼らと過ごす時間を最も大切に考え
外に出て行かない内向きな若者に未来はあるのでしょうか?
ヤンキーでも起業したり、親の商売を継いで
成功している30代以降の知り合いが何人もいますが
この書籍の中で紹介されているマイルドヤンキーはあまりにも内向きで、大丈夫?という
ネガティブな感想しか読了後には浮かびませんでした。
原田氏の「マイルドヤンキー」の定義は
「上京志向がなく、地元で強固な人間関係と生活基盤を構築し
地元から出たがらない若者たち」のことです。
マイルドヤンキーは、地縁を大切にする「新保守層」と呼ばれています。
マイルドヤンキーというよりは昔からいる地元から出ない若者が
存在としてメジャーになっているということですかね??
ただし、マイルドヤンキーは以前の私たちの世代とはあまりに異なり
著者が指摘しているように。ここから消費が生まれてくるようには思えません。
このターゲットの消費を意識すべきだと原田曜平氏は言いますが
この一冊だけでは、データが少なく、判断はできないと思いました。
自動車メーカーやハウスメーカーや流通などの一部業種は
マイルドヤンキーを意識したコミュニケーションが必要かもしれませんが・・・。
(詳細は第三章のヤンキー135人徹底調査を参照ください。
ミニバン人気や飲酒、パチコンなどのデータをチェックするのは面白いですが。)
夢はありますか?との質問に給料が5万円上がることと答えた加古川市の男性は
海外にも東京にも行ったことがないそうです。
近くの大都市の神戸に行くのすら抵抗があるようです。
地元に愛着を持つのは良いことなのでしょうが
これだけ多様化が求められている社会で、このようなマイルドヤンキーが
この書籍で書かれているように、増殖していることが事実なら恐ろしいです。
内向き指向の日本人が増えていくというレポートが真実なのかは
この書籍のデータだけでは、検証できません。
しかし、今後5キロ圏内だけで生活するというマイルドヤンキーが
増加することがトレンドになるなら、少子化と同じぐらいにショッキングなことです。
彼らは内向きで友達を新規開拓しないのです。
閉じたコミュニティだけで生きていこうとしていれば
イノベーションは生まれません。
これがトレンドになり、日本人が海外や東京にすら出て行こうとしていかないなら
新しい出会いやプロジェクトも生まれてきません。
あえて、友達を探さないということを今の若者は選択しているのです。
ネットもマイルドヤンキーは活用しないため
ますます、情報が入らず、結果としてますます世界は閉じていくのです。
成長を放棄するという新しいトレンドが
全てではないにせよ、日本の若者から生まれ始めているのでしょうか?
本書の中にイオンが「夢の国」と表現されています。
このマイルドヤンキー族が地元を離れない理由が
ローカルに張り巡らされたイオンのショッピングセンターにあるのかもしれません。
イオンに行けば何でも手に入るというコメントには驚きました。
平均的なあたりまえのモノやエンタメ(消費生活と文化的拠り所)が楽しめる
彼らにとってのイオンが夢の国だとするならば
あまりにも現実的過ぎて、彼らからは何か新しいことが起こりそうにもありません。
何もなかった地方が消滅して、ローカルで多くのモノが手に入るようになったので
東京などに移動する意味がなくなったのです。
これでは違うコミュニティの人に出会わなくなり、多様性も体験できません。
一部の高感度、高学歴な人間だけが東京などに集まりますが
著者はそこでも若者は窮屈な生活を送っていると書いています。
人間関係をメンテナンスするために社交消費している若者という表現が
ソーシャルメディアでビジネスをしている私には、とても寂しく思いました。
都心の高感度層・高学歴層の若者が、ケータイやソーシャルメディアによって広がった人間関係をメンテナンスするための社交消費、具体的にはカフェ代や飲み会代といったような頻繁な小さい消費に追われて、「モノ」を買わなくなっている現状に比べ、マイルドヤンキーは車、タバコ、ショッピングモールでの買い物などで消費をしているのです。
ソーシャリアルで出会いをデザインできる時代に生きられるのですから
もし、この引用が事実であるなら(※私の周りの若者とは異なるので)
都心の高感度の若者にも多くの出会いを体験してもらいたいと思っています。
メンテナンスだけでは、あまりにもったいないと思います。
また、マイルドヤンキーのソーシャルメディア活用を見ていると
彼らが炎上するのもよくわかります。
TwitterやFacebookは友達との掲示板という閉じた世界で活用しているので
投稿をシェアされるリスクを考えていないのです。
友達向けの閉じたバッカターな投稿を
オープンなソーシャルメディアで行ってしまっているのです。
140Pの彼らのソーシャルメディアでの生態を読んでいて
私が以前から考えていた仮説が本当だったことを実感しました。
また、見知らぬ人との視線が気になるため電車が嫌いで
若者の割に車の購買意欲が高いという分析を見ながら
閉じた世界にここまで逃げるのかと本当に驚きました!
この本を読んで思い出したのが、クーデンホーフ・カレルギーのこの言葉です。
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