中原圭介氏の定年消滅時代をどう生きるかの書評


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定年消滅時代をどう生きるか
著者:中原圭介
出版社:講談社

本書の要約

今後、日本では定年が延長され、75歳まで働くことが当たり前になります。人生で3つの仕事や会社を経験するようになり、今までのライフデザインを変えなければなりません。卒業後、50年間働く時代に備え、自分のキャリアをしっかりとデザインし、長くなった人生を楽しむようにしましょう。

75歳定年時代には、3つのキャリアが当たり前になる!

これからの日本では、大学を卒業後に就職して70~75歳まで働くことになるので、個人の会社員生活は50年前後と、今の定年より10~15年程度も長くなります。将来的に企業の平均寿命が20年を切るようになったら、会社員生活は企業寿命の2.5倍を超える長さになってしまうというわけです。平均的な働き方をする日本人であれば、計算の上では人生で3つの仕事や会社を経験しなければなりません。(中原圭介)

人生が長くなる中で、3つの仕事やキャリアを経験することが当たり前になると経営アドバイザーの中原圭介氏は指摘します。ひとつの仕事や会社に従事する期間を15~20年に区切って自らのキャリアを見直し、人生を設計する必要があります。30代後半を第一の定年、50代後半を第二の定年としてキャリアを3つに区分し、リカレント教育(学び直し)を行い、新しいスキルを習得する必要があります。

企業との雇用契約も職務や勤務地が限定されない「メンバーシップ型」から、限定される「ジョブ型」へと大きく変わっていきます。「ジョブ型」での給与は年齢ではなく職務に対して支払われるので、日本型の「終身雇用」や「年功序列」の制度が崩れていくのは不可避です。

政府は企業の雇用義務を75歳まで延長し、事実上の定年消滅時代=生涯現役時代へのシフトを進めていきます。生涯現役時代において日本人が納得できる職業人生を送るには、今の若者の仕事に対する価値観が大きなヒントになると思っています。若者にとって仕事というのは、自らがスキルを磨いて成長できる機会であるのに加えて、やりがいや楽しさを感じることができる対象でもあるからです。中高年と高齢者も若者と同じような考え方に変えていくことが、人生をいっそう楽しく豊かなものにするポイントになるはずです。

自らがやりたいと思って仕事をすると、ストレスを減らせ、健康寿命も伸びます。人生100年時代を寝たきりで過ごすか、健康で過ごすかも?働き方によって決まります。仕事を楽しむ能力を身に付けることができれば、がんや潰瘍などを誘発するリスクが大いに低下し、健康寿命を大幅に延ばせます。

人生100年時代は考える力を養うことが重要!

若い世代から中高年・高齢世代まで年齢を問わず、職務内容や能力・実績に応じて給与と待遇を決定するシステムづくりが進んでいくことになります。その時に私たちに求められるのは、転職で引き合いが強いキャリアやスキル、仕事への情熱や積極性です。だからこそ、仕事を日々こなしながら、学び直しの時間をつくることが、ひとりひとりの人生を豊かなものにします。満ち満ちた好奇心を持ちながら、謙虚に学ぶ姿勢を徹底している人は、きっと貴重な人材として成長することができるでしょう。

ライフデザインを考える上では、変化に適応する力を養う必要があります。デジタル技術のイノベーションが起こりつつあるなかでは、個人は情熱や努力次第で3年もあればひとつのプロ領域をつくれるようになります。9年間、真剣に学び、働くことで、3つのプロ領域を獲得できます。

若い時から、自己投資を行い、3つのプロフェッショナルを組み合わせることで、オンリーワンの存在になれ、様々な仕事のオファーをもらえます。スキルは多ければ多いほど、個人の価値を高めることができます。仕事で派生的に身に付けるスキルや趣味と関係のあるスキルを組み合わせるのありだと思います。

iPhoneやGoogleに依存するデジタルネイティブ世代は、興味の範囲が狭くなり、物事を考える時間が減っています。今後もテクノロジーが進化する中で、考える時間が減り、思考能力が衰えていくはずです。日々の生活で考える機会が奪われていくなかで、自ら考えるのをやめ、自己投資を怠るとロボットや AIに仕事を奪われてしまいます。

これからどれだけ技術革新が推し進められようとも、絶対に廃れない基本的な能力があります。それは、考える力=思考力(読解力・論理力・直感力・感性などを包括する能力)です。考える力が強い人は、いつの時代にどこで働こうとも、常に求められる貴重な人材になるからです。言い換えれば、考える力が強い人は「基本的なスキルが高い人」と言えるでしょう。

今後、どのようなスキルや専門性を身に付けるにしても、考える力はその土台となる基本的な能力でもあるので、その能力が廃れることは絶対にありません。考える力=思考力を鍛えるためには、日頃から何でも自分の頭で考えるようにすることです。

GAFAが急速に存在感を増してきているなかで、アメリカでは頭を「使う人」と「使わない人」の経済格差が苛烈な勢いで拡大しています。今後、日本でも同じことが起こる可能性が高いとするなら、自分で物事を考えない人の未来は暗くなるはずです。

それを避けるために、iPhoneなどのデジタルギアから距離をおくべきだと著者は言います。スマートフォンに頼るのをやめ、自分の頭で考えるようにするのです。考える力=思考力を構成する要素である「感性」を豊かにし、「直感」を磨くことで、人生の選択肢が広がります。

感性を豊かにするためには、自然と触れ合う時間をつくるようにすることも効果的だと著者は言います。iPhoneを持たずに、散歩をすることで、普段は触れることができない情報を五感から大量にインプットできます。感性を豊かにすることで、直感を鍛えられるようになるのです。

考える力=思考力がすぐれている人は、たいていの場合、その読書量が平均的な人と比べて圧倒的に多いという事実があります。マサチューセッツ工科大学やスタンフォード大学などの卒業生の考える力が強いのは、在学時に大量に読書を行っているからです。読書を習慣化し、考える時間を持つことで、直観力や判断力が鍛えられていきます。読書を通じて、知識を得るだけでなく、自分との対話を繰り返すうちに本当に自分のやりたいことが見えてきます。

自分のスキルを磨くこと、読書を行うこと、自然との時間を増やし五感を磨くことで、他者とは異なる存在になれます。自分の頭で考える能力を鍛えることで、人生を真剣に考え、やりたいことが見つかります。いくつものスキルを磨き、それを組み合わせることで、様々な仕事のオファーをもらえるようになるのです。

 

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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