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未来の稼ぎ方 ビジネス年表2019-2038
著者: 坂口孝則
出版社:幻冬舎
本書の要約
日本の人口が減少する中で、世界人口は2028年に80億人を突破します。今後、資源の争奪戦が起こり、水を活かすテクノロジーが注目されるはずです。水の精製、濾過技術、漏水を防ぐもの、節水商品など、水ビジネスの可能性が広がる中、日本の水技術を輸出することで、新たなマーケットを開拓できます。
日本の人口が減少する中、世界の人口は増加する!
出生低位の推計で見ても2028年ごろには世界人ロが80億人を突破する。そのとき、食料に代わって、事態が深刻化するのは水だ。現在でさえ、世界人ロの大半が安全な水にアクセスできないといわれている。水の精製、濾過技術。また、漏水を防ぐもの、あるいは節水商品など、ビジネスの観点からはさまざまな展開が考えられる。(坂口孝則)
新たなテクノロジーが次々にコンバージェンスされ、エクスポネンシャル(加速度的)に世界を変えています。恐ろしいスピードでテクノロジーが変化する中、未来からビジネスを発想する必要が出てきました。著者は本書で2038年までの未来を多様なデータを使いながら予測します。未来は現在の延長線上にはなく、予測が外れることもありますが、何も考えないのと仮説を作りながら、未来を予想しながら事業を創造するのでは、結果は異なります。
人口は他の分野に比べ、比較的正確に未来を予測できます。日本では人口が減少する中、2028年には世界人口は80億人を突破するとみられています。2019年6月に国連が発表した、2100年までの世界人口の予測です。「中位推計値」で予測した数字を見ると、世界人口は2050年にが97億人、2100年には110億人になると考えられています。2100年以降は人口の伸びは鈍化し、110億人程度で頭打ちしそうです。
日本の人口は2008年をピークに人口が減少に転じています。国連のデータによると、2050年には日本の人口は1億人を下回り、2100年には7500万人にまで落ち込むと予測されています。多くの先進国が人口を減らす中で、中国、韓国、ヨーロッパでも同じように人口が減少していきます。世界人口は増加を続けるものの、地域によって増加率に大きな差が出てきます。
国連の「世界人口推計2019年版:要旨」によると、2019年から2050年にかけ、最も人口増加が起きると見られるのはインド、ナイジェリア、パキスタン、コンゴ民主共和国、エチオピア、タンザニア連合共和国、インドネシア、エジプト、米国(予測される人口増が多い順)の9カ国です。インドは2027年頃、中国を抜いて世界で最も人口が多い国になるとみられます。ちなみに中国は2029年に人口のピークアウトを迎えます。
人口増加が水問題を引き起こす?
人口増にともなって、近年、食料よりも注目されている水資源問題がある。食料危機は、生産性の向上でなんとか乗り切れるかもしれない。しかし、水はかなりやっかいだ。
日本は水資源が豊かだなために、水が貴重な資源であることを忘れがちです。しかし、世界を見渡すと水の重要性が浮かび上がります。
●8億4400万人のひとたちが安全な水にアクセスできない。
●23億人もの人々が下水設備を使えない。
●毎日、世界各地で女性や女児が2億6600万時間を、水を運ぶ時間に費やしている。
●90秒に1人の子どもが汚染水によって死亡。死亡にいたらずとも、健康被害から経済的な損失が生じており、それは、2600億ドルにもなる。
水の確保にかかっていた時間を有効活用できれば、発展途上国の子供たちの教育の時間を増やせます。農業の生産性も高められ、食料問題にもよい影響を与えます。
実際、世界ではきれいな水を届けるサービスがいくつも生まれています。カタールでは、三菱商事が海水淡水化の大型設備を導入し、電力と水をともにつくるプラント事業を開始しています。 Slingshotは手軽に水を精製する機械で飲料水を作り、浄水フィルターのLifesaverは泥水を飲料水に変えるボトルを提供しています。
スターバックスが買収したEthos Waterのペットボトル1本買うごとに5セントの寄付ができ、発展途上国に安全な水を提供する支援を行えます。
水ビジネスに注目したいのは、水そのものをつくるにとどまらないからだ。企業活動のプロセスにおいて、限られた資源である水の使用量を、これからいかに抑えるかが注目されるようになってきた。それは自国内製造分にとどまらない。
水資源の調達でも工夫が必要です。水資源の乏しい国から調達するのではなく、豊かな国から調達するなど調達地の変更も考えるべきです。同時に節水に努めることで、企業イメージも向上します。
コカ・コーラは新興国への展開に積極的で、いちはやくNGOと連携しサプライチェーン全体の水使用量削減に努めています。ネスレやペプシコなどの飲料関連メーカーも同種の取り組みをおこなっています。ソニーも主要取引先と節水を行い、自社工場での水の使用量を6割も減らせたと言います。
他国に比べ、日本の漏水率はきわめて低く、ここにビジネスの可能性があります。東京都の漏水率はわずか3.1%で、先進国のなかでもトップクラスです。料金徴収率も99・9%となっており、日本の産業と生活を支えています。この技術は水資源の減少に苦しむエリアに輸出でき、日本の新たなビジネスになる可能性を秘めています。
人口問題と資源に視点を広げることで、日本の可能性が見つかります。未来のデータからマーケットの変化を予測し、自社の強みを掛け合わせることで、新たなビジネスのヒントが見つかります。本書のデータと新たなビジネスのアイデアから、様々なヒントをもらえます。著者の仮説を鵜呑みにするだけでなく、そこに疑いの目を持つことも重要です。
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