シンギュラリティ大学が教える飛躍する方法の書評


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シンギュラリティ大学が教える飛躍する方法
著者:サリム・イスマイル,マイケル・S・マローン,ユーリ・ファン・ギースト
出版社:日経BP

本書の要約

飛躍型企業の11の特徴である「MTP」「SCALE」「IDEAS」を取り入れ、それらを駆使することで、競合他社と比べて非常に大きい価値や影響を生み出せる企業になれます。ベンチャー・スタートアップだけでなく、10年後自分の会社を失いたくない全ての経営者は、この手法を今すぐ取り入れるべきです。

飛躍的企業に共通する11の特徴

飛躍型企業にはすばらしいスケーラビリティをもたらす要因が2つある。第1に、彼らが提供する製品は情報を基盤としていること。ムーアの法則に従うため、「指数関数的に増加する」という情報の性質を利用できる。第2に、情報は自在に流れる性質を持つため、企業内の主要な機能を組織外に切り出せる。ユーザー、ファン、協力会社、一般市民といった人々に、機能を肩代わりしてもらえるのだ。(サリム・イスマイル,マイケル・S・マローン,ユーリ・ファン・ギースト)

直線的ではなく倍々と指数関数的に急成長する飛躍的企業(ExO・Exponendal Organization)は、情報を基盤にすることでそれを実現することが明らかになりました。情報は組織外に切り出せるために、外部の力を活用できます。 UberやAirBnBが短期間に成長できたのも、情報を徹底的に駆使しながら、コミュニティなどの外部のリソースを使ったからです。

著者たちは飛躍型企業に共通する特徴が11あることを見つけます。
■「野心的な変革目標」(MassiveTransformativePurpose、MTP)

■内部環境に関する5つの要素「IDEAS」
●I(Interface):インターフェース
●D(Dashboard):ダッシュボード
●E(Experimentation):実験
●A(Autonomy):自立型組織
●S(Social Technologies):ソーシャル技術

■外部環境に関する5つの要素「SCALE」
●S(Staff on Demand)オンデマンド型の人材調達
●C(Community&Crowd)コミュニティとクラウド
●A(Algorithms)アルゴリズム
●L(Leveraged Assets)外部資産の活用
●E(Engagement)エンゲージメント

 

著者たちによれば、11の特徴のうち少なくとも4つの特徴を持てば「飛躍型企業」の名に値し、競合他社との争いから一歩抜け出せることがわかったそうです。

MTPの重要性

MTP(野心的な変革目標)は組織の大志とも呼べる高い目標を示している。著者が調査したすべての飛躍型企業はMTPを持っていた。地球規模での変革もあれば、業界の一新を志したものもある。重要なのは根本的な変化を目指す点だ。古い企業はそんな野望を口にすることを嫌うだろうが、飛躍型企業は真剣に、そして自信を持って、奇跡に近い目標を達成するつもりだと宣言する。

MTPには心を鼓舞する力があり、これを作り、周りに伝染させることで、飛躍型企業の周囲には自然とコミュニティが形成されます。コミュニティのメンバーそれ自体が活動を始め、仲間意識や文化が生まれます。アップルストアの行列や、TEDカンファレンスの順番待ちリストを見れば、MTPの力がわかるはずです。

MTPは製品やサービスを熱狂的に支持するエコシステムを生み出し、エコシステムの中心にいる企業から、文字通り製品やサービスを「引き出す」ようになります。そして人々の間に当事者意識をもたらし、マーケティングやアフターサービス、さらにはデザインや製造といったプロセスとも協力するようになるのです。

優れたMTPは、新しい人材や最高の人材を引き寄せる際にも役立ちます。これがベンチャー・スタートアップ企業の成長を加速します。経営が不安定な初期段階には、MTPが社内を一致団結させます。さらにMTPはエコシステム(事業に協力する開発者、スタートアップ、ハッカー、NGO、政府、供給者、パートナーなど)全体の形成にも効果的です。その結果、こうしたステークホルダーを集めたり、維持したりすることができ、彼らとの共同作業のコストを下げられます。

ブランドが時間とともにMTPと融合し、その過程で志が高くなっていくのは、それが理由である。顧客は製品を心地よく感じ、その製品が持つ大きな目標の一部となることを、次第に誇りに思うようになる。そうしたブランドは、外的というより内的なモチベーションを利用することで、コストを下げ、効率性を高め、学習プロセスを加速できる。

コミュニティやステークホルダーのメンバーにMTPが定着することで、ブランドはより強化されます。より多くの人に支持されることで、企業の成長は指数関数的になり、競合を打ち負かす原動力になるのです。

SCALEとIDEAS の重要性

■外部環境に関する5つの要素「SCALE」
●S(Staff on Demand)オンデマンド型の人材調達
●C(Community&Crowd)コミュニティとクラウド
●A(Algorithms)アルゴリズム
●L(Leveraged Assets)外部資産の活用
●E(Engagement)エンゲージメント

組織の外にいる人材の活用(オンデマンド型の人材調達)は、飛躍型企業の成否を握る要素といっても過言ではありません。自社の社員が優秀であったとしても、彼らのスキルはあっという間に陳腐化し、競争力を失っていくため、外部のリソースを使うことを忘れてはいけません。

アイデアの創造や資金調達、デザイン、流通、マーケティング、販売など、これまで社内にあった多くの機能をコミュニティやクラウドに依存するようにすることで、企業が成長するスピードは加速します。飛躍型企業にとって社外環境とは、自分自身の組織を拡張するものであり、そこには数千人規模のコミュニティと、数百あるいは数十億人規模のクラウドが控えているのです。

このほか、飛躍型企業は、機械学習とディープラーニングをはじめとしたアルゴリズムや外部資産、人々の協調的な行動を生み出すエンゲージメントを活用して、企業と外界との境界線を越えてスケールし、柔軟性やスピード、俊敏性、学習効果を最大化しています。 

■内部環境に関する5つの要素「IDEAS」
●I(Interface):インターフェース
●D(Dashboard):ダッシュボード
●E(Experimentation):実験
●A(Autonomy):自立型組織
●S(Social Technologies):ソーシャル技術

インターフェースを活用すれば、飛躍型企業がフル稼働している状況でも、SCALEの各要素(特にオンデマンド型人材、外部資産、コミュニティとクラウド)を管理できる。逆に活用しないと飛躍型企業は成長できない。インターフェースは業務上不可欠な存在なのだ。

SCALEからの大量のアウトプットを体系的かつ自動的に取捨選択し、必要な加工を加えるためには、UI/UXが優れたインターフェースが欠かせません。

ダッシュボードを使うことで、OKR(Objectives and Key Results)をリアルタイムかつオープンにすることで、目標の達成スピードをアップできます。OKRを速いサイクルで回すことで、チームが間違った方向に向かうことを防げます。

実験を繰り返し、失敗から成功のタネを見つける自律型の組織を作りましょう。クラウド的なソーシャルツールを活用し、従業員やユーザーの声を取り入れることで、意思決定の時間を短縮したり、ミスを防げます。ソーシャル技術は従業員やコミュニティのメンバーをMTPにつなぎとめ、組織を維持する力としても機能します。

従来型と飛躍型企業の以下の比較を見れば、その差は明らかです。

フライガレージのマリア・ムジカが実践する「ガレージ」のステップを取り入れることで、スタートアップ企業は飛躍的企業へ成長するための一歩を踏み出せます。
●あらゆるものとの関係を絶ち、既成概念を捨てる。
●事業機会をつかむために、その中に溶け込み、深く理解する。
●アイデアを煮詰めて短く創造的な言葉にする(この言葉は皆が着るTシャツにプリントする)。
●活発な議論をしてアイデアを具体化し、ソリューションを構築する。
●プロトタイプ開発を迅速に進め、ユーザーに体験してもらう。

飛躍型企業の11の特徴である「MTP」「SCALE」「IDEAS」を取り入れ、それらを駆使することで、競合他社と比べて非常に大きい(少なくとも10倍以上の)価値や影響を生み出せる企業になれます。ベンチャー・スタートアップだけでなく、10年後自分の会社を失いたくない全ての経営者は、この手法を今すぐ取り入れるべきです。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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