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一億三千万人のための『論語』教室
著者:高橋源一郎
出版社:
本書の要約
著者の高橋源一郎氏は現代人こそ、論語の教えを学ぶべきだと考え、孔子との対話を20年間繰り返すことで、本書を完成させます。世の中をよくするために、仁の教えを説き、70歳になるまで努力を続けた孔子から、私たちは多くのことを学べます。
現代にも通じる論語!孔子の言葉で人生をより豊かにしよう。
子曰く、君子重からざれば威あらず。学べば固ならず。忠信を主とし、己に如かざる者を友とするなかれ。過ちては改むるに愕かること勿れ。
渋沢栄一の「論語と算盤」が話題になり、論語が見直されています。論語の名言を座右の銘にする経営者も多く、論語を再び学びたくなり、よい本を探していたところに出会ったのが、本書一億三千万人のための『論語』教室です。高橋源一郎氏の意表をついた現代語訳のおかげで、一気に孔子との距離が縮まり、論語の素晴らしさをようやくこの年になって知ることができました。
著者の意訳はとてもぶっ飛んでいて、現代人がイメージできる言葉に置き換えることで、孔子の思想を身近なものにしています。孔子の言葉を著者の視点で膨らますことで、読者はとっつきにくい論語を理解できるようになるのです。
いいですか。センセイは前から気になっていたんですけどね、みなさん、最近ちょっと浮ついてるように見えるんですよ。それじゃあ、バカに見えちゃうんじゃないかなあ。確かにほんとうに頭がいい人は、ぱっと見、遊び人に見えたりするんですけど、みなさんはそうなってないんですよね。ただのおバカさんに見えちゃう。いや、だから、もうちょっとマジメにやりましょうね。まず、友だちとの付き合いから変えてみるのもいいですよね。ギャグばかりいってるやつと付き合うのもムナシいでしょう?でも自分の方にも問題があると思ったらとにかくすぐ直すことですよ。妙な意地なんかはったって仕方ないとセンセイは思うんですよ。
友人や仲間との人間関係に意地を張ることは禁物です。人は他者の欠点に目が行きがちですが、欠点は誰にでもあります。孔子は人のことを褒める天才だったと言われています。仲間の強みを見つけ、それを褒めることで、人間関係を改善できます。自分の悪いところを見つけ、改善し、仲間の長所を引き出すことで、人生はうまくいくようになるのです。
子貢、君子を問う。子曰く、先ず行え。其の言は而る後にこれに従う。
孔子はこのブログのテーマでもある行動の重要性についても語っています。弟子の子貢が、知識人にとっていちばん大切なことはなにかと訊ねると孔子は、考えることよりも行動することが大切だと指摘します。
「とにかくやってみること」という高橋氏の訳が孔子の心を的確に表現しています。
それは、とにかく、なんでもやってみることなんです。考えるのはあとでいいんです。考えるのはみんな得意なんだから、あとで十分なんです。まちがってもいいから、とにかく、行動に出てみる。それしかないんです。
間違っているかどうかは未来が決めることで、今の自分にはわかりません。新たな行動が創発につながり、次の行動のヒントが生まれます。行動し、失敗したらその理由をあとで考え、自分の行動を改善するうちに、未来を明るくできるのです。失敗した経験も未来に活かせると捉え、まずはあれこれ考えるのをやめ、アクションを起こしてみましょう。
善き人になるために、「仁」を身につけよう!
子曰く、学んで思わざれば罔し。思って学ばざれば殆うし。
孔子は真摯に学ぶこと、コミュニケーションの重要性を弟子に語りかけています。現代人はインターネットですぐに検索し、わかったふりをすることで、実は損をしています。実際に人に会い、他人と意見を酌み交わすことで、人は成長できるのです。高橋氏の訳が示す通り、自分の殻に閉じこもることで、ヤバいことになると考え、積極的に外に出るべきです。
いいですか、教わるばかりで自分の頭で考えるということをしないとバカになっちゃいます。でも、他人の意見を聞いたり知識を教わったりしないと、自分の中に閉じこもって考えてばかりいると、すごくヤバいことになっちゃうから、気をつけてください。
論語といえば、「礼」と「仁」が有名ですが、今こそ私たち現代人はその2つの言葉を意識すべきです。礼の心を取り戻すことで、相手への思いやりが生まれ、人間関係をよくできます。
子曰く、君に事うるに礼を尽せば、人は以て諂いとなすなり。
『権威』の前に頭を下げるなんてダメだと考える人が増えていますが、先入観を捨てて、相手に礼を尽くしましょう。その人がどんな人物なのか?わからない中で、礼を忘れることで、自分に損をさせてしまいます。相手をリスペクトできなければ、鏡の法則通り、自分も大事にされません。
その人がそこにいる、そのことだけで、リスペクトできる、と考えるのです。わかりますか?それは、そこにいるその相手への、深い気配りであり、思いやりでもあるのです。そして、そのことによって、その相手も、尊敬されるべき存在へとなってゆく。そういう、ダイナミックな思考こそ、『礼』なんです。知らない人だから尊敬しなくていい、それでお終い、という考え方と、どちらが素敵か、ちょっと考えればわかるんじゃないですか。
孔子は善き人になるために、仁という考えを忘れてはならないと言います。仁は学ぶだけでは意味がなく、実践することで、はじめて人は成長できるのです。
子曰く、惟だ仁者のみ、能く人を好み、能く人を悪む。
世の中にはよい人もいれば、悪い人もいますが、果たして、その人のことをちゃんと理解して、付き合い方を決めているでしょうか?著者は好むべき人をきちんと好きになり、嫌うべき人をきちんと嫌うことはとても難しいことだと言います。感覚的に良し悪しを判断するのをやめ、『正しく判断して』決めるべきです。人の価値を判断することはそれほど難しいことで、慎重を期すべきです。
子曰く、筍くも仁に志さば、 悪むなきなり。
第一印象や人のうわさ話から、相手を評価するのをやめましょう。仁の心を持ったよき人になろうと思えば、理由もなく相手を遠ざけるのをやめ、相手の良さを評価し、それから付き合い方を判断すればよいのです。
子曰く、賢を見ては斉しからんことを思い、不賢を見ては内に自ら省みるなり。
周りの人を自分の成長の糧にすると良いと孔子は言います。私たちはどんな人からも学べます。賢い人間がいたら、ぜひ付き合って、よいところを吸収し、逆にダメな人であれば、そこから自分の行動を改めればよいのです。人をじっくり観察し、よいところを取り入れ、悪いところがあれば、そこから自己を見つめなおすようにすることで、自分をよくできるのです。
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