アフターコロナのマーケティング戦略 最重要ポイント40の書評


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アフターコロナのマーケティング戦略 最重要ポイント40
著者: 足立光、西口一希
出版社:ダイヤモンド社

本書の要約

コロナ以前から顧客の思考や行動は変化していました。経営者が意識すべきなのは、時代の変化ではなく、顧客の変化なのです。WHO(誰に)、WHAT(何を)、HOW(どのように)届けるのかを、顧客起点で戦略的に考えることで、商品やサービスが売れるようになるのです。

時代の変化ではなく、顧客の変化を予測しよう!

「予想外・想定外」の出来事はほぼ毎年どこかで起こってきたし、いずれまた新たな変化が起こるだろうことは当然予想されます。(足立光、 西口一希)

今回のコロナでは、いろいろな行動変化がコロナをきっかけに突然起こったように見えたかもしれませんが、コロナがあろうがなかろうが、人間の本質は同じで、顧客の心理は日々変わります。コロナパンデミックがもたらした変化は唐突のものに見えますが、兆しは以前からあったのです。スターバックスやマクドナルド、ネットフリックスは顧客の変化を予測し、デジタルマーケティングの準備を怠らなかったために、コロナ禍で勝ち組になれたのです。

今日を昨日の延長で、明日を今日の延長で考えるのはリスクが大きいことを今回のコロナパンデミックが教えてくれました。私たちが意識すべきなのは、時代の変化ではなく、顧客の変化だと著者たちは指摘します。日本最強のマーケターである2人が、顧客を起点にしたマーケティングの重要性を様々な論点から語ってくれており、学びの多い一冊になっています。

リアルの店舗を展開してきたアパレル企業などは、今回のコロナ禍の中、閉店や倒産に追い込まれていますが、もともとこの10年で若い人たちは店舗よりもEC(電子商取引)で服を買うようになっていました。

そもそも服自体をあまり買わなくなったり、メルカリで中古品を買うことがトレンドになり、顧客の購買行動に以前から変化が起こっていたのです。スタートアップやテック企業の勃興やクールビズのPR効果が相まり、カジュアルな服装で仕事をすることが当たり前になり、ファッションに対するこだわりや支出も減っていました。

また、国土交通省が5年ごとに公表している「都市における人の動きとその変化」というデータを見ると、1987年の平日の外出率は86.3%、それが2015年には80%に減っています。1日の移動回数も1987年は2.63回でしたが、2015年は2.17回に減っていたのです。長期的なトレンドとして、日本人は外出や移動をあまりしなくなっていたのです。そして、今回のコロナがダメ押しになり、スーツや高額な服への支出は一気に減りました。

コロナ禍に関係なく顧客の変化は常に起こりつづけていて、私たち全員がその変化に対応しつづけていかなくてはならない。

既存のデータをきちんと時系列で見ていたならば、外出や移動がますます減少していく状況が、自社の経営にどんな影響を与えるかを考え、今後のビジネスをどうするか、自社の製品やサービスを買いつづけてもらうには何をすべきかなどコロナ以前から検討できたはずです。

私たちは、顧客の心理や行動を変えていくと思われる社会変化を常に意識して、その変化に対してのシナリオを考えつづけるしかありません。経営者は複数のシナリオをつくっておき、何か起こったらすぐに動けるように日頃から準備をしておくべきです。

また、1つの事業や提供方法だけに集中するのではなく、ポートフォリオを組んで複数の対応がとれるように、あるいは、別の方向性に変化してしまっても柔軟に転換できる状態にしておく、ということが、どの企業にも求められています。

デジタルによって引き起こされている、これまでにないほど大きな世代間の差を客観的に認識すべきである。そのうえで、夕ーゲット顧客は誰なのか?その顧客を一番知っているのは誰なのか?その顧客にとって何が重要なのか?こうしたことから考えていこう。 顧客を起点にその変化やニーズをリアルタイムで捉えてマーケティングや経営を変化させていく必要があることは、いつの時代、どんな状況であっても、変わらないのです。 

現代は昭和世代と平成・令和の世代が混在しています。20代、ミドル世代、シニア世代はまったく異なる環境で育ち、まったく異なる習慣を持ち、まったく異なる好みや嗜好、ニーズを形成しています。昭和世代と平成・令和の世代は、全く異なる存在なのに関わらず、日本人という括りで見ることで、その差に気がつかなくなっています。

マーケティングを議論する際も、各世代が自分の意見や認識をしっかりと伝えたほうがよいのです。世代による差異は、まったく違う国で生まれ育ったくらいの違いがあると考え、歩み寄れることで、互いの強みを生かせるようになります。その上で、顧客ごとにプランを考え、クリエイティブやメディア戦略を作成すべきです。

顧客起点でマーケティングを行おう!

本書には40の論点が紹介されていますが、今日は論点5「これからのマーケティング活動は、デジタルネイティブが圧倒的に有利なのか」と論点13 「B2BとB2Cは別物だから、同じマーケティング理論は使えないのか」を取り上げます。

10代はテレビを見ていないデジタル世代だとよく言われますが、総務省のデータを見ると60%以上がテレビも見ていることがわかります。デジタルを活用している顧客はテレビは一切見ない、という二者択一の世界で考えることはとても危険です。

さらに、デジタルと言っても、パソコン経由なのか、スマホを通じたアプリからかで、顧客層の行動や心理はまったく異なります。

マーケターがデジタルネイティブかどうかよりも、 “消費者”を画一的に捉えずに、1人1人の顧客心理に寄り添うことが重要だ。

デジタル化が進んでいるアマゾンや楽天ですら浸透率は、日本の全人ロの4割程度にしか過ぎません。アメリカのアマゾンはリアルでのコンタクトポイントを増やし、顧客の課題を次々解決しています。デジタルで全ての顧客を満足させると考えるのではなく、デジタルとアナログの良いとこ取りをしながら、短期、中長期の戦略を構築していくだけです。

顧客が言語化できない潜在的な不満やニーズ、深層心理の声を探り、そこから具体的な製品やサービスにつながるアイデア、独自性のある便益を考えていったほうが、イノベーションにつながります。

その製品やサービスが、具体的な顧客起点ターゲット(WHO)に対して、どんな独自性のある便益(WHAT)を提供できるかを洞察して、それを認知してもらうことが重要なのです。

B2B(企業間取引)もB2C(企業対個人取引)も何かの施策により、相手の心や行動を変えるという意味では、まったく同じ原理が働きます。マーケティングはモノを売ることだと思っているかもしれませんが、人事部の担当者が人事施策を変えて、従業員満足度を上げたり離職率を減らしたりするのは、何かのアクションをとることで、ターゲットの行動や心理を変えるという意味で、立派なマーケティングだと言えます。B2Cはより一般的な大衆を、B2Bは企業を相手にするので、心に響くポイントは間違いなく違いますが、適切な施策を考えるための頭の使い方自体は、実はそれほど変わりません。

マーケターが忘れてはいけないのは、「最終顧客」を念頭に置くことです。B2Bであっても最終的にそれを利用するCが存在します。そのCにとって独自性のある便益、ほかでは代替できない便益は何かを考えてから逆算していけば、どのようなBの顧客に対して、何をすべきが見えてきます。B2Bであっても、Bの先にあるCの顧客に焦点を当てていくことが大切です。

目の前の顧客だけを顧客として考えてるのをやめ、WHOとWHATを掛け合わせ、その先にいるはずの「最終顧客」(C)にまで提供できる便益と独自性を見据えて、戦略を考えるべきです。新しい付加価値やニーズを見出すことで、商品やサービスが売れるようになります。

Cである最終消費者を起点として考えることで、B向けの戦略がより鮮明になることもあります。たとえば工作機械メーカーであれば、大企業が建築現場で何をつくり、そこに住む人たちは誰かというところから考えてみることで、建築現場のニーズに留まらない、プラスアルファの可能性が見えてくると著者は言います。Cのライフスタイルをイメージすることで、新たなアイデアが見つかります。

もしも、最終顧客とのつながりが経営者やマーケターにまったく見えないとしたら、その製品はコモディティ化するしかなく、価格訴求で勝負するしかありません。顧客との関係が構築できない企業は、レッドオーシャンで戦うことになり、利益を早出できなくなります。

商品開発、戦略は企業側の「想像」「仮説」で考えてはいけません。常に顧客起点でアイデア、独自性、便益を考え、コミュニケーションも個々の顧客に届くように丁寧に設計すべきです。最近のマーケターは、コミュニケーションがデジタルに偏りがちですが、既存メディアやリアルを活用することも忘れないようにしましょう。

顧客に選んでもらえるポートフォリオを作るようにするのです。リアルとバーチャル、サービスや提供方法、都心と郊外などいくつかのポートフォリオを用意することで、顧客から自ずと選ばれるようになります。

顧客を9つのセグマップに分類し、顧客起点で考えることで、企業が本当にやるべきことが見えてきます。複数のセグメントそれぞれに、最適なアプローチを行うことで、商品やサービスが売れるようになります。

本書の40の論点を参考にし、自社のポートフォリオを構築し、顧客から選ばれる企業を目指しましょう。

参考 西口一希氏のたった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティングの書評

ブロガー・ビジネスプロデューサーの徳本昌大の5冊目のiPhoneアプリ習慣術がKindle Unlimitedで読み放題です!ぜひ、ご一読ください。

 

 

 

 

この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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