衝撃的なタイトルの本を友人の加藤康祐氏のご縁で献本いただいた。
ホームレス農園: 命をつなぐ「農」を作る! 若き女性起業家の挑戦という書籍で
著者の小島希世子さんとホームレスの方々が一緒に農園を作るという実話です。
帯のコピーには「ホームレスをファーマーに!」と書かれていますが
中身を読んだ印象では「浮浪者を農夫に!」の方がはるかにフィットします。
英語にすると綺麗な感じがしますが、通常の新規事業の立ち上げでも大変なのに
そこにホームレスを巻きこんでいくわけですから、この話はトラブルだらけです。
おしゃれな表紙とタイトルのイメージと本書の内容には相当ギャプがあります。
藤沢市の「農園」が著者の小島さんのビジネスのホームで
彼女は野菜を育てながら、ここで悩みを解決したり
人間らしさを取り戻ながら、日々、成長しています。
これだけならごく普通の女性起業家の話なのかもしれませんが
小島さんはなんとそこでホームレスや生活保護者、ニートなど社会的弱者を受け入れ
自分の農園で働く場所を提供してしまうのです。
初めて東京に来た時に、彼女はホームレスが多いことにショックを受けます。
実際に路上にいたホームレスの方に質問し
彼らをサポートすることを学生時代に意識するのです。
自分の農園オープン時にホームレスのボランティア団体にアプローチします。
そして、ホームレスの方々を紹介してもらい、共に働き始めるのです。
(この紹介ですら、実は簡単ではないのです。詳細は本書を。)
人手不足で未来の見えない農業をマッチングすることには価値があります。
しかし、口で言うのは簡単ですが、実際に行動を起こすのは大変ですし
成功するためには多くのハードルが存在していました。
しかし、人と農の両方の再生を同時に目指している彼女は
困難に負けずにホームレス農園という新しいビジネスのカタチを作り上げていくのです。
また、その根底にある「農業と社会貢献」というビジョンの強さがあるから
その行動力も意味を持つのだと感じました。
鬱病の方へ手紙を書くなどメンタルなフォローも小島さんは続けます。
このドキュメンタリーの部分を読んでいて
世の中への「貢献」とは何か?人を動かすエネルギーは何か?について
考えるヒントをもらえました。
実は、この本の面白さはどんな人でも変化できるという再生物語なのです。
登場人物の変化、成長には自分を重ね合わせているようでとても共感しました。
「ホームレスだから」という色眼鏡で相手を見ているかぎり、彼らの本質は見えてこない。反対に、私と彼らの問に”お互い人間同士” ”共に農作業をする仲間”というフラットな関係が築けたとき、彼らの中でよい変化が起こり、自立への一歩を踏み出せるようになる。そういったことが、ホームレスとの関わりの中で徐々にわかってきた。ホームレスの中にも労働意欲の高い人はいて、そういう人たちが農に出会うと有能な働き手となり得ることがわかった。農園で必要とされていることが、彼らの自信につながった。手をかければかけただけおいしく育つ野菜たちは、彼らに充実感と達成感を与え、さらなるやる気をもたらした。彼らの変化を目の当たりにすることで、私の中で「この道は間違っていない」という確信は強くなっていった。
人の変化をサポートすることで、自分も幸せになれます。
農業が人の心を育てる産業だと私も認識できました。
ハッピーが自分のやりたいことをすることと世の中への貢献だとすると
ホームレス農園で働いている人は、多くのホワイトカラーより幸せかもしれません。
だから、苦しいことや困難があっても投げ出さず、コツコツとホームレスに農業を教え続けることができたのだと思う。そして私自身も彼らからたくさんのことを教えてもらった。「どんな境遇でも人は変わろうという意思を持ち、努力すれば変われること」や、「人生は何度でもやり直せる」ということだ。そうするうちに、わが農園から地方の農家へ働きに出る仲間も出始めた。活動がメデでアの関心を呼び、「ホームレス農園」としてテレビや雑誌の取材を受けるようになったのも、この頃だ。ホームレスが社会復帰に向けて働く農園だから「ホームレス農園」。おそらく日本中を探しても、ホームレスに農業指導をしている農園はそう多くはないだろう。
この小島さんの体験から導かれたメッセージには説得力があります。
農業がホームレスによい6つの理由を以下引用します。
可能性があるビジネスかもしれません。
農業について、もうすこし考えてみたくなりました。
ただ純粋に自分が思い描く未来を実現するために頑張っている。自分が幸せになりたいから努力を続けられている。自分のために頑張ることが、他人や世の中のためになるのだとしたら、こんなに嬉しいことはない。
自分が頑張る理由は自分と仲間のためにあるのです。
この本を読んで、著者の小島さんに会いたくなりました。
加藤さん、ぜひご紹介ください。
紹介者の加藤さんにもお礼を申し上げます。
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