成熟社会では、何事も始めてみないとわかりません。しかも一回だけではわからないので、一度世の中に出してみて、市場の反応を見ながら調整を繰り返して育てていく必要があるのです。(並木将央)
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成熟社会でベンチャー企業が勝ち残る方法とは?
並木将央氏の成熟社会のビジネスシフト 10年後も会社が続くためにを献本いただいた。面白い一冊だったので、早速紹介したいと思います。ロボティックス、AI、IoTなど技術の進化が止まりません。社会のデジタル化が進む中で、スピードのない企業、変化しない企業の淘汰が進みます。技術のグローバル化も進み、アメリカで流行ったビジネスがあっという間に、世界中でコピーされます。Uberが始めたカーシェアリングは、アジアではGrab、東欧ではBoltが覇権を握ったことを見れば、スピードとローカライゼーション(人々の共感)が重要なことがわかります。
ここ日本においては、人口減少が続き、マーケットがシュリンクしています。若者も活力を失い、イノベーションが起こりにくい状況になっています。日本のような成熟社会でベンチャー企業が勝つためには、何をすればよいのでしょうか?本書にはその解決のヒントが書かれていました。
ベンチャー企業の資本は潤沢ではありませんが、アイデアをすぐに形にできるスピード感があります。ベンチャー経営者は失敗しても、いつでも撤退できるように低コストで始められるビジネスモデルを考え、マーケットに判断を委ねるべきです。調査会社にお金を使うのをやめ、顧客と直接対話をするのです。PDCAというフレームワークをすて、Doから始め、改善を繰り返した方がはるかに成功確率が高まります。
商品をリリースし、顧客の声を聞き、改良を重ねるうちにファンが増えていきます。自社の商品のこだわりをストーリーにし、顧客の共感を得ることで、ソーシャルメディアの拡散が始まります。面白いコンテンツであれば、一気に多くのユーザーを掴めます。
成熟社会でのビジネスモデルでは、「ビッグバン・ディスラプション」という考え方を取り入れるのも一つの方法です。顧客が飽きっぽくなるなかで、商品寿命は短くなっています。ひとつのビジネスモデルにつき、どんなに売れているものでも賞味期限は7年から8年といわれています。
成熟社会では、始めからあまり深く足を突っ込まず、まずはやってみる。やってみて駄目だったら撤退するという潔さも必要ですし、短期間で一気に儲けて即座に撤退という方法もあります。共通して必要なのは迅速な行動です。確実性を高めようと調査すればするほど、時間も費用もかかってしまうからです。
一気に始めて、短期的に儲けて、短期で撤退するというゲリラマーケティングを続けるのもありかもしれません。タイミングを見ながら、会社をMAし、次のビジネスをスタートする起業家も増えています。大企業が苦手な行動力とスピード力がベンチャー起業家に求められています。
テストマーケティングを実施し、ビジネスコンセプトを発信することで、共感してくれるユーザーに出会えます。顧客から共感されるコンセプトとストーリーがなければ、成熟社会では成功できません。私もクライアントに共感の重要性を日々伝えていますが、顧客を感動させるマーケティングを実践しなければ、誰からも見つけてもらえません。情報が爆発している社会のマーケティングは、共感型にシフトしているのです。
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イノーベターの条件とは?
イノベーションとは、当たり前と思われていたこと壊して新しい当たり前をつくることです。成熟社会におけるイノベーションでは、全員にとっての共通のものではなく、各個人の共感をどれだけ得られるかが鍵になってきます。専門性が高くオタクのように詳しい知識、見識を持っていたとしても、他人の共感が得られなければイノベーションは生み出せません。しかし、他人と共感し過ぎてしまえば”自分だけが見える点”がなくなってしまいます。これでもイノベーションは生まれません。情報感度を高く保った上で、専門性、共感具合に対するバランス感覚も高く持つ。それが成熟社会におけるイノベーターの条件なのです。
スティーブ・ジョブズは携帯とカメラ、ミュージックプレーヤー、PCの常識を壊し、iPhoneを作りました。当初、iPhoneは一部のオタクからしか支持されませんでしたが、彼らが熱狂的なサポーターになり、口コミを行いました。私もその一人で、多くのビジネスマンにiPhoneの素晴らしさを伝えました。
いきなり全ての人に共感してもらうのは無理なのですから、イノベーターは自分の直感を信じ、スピーディに商品をリリースすべきです。それを支持する熱狂的なファンを見つけられればよいという感覚で、勝負すべきです。専門性と共感のバランスを保った素晴らしい商品をリリースし、ファンの声を聞くことで、商品はどんどんよくなっていきます。
また、イノベーションを難しいものと考えないようにすることも大事です。イノベーションは身近な場所に点在しています。先ほどのiPhoneも既存技術の組み合わせで、イノベーションを起こしました。他分野の既存技術を使って、自分の既存市場で役立つものやサービスを提供するのです。著者はこれを「やわらかいイノベーション」と呼んでいます。
新しいイノベーション(新しいコンセプト)が苦手な日本人には、このやわらかいイノベーションが向いているという著者の指摘は正しいと思います。他分野の既存技術を自分の得意分野と組み合わせるやわらかいイノベーションを起こし、顧客にスピーディに問いかける起業家が成熟社会の勝者になるのです。
まとめ
成熟社会の起業家には、行動する勇気が求められます。まずは、商品をリリースし、顧客をファンにすることを狙いましょう。顧客のフィードバックを受けながら、商品を改良し、顧客の共感を得るのです。日本においては難しいイノベーションではなく、他分野の既存技術を自分の得意分野と組み合わせるやわらかいイノベーションを狙うのもありです。
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