「何を話していいかわからない」がなくなる 雑談のコツ
ひきたよしあき
アスコム

「何を話していいかわからない」がなくなる 雑談のコツ (ひきた よしあき)の要約
雑談力は才能ではなく、日々の中で育てられる“仕組み化”の積み重ねです。感情を丁寧に言葉にし、相手の魅力に気づき、リアクションで返す。そのうえで、5W1Hの質問で会話のトスを繰り返し、教えてもらう姿勢を大切にする。しくじり体験や感謝を伝える習慣も、雑談の質を高める重要な要素です。雑談を無理なく続けるための「仕組み化」を意識することで、会話は自然と広がり、信頼を育てる力に変わっていきます。
雑談の達人は、話すための仕組み化上手
雑談の達人は、決して特別な話題を持っているわけではありません。ただ、「反応」の仕方を知っているだけなのです。相手の言葉の中のひと言を拾って、そこに反応する。それだけで、不思議と会話は続いていくのです。 (ひきたよしあき)
今から40年前、私が広告会社に入社した当時、思いのほか大きな壁となったのが「雑談」でした。クライアントとの重要な会議の合間や、社内ミーティングのちょっとした隙間に交わされる、先輩たちの軽妙なやりとり。その場の空気を読み、笑いを生み出しながら、自然に場の雰囲気を和らげていく様子に、ただ圧倒されるばかりでした。
仕事ができる人たちは、雑談のセンスまで一流なのか——そんな思いが頭をよぎり、悔しさと憧れがないまぜになった気持ちは、今でも鮮明に覚えています。自分もあのように話せるようになりたい。その一心で、雑談の上手な人たちの会話を観察し、ときには真似をしながら、試行錯誤を積み重ねてきました。失敗もたくさんありましたが、そのたびに気づきがあり、少しずつ雑談に対する苦手意識が和らいでいったのです。
そんな私にとって、「何を話していいかわからない」がなくなる 雑談のコツは、まさに自分の経験を体系化してくれた一冊でした。自分がぼんやりと感じていたことを言葉にしてくれたような感覚があり、ページをめくるたびに深く頷いていました。
元博報堂のクリエイターであり、現在は作家・コミュニケーションコンサルタントとしても活躍するひきたよしあき氏は、「雑談が苦手」と感じている人に対して、特別な話術や生まれ持った明るさがなくても問題ないとやさしく語りかけています。
著者自身も、かつては雑談に強い苦手意識を持っていたそうです。上司や同僚との何気ない会話でさえ、緊張やストレスを感じていたといいます。ですが、試行錯誤を重ねる中で、雑談をラクに続けるための「考え方」と「仕組み」を見つけ出しました。
現在では、大学でコミュニケーションを教える立場として活躍されています。だからこそ、著者の言葉には、広告会社で培われた現場の経験が詰まっており、理論だけではない実践的な説得力があります。
本書で紹介されている具体的なテクニックのひとつが、「相手の言葉をひとつ拾って返す」こと。雑談の達人と呼ばれる人たちは、特別な話題を用意しているわけではありません。相手の言葉にどう反応するか、そのコツを知っているのです。
必要なのは、「コミュカ」ではなく、「ラクに話すための仕組み」。
著者が提案しているのは、うまく話すためのテクニックではなく、雑談そのものを「無理なく続けられる仕組み」に変えていくという発想です。
実際、雑談が得意な人は、話し方に特別な技術があるわけではありません。私の先輩たちも、決して饒舌だったわけではなく、相手との会話そのものを楽しんでいる人が多かったように思います。
雑談の巧拙を分けるのは、「話のうまさ」ではなく、「相手との向き合い方」です。この視点を持つだけで、会話への取り組み方が大きく変わってきます。
ひきた氏は、「雑談の9割は返事でできている」と指摘します。つまり、会話を続けるうえで本当に大切なのは、次々と話題を提供することではなく、相手の言葉に対して丁寧にリアクションを返すことなのです。こちらの反応が、相手のさらなるリアクションを自然に引き出し、会話のリズムが生まれていきます。
雑談とは、一方通行のスピーチではなく、言葉のキャッチボールです。お互いに言葉を投げ合い、そのやりとりを途切れさせないことこそが、心地よい会話を生み出す鍵になります。
たとえば、相手が「昨日、久しぶりに探偵小説を読んだんです」と話したなら、「探偵小説、いいですね。どんな作品でしたか?」と自然に返す。こうしたシンプルなやりとりを重ねることこそが、雑談の基本です。
重要なのは、「次に自分が何を話そうか」と考える前に、まず相手の言葉にしっかり耳を傾けることです。自分の発言ばかりを意識してしまうと、相手の言葉が入ってこなくなり、反応もぎこちなくなってしまいます。 とはいえ、相手の言葉をひとつ拾って返すだけであれば、それほど難しくはありません。むしろ、どんな相手にも、どんな場面でも応用できる、シンプルで実践的な方法です。
加えて、ひきた氏は「リアクションの型」も紹介しています。「あ行」の言葉――「ああ」「いいですね」などの相づちや、「す行」の言葉――「すごい」「すてき」「すばらしい」といったポジティブな反応を意識して使うことで、会話に自然なテンポとリズムが生まれます。それが相手に安心感を与え、より深いやりとりへとつながっていくのです。
さらに私が強く共感したのが、感情を丁寧に言葉にし、それをストックしていく「感情ワード貯金」の発想です。ひきた氏は、感情をより具体的に表現することで、会話に深みと温度が生まれると述べています。
たとえば、「うれしい」という気持ちを「胸がじんわりする」「頬がゆるむような気持ち」と言い換える。「悲しい」を「時間が止まったような感覚」「静かに心が沈む」、「楽しい」を「空気が明るくなった」「声を出して笑わずにいられなかった」など、少しだけ丁寧に感情を描写するだけで、相手との会話に豊かなニュアンスが加わります。 感情を細やかに表現する力を日頃から意識して育てていくことが大切です。
それは、雑談をただのやりとりではなく、心が通うコミュニケーションへと昇華させるための大切な習慣です。こうした「感情ワードのストック」は、相手との関係を育て、信頼を築くうえでも大いに役立ちます。
対話は相談、雑談は教えてもらうことと捉え、相手との親睦を深める!
観察を続けていると、人に対する「魅力のアンテナ」がどんどん鋭くなります。
もうひとつの鉄板技が、「褒めること」です。とはいえ、ただ表面的に褒めるのではなく、相手をよく観察し、特徴で終わらせず“魅力”にまで踏み込んで言葉にすることがポイントです。
「説明がわかりやすいですね」ではなく、「分析が的確で、業界の実態がわかり、多くの学びを得られました」といった具合に、相手の本質に触れる褒め方ができるようになると、伝わり方がまるで変わってきます。
そこに、「奥行きがあり、素晴らしいですね」「良い資料なので、他のメンバーにも紹介したいです」といったなアクションを添えることで、会話のキャッチボールに弾みます。
褒める力と反応する力。このふたつがかけ合わさることで、雑談の質は一気に変わります。魅力に気づく→言葉にして伝える→感情を添えて反応する。この循環が生まれると、雑談は単なるトークではなく、信頼や共感を育てる時間へと変わっていきます。また、相手の強みに目を向ける視点は、実はSWOT分析にも通じ、ビジネスにおいても大きな効果を発揮します。
もちろん、雑談のネタは突然降ってくるわけではありません。日々の中で感じたこと、笑えたこと、驚いたことを少しずつストックしていく。その積み重ねが、会話を続けるための“燃料”になります。著者は「誰かにみやげ話を持っていくつもりで日常を見つめてみてください」と語っています。何気ない風景にも、小さな気づきにも、話のタネはたくさん眠っているのです。
著者が提唱する「ありがとうを口癖にする」習慣にも私は深く共感しました。私自身、日常のあらゆる場面で「ありがとう」をできるだけ多く伝えるようにしています。感謝の言葉を探すということは、相手の行動や存在に自然と目を向けることでもあり、それが観察力を育て、雑談のヒントを見つけるアンテナにもなってくれます。
さらに、「感謝日記」を書くことで、自分の中の感情や小さな喜びに気づけるようになります。これは自分との対話でもあり、結果的に言葉の引き出しが増えて、雑談力の底上げにつながっていくのです。
そして、もうひとつ忘れてはならないのが、「しくじり体験」の活用です。完璧な話よりも、ちょっとした失敗談のほうが、人の心には届きやすい。私も断酒前のアルコールに振り回されていた時代の話を、雑談の中であえて赤裸々に語ることがあります。失敗を笑えるようになると、不思議なほど相手との距離が近づいていきます。
飾らない言葉、過去の自分へのちょっとしたユーモア、そこにある人間らしさこそが、相手の共感を呼び、「この人ともっと話したい」と思わせる力になります。雑談とは、情報を伝えるだけでなく、「人となり」を伝えるための大切な時間なのです。
また、雑談の中に「会話のトス」、つまり相手に質問を投げることを意識的に取り入れると、より深いコミュニケーションが生まれるだけでなく、ビジネスにも良い効果をもたらしてくれます。
自分ばかり話すのではなく、「あなたはどうですか?」「どこで?」「誰と?」「なぜそう思ったのですか?」といった 5W1Hの質問を繰り返していくことで、会話は自然と広がり、相手とのやりとりに奥行きが出てきます。
雑談というのは、こちらが一方的に話す場ではなく、相手に教えてもらう場であるという意識を持つと、ぐっと質が上がります。 著者は、「対話は相談、雑談は教えてもらうこと」と整理していますが、まさにその通りだと感じました。
雑談を通じて相手のことをもっと知る。相手の価値観や考え方、日々感じていることに耳を傾ける。それは、相手にとっても「自分を大切に扱ってもらっている」と感じられる瞬間になるのです。
そして、人は自分の話を気持ちよく聞いてもらえると、心を開きやすくなるものです。質問をし、聞くことで相手にスポットライトを当てる。教えてもらうことで、相手の中にあるものを引き出す。それが雑談を通じて親睦を深める大切な要素となります。
つまり、雑談とは、ただ場をつなぐための会話ではなく、相手の魅力や考えに光を当てる時間でもあるのです。そうした積み重ねが、信頼を育て、結果的にビジネスの場でも関係性を円滑にしていくことにつながります。
「ちゃんと、あなたの話を聞いてるよ」という姿勢を見せるように心がける。まずは、この一点さえできれば、それでOKです!
雑談は、生まれ持った才能ではなく、後から身につけられる姿勢と習慣であることが、本書を通してよく理解できます。人とどう向き合うか、言葉をどんな温度で手渡すか、相手の感情をどう受け止めるか。その一つひとつは特別な技術ではなく、日々の意識の積み重ねによって磨かれていくものです。
何気ない会話の中で小さな違和感や気づきを拾い、「あなたの話をきちんと受け取っています」というまなざしを向ける。それだけで、雑談は不自然さがなくなり、より自由で心地よいものへと変わっていきます。 会話に苦手意識を持っている人ほど、本書は大きな支えになるはずです。
後半の実践編まで読み進めると、より雑談への理解が進みます。紹介されているアドバイスを一つずつ実際の会話で試していくうちに、気づけば自分自身が「雑談を楽しめる人」へと変わっている。その変化を、きっと実感できる一冊です。
















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