池田清彦氏の自粛バカ リスクゼロ症候群に罹った日本人への処方箋の書評

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自粛バカ リスクゼロ症候群に罹った日本人への処方箋
著者:池田清彦
出版社:宝島社

本書の要約

“正義”が暴走する現在の日本では、自己保身という名の「リスクゼロ思考」が空気を支配し、閉塞感が漂っています。政府の政策にブレーキを踏まないことの方がはるかにリスクが高く、自粛バカになることで、お金や仕事だけでなく、私たちは自由を失っています。

民主主義を自ら勝ち取らなかった日本と言う国

日本は一応、民主主義国家を標榜しているが、この民主主義は国民が自力で勝ち取ったものではなく、太平洋戦争の敗戦により上から降ってきたものだ。台湾や韓国は独裁政権を国民の力で倒して、民主化を勝ち取った歴史があり、これがこの二国の国力を基底で支えている。だからこの二国では政権の支持率は激しく上下して、国民に見放されたら、政権はすぐにひっくり返る。ポピュリズムという側面もないことはないが、大局的に見れば国民が政権を監視しているとも言えるわけだ。そして、台湾と韓国の国力はどんどん向上している。(池田清彦)

生物学者の池田清彦氏のTwitterを時々チェックし、彼の思考に共感を覚えていましたが、自粛バカ と言うタイトルに惹かれ、初めて池田氏の本にチャレンジしました。著者は世の中に蔓延る常識を絶えず疑い、自分で考える力を養うことが重要だと言います。

今回のコロナ禍の中、日本には自粛警察がはこびり、多くの人が同調圧力を感じていたはずです。政府も国民もリスクをとることを諦めた結果、相変わらず首都圏では緊急事態宣言が続き、経済を悪化させることで、自らの首を締めています。多くの日本人が空気を読み過ぎ、同調してしまうことが、世の中を悪くしているのです。

日本では、安倍政権という長期政権を菅政権が引継ぎ、その間、国力が低下しています。国民の所得は徐々に下がり、国民一人当たりのGDPも、韓国にほぼ並ばれるまで追いつかれています。もはや日本は先進国とは言える水準になく、後進国への転落は避けられそうにありません。  

“正義”が暴走する現在の日本では、自己保身という名の「リスクゼロ思考」が空気を支配し、閉塞感が漂っています。政府の政策にブレーキを踏まないことの方がはるかにリスクが高く、自粛バカになることで、お金や仕事だけでなく、私たちは自由を失っているのです。コロナ禍の中、日本国民のおよそ9割が政府の統制に従うというのは、それだけ日本には管理されたがっている人が多いという証になります。

欧米では政府のコロナ対策を叩くことは当たり前で、様々な意見が溢れています。中国、台湾や韓国では政府が一気にコロナを抑え、経済を復活させていることを見れば、日本が大きな失敗を犯していることがわかります。

民主主義がない日本と言う国

リスクはなるべく減らしたほうがいいし、最悪の事態を想定することは必要かもしれないけれど、リスクというのは絶対にゼロにはならない。ゼロリスクを求めると、無限大の努力を強いられることになり、国民生活も経済も疲弊し、何もできなくなってしまう可能性が高い。適当なところで折り合いをつけて、リスクと共存する必要がある。しかし、日本人は政府に外出を控えてくれとお願いされると、9割の人がいきなり外に出なくなり、強権的な措置を可能にする法改正まで望んでいる。ゼロリスクという安心のために、 多くの人が権力の言いなりになっているわけだ。けどね。 こっちのほうがはるかにハイリスクだと思う。

日本の民主主義は自ら確立した物ではなく、アメリカに戦争で負けた結果、もたらされたものです。外国に比べて政治に無関心な態度をとるのもここに理由があります。 システムが一度決まると、そのなかで生きることを考えます。戦前、戦後を通じて、日本人は権力に管理される道を選びますが、民主主義を自ら勝ち取っていないことで、自由の価値を理解していないのです。

結局、強い相手には口をつぐむけれど、いじめてもよさそうなやつをターゲットにして、みんなで徹底的に叩きまくるんだよね。溺れる犬を棒で叩いたうえで、石まで投げつける。日本人っていうのはそういう国民性なんだ。そうやって、日頃のフラストレーションを解消してるんだな。

日本人は長い物に巻かれ、権力者への批判を避けます。政治家を叩くのではなく、芸能人やソーシャルメディアで弱者をバッシングすることで、溜飲を下げています。

自己保身という名の「リスクゼロ思考」を捨てるためには、教育を変えていくことがポイントになると著者は指摘します。日本は前例主義が前提となりっているため軌道修正ができない社会になっています。今回のコロナ禍の中、いくつもの愚作が生まれ、それが継続されることで、多くの国民が被害を受けました。明治以降、ほとんど変化しない学校教育がそれを助長しています。 集団かつ受け身で教育を受けるという学校というシステムが、若者から思考し、行動する力を奪っています。

リスクがゼロにならない前提で、リスクとどう向き合うのか?を教育者は子供たちに教える必要があります。自ら思考し、行動すること、多様性の価値などを教えない限り、日本人は空気を読み続け、同調圧力に屈してしまいます。正しい情報を主体的に探し、自ら考える力を養わないと日本人は権力者に管理され、愚作にブレーキをかけられず、結果、国力を減らしてしまうのです。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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