何をしなくとも勝手に復活する日本経済 (上念司)の書評


何をしなくとも勝手に復活する日本経済
上念司
ビジネス社

本書の要約

時代はデフレからインフレの転換点にあります。今後、インフレが長期化するならば、時代を生き抜くために、まずメンタルを変える必要があります。経営者はインフレに適応するためにデフレ脳からインフレ脳に変換し、経営や投資のやり方を変えなければなりません。

世界がインフレモードにシフトする理由

日経新聞をはじめとしたメディアの経済記事を信じてはいけない。ましてそれを信じて為替や株の取引を行うなど愚の骨頂。そんなことをしていたら命がいくつあっても足らない。まして、世界経済はデフレモードからインフレモードへの大転換の最中にある今、それをやるのは本当に危険だ。(上念司)

確かに最近の日経新聞の記事のクオリティは下がっており、この新聞の情報を信じて投資を行ったら、損失を招く可能性は高くなります。投資は自己判断で行うべきですが、メディアの情報を鵜呑みにして失敗する人が跡を絶ちません。

メディアから流される大量のノイズから正しい情報を選ぶ能力(インテリジェンス)が投資には欠かせません。インフレへの大転換が始まる中、経済学を活用し、インテリジェンスを、高めることが投資での成功の鍵を握ります。

著者は今回のインフレは短期で終わらず、40年程度続くと予測した上で、インフレ時代の投資についてアドバイスをしています。1980年代に始まったデフレモードがようやく終息し、これからはインフレトレンドになるというのが著者の見立てです。

西側先進国とロシアや中国との権威主義国との新冷戦時代が始まる中、中国とのデカップリングが起こることで、ドイツや日本が中国の生産の肩代わりをする時代が到来します。米国と中国がそれぞれ異なるサプライチェーンを構築していけば、インフレになる可能性が高まります。結果、西側では、日本と東南アジアやドイツと東欧でサプライチェーンが構築されます。

アメリカの利上げによって、東南アジアや東欧で資金流出が起き、苦境に立たされることが予測される中、ドイツと日本が再び経済的に優位に立ち、日本の株式市場も上昇すると言うのです。

今後、需要に対する供給不足は恒常的に生じる可能性が高く、経営者は設備投資を行うことに積極的になるべきです。生産力を強化することで、インフレの過熱を防げます。オイルショックの時のような狂乱物価を防ぐには、モノの供給を増やすことが必要で、積極的な設備投資が求められます。経営者はデフレモードからインフレモードにマインドセットをシフトする必要があります。

インフレに適応するために、デフレ脳からインフレ脳に変換しよう!

インフレ時代になれば、これまでの成功パターンは失敗パターンになる可能性もある。

インフレとデフレの40年周期説、コロナ禍における大規模財政出動、ロシア・ウクライナ戦争、中国とのデカップリングに伴うサプライチェーンの再構築などの要因から、インフレが長期化するならば、デフレ時代の常識を捨てる必要があります。

インフレ時代には、資産を現金で持っていることは愚の絶頂です。例えば、毎年2%ずつ物価が上昇したなら、1,000万円の実質的な価値は、20年後には672万円になり、資産価値は3割以上も目減りします。資産インフレによる貨幣価値が下がる時には、株や債券、不動産に投資することが投資で負けないための常識になります。

今後、本格的にインフレが到来すらなら、早めにインフレ対策を行い、長期的に影響を受けない資産運用を行うことが重要です。

手堅く物価連動債を買うことで、インフレに最低限の対応はできますが、より積極的に株式投資やコモディティ投資をインデックスファンドやETFで購入するのもよいと思います。ちなみに、私はアメリカ・日本の個別株式といくつかのETFやファンドを組み合わせて運用しています。

インフレが進行すると借金の「価値」が減っていきます。借金の「額」は変わりませんが、価値が減っている分、返済が楽になります。経営者は借金を恐れずに、新規事業や設備投資を行うことを恐れないようにしましょう。

政府もインフレ時代には政策を変更すべきです。消費税の徴収基準になるのは、商品やサービスの「価格」になります。インフレによって物価が上がれば、消費税の徴収金額もアップします。

また、インフレが進むと、給与の上昇圧力も強まり、所得税や住民税も増加します。インフレ時代には税収もアップするのですから、今の財務省主導の増税路線はナンセンスです。政府は景気マインドを冷やす増税よりも減税を今こそ実施すべきです。インフレが進む中、消費税減税を検討してもよいと思います。

インフレが長期化するならば、時代を生き抜くために、まずメンタルを変える必要があります。経営者はインフレに適応するためにデフレ脳からインフレ脳に変換し、経営や投資のやり方を変えなければなりません。


この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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