世界の未来を予測する技術
北野幸伯

世界の未来を予測する技術 (北野幸伯)の要約
覇権国家は歴史的に入れ替わってきましたが、現在はアメリカと中国の対立が世界秩序の軸となっています。ただし、日本や欧州、インドなど周辺国の影響力も無視できません。未来を受け身で待つのではなく、世界を観察し、情報を多角的に分析し、自らの言葉で発信することが、時代の変化を見通す力につながります。鵜呑みにせず、批判的思考を持つことが重要です。
国家のライフサイクルという視点を未来予測に取り入れよう!
世界情勢の「見方を学ぶ」ことで、かなりの精度で世界の未来を予測することは可能です。(北野幸伯)
国の力とは、果たして何で測ることができるのでしょうか。私たちはつい目に見える軍事力や経済指標にばかり注目してしまいがちですが、世界の未来を予測する技術の著者・北野幸伯氏は明確に「経済力」「軍事費」「人口」の3つがその本質だと指摘しています。この3つの要素を軸に考えることで、国と国との力関係や、世界で起こっている出来事の背景がより立体的に見えてきます。
歴史を長いスパンで俯瞰してみると、世界には常に「覇権国家」が存在していたことに気づきます。そしてこの覇権の座は時代ごとに受け渡されてきました。16世紀はスペイン、17世紀はオランダ、18世紀から19世紀にかけてはイギリスがその座を占め、20世紀にはアメリカが覇権国家として君臨してきました。世界史の流れを一歩引いて眺めると、覇権の移動が人類の歴史を形作ってきたとも言えるのです。
しかし、重要なのは覇権国だけではありません。覇権国には、必ずその座を脅かす「ライバル国」が存在してきました。スペインにはポルトガル、イギリスにはフランスやドイツ、そしてアメリカには現在の中国がそれに当たります。つまり、世界の大きな流れを読み解くためには、「主役」だけでなく「ライバル」の動きも同時に見ていく必要があるということです。
では、これからの世界の未来を予測したい私たちは、どこに目を向ければよいのでしょうか。北野氏はまず、「落ち目の覇権国家」であるアメリカと、「ライバル国」である中国の動向を第一に見るべきだと述べています。現在の世界情勢は、アメリカを中心とする「シーパワー民主主義連合」と、中国やロシアを軸とした「ランドパワー独裁連合」の対立構造にあると見ると理解が進みます。
アメリカは、民主主義と自由経済を旗印に世界各国と連携し、中国は一党独裁体制のもと、自国にとって有利な秩序を築こうとしています。この二つの陣営は、今後ますます激しく対峙していくことでしょう。だからこそ、この二国の動きに注目することが、国際社会の流れをつかむうえで最も重要なポイントになります。
また、世界情勢を理解する上では、主役とライバルの周辺国にも目を向ける必要があります。たとえば、準主役とも言える日本は、経済力や技術力において依然として高い影響力を持ち、地域の安定に欠かせない存在です。他にも、欧州諸国、ロシア、インドといった国々が、それぞれの立場で世界秩序に関与しており、その動きは無視できません。
さらに注視すべきは、国そのものではなく地域です。ウクライナ、中東(特にイスラエルとイラン)、台湾、朝鮮半島(北朝鮮と韓国)といった地域は、世界の緊張が集中しやすい「火種」でもあります。これらの地域で起きる衝突や対立は、地政学的に見て大きな波及効果を持ち、瞬時に世界全体を巻き込む可能性を秘めているのです。
北野氏は国家を「ライフサイクル」で捉える視点も提供しています。アメリカ、ロシア、欧州は「衰退期」にあり、日本と中国は「成熟期」、そしてインドは「成長期」に入っているとされます。この視点から各国を見つめることで、彼らが何を目指し、どこへ向かおうとしているのか、その背景が見えてくるのです。
どの国も永久に強いわけではなく、浮き沈みのサイクルを持っている。この事実を意識するだけでも、私たちの視点は大きく変わってくるはずです。
未来を予測するために必要なこと
要するに「国と国民の安全を守り、経済成長を実現したリーダー」は、「良い指導者」である。 逆に「国と国民の安全を守れず、経済を成長させることができなかったリーダー」は、「悪い指導者」ということになります。
また、国のリーダーに求められる資質も見えてきます。「安全保障」と「経済成長」の両立を実現できる指導者こそが「良い指導者」であり、それができなかったリーダーは「悪い指導者」とされるべきだと北野氏は語ります。
北野氏の提言には、私たちが今後どのように世界と関わっていくべきか、そして誰を信じ、どんな行動をとるべきかという明確なヒントが詰まっています。とりわけ重要なのは、「良い指導者」と「悪い指導者」をしっかりと見極める視点です。
良いリーダーとは何か。それは抽象的な理念を語る人ではありません。具体的に「消費」と「所得」を増やす政策を打ち出し、国民に希望と余裕をもたらす人です。この2つを増やすことで「好景気スパイラル」が生まれ、企業は利益を上げ、給与は上がり、人々が安心してお金を使える社会が実現していきます。だからこそ、私たち国民は、目の前の政治家がどんな言葉を使っているかよりも、どんな経済政策を実行しているのかに注目する必要があるのです。
反対に、「悪いリーダー」とは、国民の安全も経済も守れなかった人物を指します。外交面でその典型的な例とされるのが、民主党政権時代の鳩山、菅、野田の3人の総理です。彼らの時代、日本はアメリカ、中国、ロシア、韓国といった主要国すべてとの関係を悪化させ、国際社会での立ち位置を大きく損ないました。
結果として、国益を守るどころか、むしろ損なってしまったと言わざるを得ません。外交における一手一手が、国の信頼や経済的影響力にも直結するからこそ、指導者の資質は常に問われるべきなのです。 経済においても同様です。
1990年以降の日本は、「失われた30年」とも呼ばれる長期停滞に苦しんできました。この間、どれだけのリーダーが現れても、国民の消費も所得も大きく伸びることはなく、経済は停滞を続けました。つまり、彼らは「経済成長を実現できなかったリーダー=悪い指導者」だったという評価になります。
どれだけ立派な理念を掲げても、実際に生活が苦しくなっていくのであれば、国民にとって意味はありません。 だからこそ、私たちには「見る目」が必要です。感情ではなく、数字と実績に基づいて評価する冷静な視点。誰が、どんなビジョンを持ち、どんな政策を実行し、その結果、国民の生活がどう変わったのか。それを見つめることが、民主主義社会における私たちの責任でもあるのです。
人の数だけ、国の数だけ「真実」がある。 その次に知っておくべき存在は、「情報ピラミッド」です。 世界には、「国の数だけ情報ピラミッドがある」ともいえるでしょう。
さらに大事なのは、私たち自身の「情報リテラシー」です。世界には「真実が一つ」などということはなく、国の数だけ「真実」が存在し、それぞれが自らに都合の良い情報を流しています。これが「情報ピラミッド」の正体です。
私たち日本人は、アメリカ・イギリスの情報ピラミッドの中に暮らしており、日々のニュースもそのフィルターを通して届けられています。 一方、ロシアには「クレムリン情報ピラミッド」があり、中国には「中共情報ピラミッド」があります。
これらは、プーチンや習近平が国民や世界に信じさせたいことを意図的に発信する、いわば国家規模のプロパガンダ装置です。しかし逆に言えば、そこに入ってみることで、彼らの「意図」や「戦略」を読み解くこともできるのです。
つまり、私たちは偏った情報に頼るのではなく、複数の「情報ピラミッド」にアクセスし、バランスよく情報を取り入れることが求められているのです。誰かのフィルター越しに見るのではなく、自分の目で世界を見つめ、自分の頭で考える。それが、これからの時代を生きる私たちにとって、最も重要なスキルになります。
新聞やテレビ、インターネット、そして海外メディアまで。情報の入り口はいくらでもあります。でも大切なのは、それらをただ受け取るだけで終わらせないこと。自分なりの視点で分析し、言語化し、そして周りと共有する。このサイクルを日常の中に持てるかどうかが、情報リテラシーの差となって現れるのです。
北野氏のメッセージは驚くほどシンプルです。 未来は、自分で観察し、分析し、アウトプットすることで、予測のクオリティが上がると言います。
受動的にニュースを待つのではなく、正しい情報を拾いに行く。答えを求めるのではなく、自分で問いを立てる。他人の意見を鵜呑みにするのではなく、自分の頭で整理して、自分の言葉で語る。それこそが、未来を自ら切り開いていく最も確かな道なのです。
誰かの都合に乗せられるのではなく、自分で見抜く。そしてただ生きるのではなく、「理解しながら生きる」。これこそが、情報戦に覆われた現代を生きる私たち一人ひとりに求められる生き方ではないでしょうか。 未来は、待つものではありません。 未来は、読み解き、掴み取るものなのです。
















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