
人生の大問題と正しく向き合うための認知心理学 (今井むつみ)の書評
人は感情や思い込みによる認知バイアスで、十分な情報があっても誤った判断を下してしまいます。慶應義塾大学の認知科学者・今井むつみ氏は、因果と相関の混同や、無意識の補完を行う「スキーマ」が確証バイアスを生む仕組みを解説します。鍵となるのは、不完全な情報から仮説を導くアブダクション推論で、これはAIにはできない人間固有の能力です。人間は記号接地によって体験を意味化し、知識を身体化しますが、効率偏重はこの力を損ないます。