バーツラフ・シュミルのNumbers Don’t Lie 世界のリアルは「数字」でつかめ!の書評


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Numbers Don’t Lie 世界のリアルは「数字」でつかめ!
著者:バーツラフ・シュミル
出版社:NHK出版

本書の要約

世界でいま何が起こっているのかを理解するには、正しいデータを利用し、その数字を適切な観点から見る必要があります。歴史的な観点から現在と過去のデータを比べたり、国際的な観点から国と国とを比べたりすることで、フェイクな情報に騙されず、正しい判断を行えるようになります。

数字は嘘をつかない。乳児死亡率が生活の質を示してくれる!

ファクトをはっきりさせる。(バーツラフ・シュミル)

カナダのマニトバ大学特別栄誉教授のバーツラフ・シュミルは、あのビル・ゲイツも絶賛する著者の一人で、身近な数字を活用しながら、世の中の真実を明らかにしていきます。私たちが一喜一憂する幸福度や身長の伸ばし方などを多くのデータを検証しながら、何が正しい選択なのかを教えてくれます。数字は嘘をつなかいと考え、分析のリテラシーを高めることで、何が真実かがわかるようになります。

著者のユーモアあふれる文章から、私たちは様々なことを短時間で学べます。数字は多角的な視点で見る必要がありますが、例えば、幸福度指数の構成要素を見るとその数字が意味のないことがわかります。データを信じれば、北欧に住むか、カソリックに改修し、スペイン語を学ぶことが正しいことになります。

今日は乳児死亡率とワクチンの接種率について考えてみたいと思います。

生活の質の実態を手っ取り早く把握するために、1つの変数で計れる尺度をわたしが選ぶとすれば、それは乳児死亡率だ。

多くの経済学者たちは、生活の質を1人当たりGDPか可処分所得で計ろうとします。しかし、著者はどちらの指標にも欠点があると述べています。

社会秩序が乱れて治安維持の必要性が高まっているところでも、GDPは増加します。防犯対策への投資が進み、入院治療を要する患者の数が増えるからです。また、平均可処分所得も経済格差があるところでは意味をなしません。他にも人間関係開発指数(HDI)が使われますが、これは、平均寿命、教育達成度(就学予測年数と平均就学年数)、1人当たり国民総所得を組みあわせたものです。人間開発指数は複雑な構成になっていますが、1人当たりGDPと強い相関関係にあるため、生活の質の目安としては1人当たりGDPとあまり変わりません。

著者は生活の質の実態を手っ取り早く把握するために最もよい尺度は、「乳児死亡率」だと指摘します。乳児死亡率とは、年間の1000出生数当たりの生後1年未満の死亡数になります。

乳児死亡率を低く抑えるためには、生活の質を左右する重要な条件がそろっていなければなりません。
■良質な医療体制(産前産後の母子に対する適切なケア)
■十分な生活水準
■衛生的な生活環境
■経済的に恵まれない家庭に対する社会支援制度
こうした条件がそろっていれば、官民双方が国民生活にお金を使い、インフラがしっかりととのっていて、なおかつ、それを利用して維持するだけの収入もあると推測できます。

産業化以前の社会における乳児死亡率は、どこの国でも高いのが当たり前でした。1850年の時点でさえ、西ヨーロッパとアメリカの乳児死亡率は200~300という高さで、新生児の3~5人に1人が生後365日間を生き延びられませんでした。

1950年になると、欧米諸国の乳児死亡率の平均は35~65にまで下がり、生後1年までに命を落とす新生児が約20人に1人にまで減っています。 現在、先進国では乳児死亡率が5を下回り、多くの赤ちゃんが生き延びています。日本や韓国、北欧など人口が比較的少なく、出生率が低い国が優等生になっています。

先進国の中で乳児死亡率が高いカナダは、人口がアイスランドより人口が100倍以上も多いうえ、1年のあいだに、アイスランドの全国民と同じくらいの数の移民を、アジアの低所得国をはじめとする多くの国々から受けいれています。

アメリカはカナダと比較して乳児死亡率が高くなっていますが、これは経済格差が影響を及ぼしています。アフリカのサハラ砂漠以南の10以上の国では、乳児死亡率が受けいれがたいほど高い状態続いています。その値は60を超えており、100年ほど前の西ヨーロッパ諸国と同じ数値になっています。これらのアフリカ諸国が先進国と同程度にまで乳児死亡率を下げるには、医療や衛生環境の充実をはからなければなりません。

ワクチン接種がもたらす経済的な便益。

予防接種は感染症を広げるリスクを減らしています。予防接種が普及することで、感染症で死亡する人たちを確実に減らしています。またワクチンを摂取することで経済的な便益も得られます。

アメリカのボルティモア、ボストン、シアトルの医療専門家が2016年に実施した研究によると、100か国近い低所得国および中所得国で計画されている予防接種普及に関する事業に投資すると、ワクチンに1ドル投資するたびに16ドルの便益が見込めることが明らかになりました。

罹患者当人がこうむる損失だけではなく、そこから波及する経済的な便益を含めて分析したところ、最終的な費用便益比は倍以上高くなり、1ドルの投資に対して44ドルの便益が見込めるという結果が出ました。最大の便益が見込まれたのは麻疹(はしか)の予防で、じつに58ドルの便益を得られます。

高所得国では基本的な予防接種の普及率はおよそ96%に達しています。低所得国でも大きな前進が見られ、2000年の普及率は50%にすぎませんでしたが、2016年には80%になりました。

しかし、感染症の脅威は未だに残って居ます。ポリオの世界全体の年間患者発生数は、1985年に40万人ほどでしたが、2013年には100人を切りました。2016年になっても、ナイジェリア北部、アフガニスタン、パキスタンなど暴力行為が蔓延する地域では、まだ37人の患者がいました。

最近でも、エボラ出血熱、ジカウイルス感染症、新型コロナウイルス感染症、新型コロナウイルスが発生して居ます。人類は、今後も新たな感染症との戦いを続けなければなりません。そのリスクをコントロールするうえで、ワクチンはいまでも最善の方策なのです。

ワクチン接種が進んだイギリスでは、一時的に患者数を減らすことができましたが、ウイルスが変異することで、再び患者数が増加しています。ワクチンは効果があることは間違いありませんが、この新たな感染症との戦いはまだまだ終わりそうもないと考え、三密対策を怠らないようにしたほうがよさそうです。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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