アダム・グラントの『ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代』の書評

一人は最終的に「発言」を選び、もう一人は「離脱」を選んだが、二人の選択には共通する点が一つある二人とも、黙っているよりは「発言」することを選んだということだ。また、長期的に見て私たちが後悔するのは、「行動を起こしたうえでの失敗」ではなく、「行動を起こさなかったための失敗」であることが、研究で示されている。もう一度やり直せるとしたら、ほとんどの人はもっと積極的に考えを表現しようとするだろう。(アダム・グラント)


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行動を起こさなかったための失敗が、人生でもっともひどい失敗?

ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代を再読しています。
自分のキャリアを高めるためには、2つのアクションがあると
著者のアダム・グラントは指摘します。
1、組織のために、自我を捨てて、発言する
2、組織を離脱し、自分のキャリアップを図る

しかし、何れにしても一度は発言しなければ、ただの負け犬です。
一番よくないのは、自分の発言を控え、失敗することです。
「行動を起こさなかったための失敗」がもっともひどい失敗で
あなたの未来に後悔という二文字をもたらします。

多くの人はチャレンジしなかったことを後悔します。
自分がオリジナルでいることをやめた途端に人生はつまらなくなります。
やりたいことを犠牲にする前に、せめて自分の意志を明らかにしましょう。
発言しないのは、存在しないのと同じです。
恐怖心を捨てて、自分の道を歩まなければ、成功は手に入りません。

挑戦して失敗しなさい。しかし、挑戦に失敗してはなりません。(ジョン・クィンシー・アダムズ)

挑戦する前に、怖気付いたら結果を残せるわけがありません。
まずは、チャンスを掴めそうだったら、発言することです。
本書にはスティーブ・ジョブズに抗う女性社員のドナ・デュビンスキーが紹介されていますが
彼女はスティーブの癖を見抜き、戦略を考え、発言することでポジションを得ます。
大胆に発言する裏で、しっかりと準備を重ねるのです。
彼女はその後離脱しますが、チャレンジを続けることで、成功の階段を登り続けます。
自らの存在感を示さない限り、面白いことは起こらないのです。

成功者が先延ばし??タイミングを図ることも大事

オリジナルな人になるためには、いちばん最初に行動しなくてはならないわけではない。大成功を収めている人たちは、スケジュールどおりに到着しているわけではない。パーティには少しばかり遅れて着くぐらいが、格好がつくのだ。(アダム・グラント)

課題を先延ばしすることで、一つの選択肢にこだわらなくなります。
ただ単に先延ばしにするのではなく、課題に取り組む前に
様々なアイデアを生み出そうという情熱が、創造性のきっかけになるのです。
古代エジプトには先延ばしには2つの意味があったそうです。
一つが怠惰、もう一つが好機を待つことだったのです。
怠惰な人は結果を残せませんが、タイミングを図ることで
より良い結果を残せるようになります。

本書のモナリザの例を読むと、創造性とタイミングの関係を理解できます。
ダ・ヴィンチは1503年から『モナ・リザ』を描きはじめましたが
途中でなんども作業を止めています。
何年かのあいだ描いてはやめるということを繰り返していたのです。
そして、亡くなる直前の1519年になってようやくモナリザを完成させました。
ダ・ヴィンチは光に関する実験やそのほかの「余計なこと」をして時間をムダにし
絵画をなかなか完成でませんでしたが
そのような数々の「余計なこと」こそが、作品を唯一無二のものにしたのです。
クリエイティブな人たちは、積極的な先延ばしを採用しているのです。

オリジナリティを大いに発揮する人は、大いに先延ばしもするが、まったく計画をしないわけではない。戦略的に先延ばしをし、さまざまな可能性を試し、改良することによって少しずつ進めていく。

公民権運動で有名なキング牧師の演説の印象的な「I Have A Dream」も
構想段階にはなかった言葉です。
彼は演説直前まで、演説の文章を作るのことを先延ばししました。
書き始めてからも、なんども文章を書き直し
ギリギリまで成功のための準備を重ねました。
過去の知識や体験を組み合わせ、完璧を目指したのです。

「夢」のくだりは、実は聴衆から夢の話をしてというメッセージを聞き
即興で演説の中に取り入れたものでした。
彼は以前の演説でも「夢」のいくつかのバリエーションを繰り返していたたために
上手に話すことができたのです、
あの「夢」の演説が行なわれた一年間だけで
キング牧師は45万キロもの旅をし、350以上の演説をしていたそうです。
キング牧師は、クリエイティブに先延ばしをすることで
「使える素材」をたくさん頭のなかにストックし、本番に備えていたのです。
だからこそ、彼の演説は聴衆の心を打つ歴史的な演説になったのです。

先発者が成功するわけではない!

オリジナルであるには、先発者である必要はない。オリジナルであるというのは、ほかとは異なる、ほかよりも優れているという意味である。

「アイデアラボ」社の創業者であるビル・グロスは、
会社の成功要因でもっとも重要なことは、タイミングだと指摘しています。
成功と失敗を分けたのは、42パーセントの場合でタイミングだったのです。
アイデアのユニーク性やチームワークも重要ですが
顧客がそれを欲しいと思えるタイミングを意識しないと、成功はおぼつかないのです。

ピーター・ゴールダーとジェラルド・テリスは
「先発企業」と「後発企業」の状況を比較しました。
私たちはいち早く行動したパイオニアが成功すると思いがちですが
後発企業は市場形成後に参入するので、失敗する確率が下がります。
彼らは30以上の異なるカテゴリーにおいて、何百ものブランドを分析したところ
先発企業の失敗率は47パーセントだったのに対し、後発企業はわずか8パーセントでした。
先発企業は後発企業よりも約6倍、失敗率が高かったのです。
先発企業は、生き残っても、平均10パーセントの市場を占有するのみで
対する後発企業の占有率の平均は、28パーセントでした。
この驚くべき数字を見るとタイミングの重要性を理解できます。

成功するためには、行動を急ぐのではなく、マーケットとの対話をじっくり重ね
最適なタイミングで最良なサービスや製品をリリースすることが必要なのです。

まとめ

オリジナルな存在であるためには、行動を起こさなければなりません。
もしも、あなたが挑戦しないのなら、誰かがそのアイデアを実現するだけです。
失敗を恐れずに、新たなチャレンジをスタートしましょう。
製品やサービスをリリースするときには、注意が必要です。
多くの人は早くスタートするのがよいと考えがちですが
特許やネットワーク効果がはたらく場合をのぞいて、後発企業が有利になります。
実は、オリジナルであるためには、先発者である必要はないのです。
オリジナルであるというのは
ほかとは異なること、優れていることを顧客に示すことなのです。

今日もお読みいただき、ありがとうございました。

     

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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