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2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ
著者:ピーター・ディアマンディス、スティーブン・コトラー
出版社:NewsPicksパブリッシング
本書の要約
テクノロジーがコンバージェンスされることで、長寿社会が実現します。レイ・カーツワイルは寿命脱出速度(longevity escape velocity)という言葉を口にしますが、今後テクノロジーの進化が加速することで、長寿化が加速します。私たちが1年生きる間に、科学によって寿命を1年以上延ばせるようになるのです。
人間が長生きできるようになった理由
何かを成し遂げる前に亡くなってしまう人が、どれだけいるのだろう?エイダ・ラブレス、アルバート・アインシュタイン、あるいはスティーブ・ジョブズがあと30年健康に生きていられたら、どんな業績を残していただろう?人生の後半、最も多くの知識を身につけ、技能を磨き、有意義な人間関係を構築したところで、寿命が尽きて人生というゲームから退場させられるというのは、なんとも皮肉なことだ。(ピーター・ディアマンディス、スティーブン・コトラー)
長生きをさせたかった経営者や学者は数多くいますが、スティーブ・ジョブズはその筆頭でしょう。彼が早死にしなければ、テクノロジーはよりコンバージェンスされ、エクスポネンシャルに世界を変えていたはずです。
ジョブズのような天才を長生きさせることで、変化を加速させることができます。人間の健康寿命を延ばすことによって、テクノロジーの進化を加速できるのです。
健康寿命を延ばすというのは、能力がピークに達し、社会に最も貢献ができる状態で活動できる年数を伸ばすという意味だ。自らの夢をこれまでよりはるかに長い期間にわたって追い求めることができるようになる。
20万年前、平均的な原始人は13歳ごろに結婚適齢期を迎え、まもなく子供をもうけていたと言います。20代半ばにはすでに孫が生まれていたのです。食料が希少で貴重だったことから、その場合子孫を残すために最良の選択は、孫から食べ物を奪わないことになります。このため進化の過程で、(平均)寿命25歳という安全装置が埋め込まれたのです。それから長らく、この状況はほとんど変わりませんでした。中世までに平均寿命はじわじわと延び、 31歳にとなり、19世紀末には初めて40歳を超えました。
寿命が長くなったのは、20世紀に入ったころで、抗生物質の誕生、衛生状態の改善から清浄な水が広く入手可能になるといったさまざまな要因がプラスに作用しました。子供の死亡率が劇的に低下することで、平均寿命が伸びていったのです。1900年にはアメリカの死者の30%が5歳未満の子供でしたが、1999年には1.4%まで低下しました。
農業技術の改良による「緑の革命」や輸送ネットワークの改善により、平均カロリー摂取量が増加し、寿命は再び延び、最終的に2000年を迎えるころには平均寿命は76歳に達しました。その後、2大死因である心臓病と癌の早期発見と治療の技術が進歩したことで、80代まで生きることも当たり前になっています。神経変性疾患の治療法が見つかれば、平均寿命は100歳を超えるという研究成果もあるほどです。
そして、テクノロジーがコンバージェンスされることで、寿命はより伸びると予測されています。あと数年もすれば、癌すら治り、スティーブ・ジョブズの命を救うこともできたのです。
テクノロジーがコンバージェンスすることで、寿命はより伸びる!
AI、クラウドコンピューティング、量子コンピューティング、センサー、膨大なデータセット、バイオテクノロジー、ナノテクノロジーが交錯するなかで、新たな医療ツールが続々と生まれている。そして進取の気性に富む多くの企業が、こうしたツールを活用して寿命延長をビジネスにしようとしている。
2013年にグーグル(現アルファベット)が設立したカリコが、不老不死研究をスタートしました。カリコのミッションは、老化研究の「ベル研究所」を作ることで、大量の資金が投入されました。ジェフ・ベゾスなどの成功者が次々とバイオテクノロジーに投資を始め、長寿社会を実現しようとしています。
寿命延長には3つのアプローチがあります。
1、「セノリティクス薬」を使ったアプローチ
細胞分裂の暴走(癌化)を防ぐため、身体は通常、細胞の倍加が一定回数続くとそれを停止します。この分裂が停止した細胞は「老化細胞」と呼ばれ、炎症を引き起こしますが、これが老化の大きな原因です。
ジェフ・ベゾスが支援するユニティ・バイオテクノロジー社は、この老化細胞を狙い撃ちし、炎症していた組織を修復するセノリティクス薬の開発を目指しています。こうした薬を中年のマウスに投与すると、健康寿命が35%延びるそうです。
2、「若き血」と呼ばれるアプローチ
2014年、スタンフォード大学とハーバード大学の研究者らが、若齢マウスから高齢マウスに輸血をすると、後者の衰えた認知機能が回復することを示しました。
ハーバード大学からスピンオフしたエレビアン社は、血液因子「GDF11」の研究を進めています。老齢マウスにGDF11を注射したところ、心臓、脳、 筋肉、肺、腎臓の機能が改善しました。
3、幹細胞によるアプローチ
サムメッド社は成人の幹細胞の自己再生と分化を調整するシグナル経路に照準を合わせています。同社の分子化合物によって軟骨を再生し、腱を修復し、シワを伸ばし、おまけに癌も治せるかもしれないというのです。
幹細胞研究のパイオニアであるロバート・ハリリが設立したセルラリティ社での動物実験では、プラセンタ由来の幹細胞によって寿命を30~40%延ばせることを明らかにしました。セルラリティはこの方法を人間に応用し、幹細胞によって身体が疾患と戦い、自己治癒する能力を強化することを目指しています。
AIの急速な進化の成果を健康や医療に応用すると、これまでの平均寿命の直線的な伸びから逃れられるのではないだろうか。あと10年もすれば、老化の速度を超える速度で寿命が伸びるのではないかと考えている。(レイ・カーツワイル)
レイ・カーツワイルは寿命脱出速度(longevity escape velocity)という言葉を口にしますが、今後テクノロジーの進化が加速することで、長寿化が加速します。私たちが1年生きる間に、科学によって寿命を1年以上延ばせるようになるのです。(レイ・カーツワイルの言葉と下図はAI新聞から引用)
技術の進化にともなって長寿化が加速する時代を私たちは生きています。一人ひとりがあと20年長く生きられるようになれば、その分社会に大きな爪痕を残せるようになり、それも長寿を加速させる推進力となります。1年でも天才が長生きできれば、人類をより幸せにできるのです。
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