大インフレ時代!日本株が強い(エミン・ユルマズ)の書評

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大インフレ時代!日本株が強い
エミン・ユルマズ
ビジネス社

本書の要約

①デカップリング ②SDGs投資などのコスト増によるグリーンフレーション ③労働人口の減少 これら3つのトレンドが今度も続くことから、構造的インフレの時代は長らく続きそうです。日本人の考えがデフレマインドからインフレマインドに変わることで、株式市場に資金が動きはじめます。今後、日本の株価は上昇トレンドに入ると著者は指摘します。

インフレが長期化するなかで、マインドセットを変えることが求められる理由

景気縮小を無理やり遅らせようとしたり、なくそうとしたりすると、世の中にゾンビ企業が大量に生まれてしまうのです。一定期間をすぎると、国内の企業の大半がゾンビになる危険性すらあります。なぜならば、企業が淘汰されることも経済の自然なサイクルの一つだからです。そこに新しい企業やサービスが生まれて、〝新陳代謝〟を促すわけです。ゾンビ化して延命している企業が多くなると、新しい企業が育つ土壌が失われてしまう。(エミン・ユルマズ)

人類の長い歴史振り返ると20%の高金利があたり前の時代が長く続きました。20世紀の後半から貸し出し金利が下がりましたが、これはほんのわずかな期間だったのです。

このところの金融革緩和により、経済の自然のサイクルが失われました。低金利政策が続いたことで、バブル崩壊後の日本経済は低成長に陥りました。ゾンビ企業が生き残り、イノベーションが起こらなくなったことが、日本経済が復活できなかった理由の一つにあげられています。

しかし、コロナ禍とウクライナ危機により、世界的に景気が悪化するなかで、供給不足に陥り、インフレが起こりました。その結果、欧米は金融緩和が続けられなくなり、タカ派が主流となり、引き締め政策にシフトしました。

トルコ出身のエコノミスト・グローバルストラテジストであるエミン・ユルマズは、今回のインフレは長期化すると述べています。

インフレ時代を生き抜くためには、まずメンタルを変えないといけません。デフレ脳からインフレ脳への〝転換〟が必要です。それは簡単なことでないかもしれない。

インフレが進むなかで、大国である中国とアメリカの経済がダウントレンドになっていくと著者は指摘します。中国の経済や社会問題は相当厳しい状況に置かれ、国民の不満が高まっています。

中国の経済成長のほとんどは不動産投資、インフラ投資によるものでしたが、投下された資本効率が低くなることで、中国の経済成長率は低下しています。その上、供給過多で不動産バブルが崩壊し、多くの不良債権が発生することで中国経済の先行きには暗雲が立ち込めています。

インフレが到来しているにも関わらず、ゾンビ企業を救うために、中国の中央銀行は利上げができずにいます。信じられないことに、中国人民銀行はこの状況下で金融緩和を行い、利下げに舵を切り、インフレに拍車をかけようとしています。

アメリカは中国への報復を行っており、半導体市場はアメリカによって崩壊させられました。アメリカを中心にした西側先進国がハイテク技術を盗まれないための施策を実施することで、中国のテック産業の成長が止まります。今後は欧米、日本を中心にしたブロック経済に移行することで、中国企業は弱体化していくはずです。

GDPの数字操作が行われてている中国経済の実態は予想以上に悪く、はあと10年、15年後には弱体化するというのが著者の見立てです。中露が中心となるブロックは人口が多いだけの、大量消費財の生産基地にしかなりえず、やがて力を失っていきます。

日本株式が今後上昇する理由

インフレが起きている真っ最中の2022年、米国企業は小売業も含めて、史上最高の利益更新を達成した。これはインフレに反応して、どんどん価格転嫁をしてきたからです。

アメリカの経営者は利益を高める経営によって株価を上げることで、自らの報酬をアップしてきました。トリクルダウン・エコノミクスにより、アメリカでは貧富の拡大が起こっています。中流階級が消滅し、富裕層と貧困層に二分されてしまったのです。この格差の拡大はアメリカだけのものでなく、日本でも年々進んでいます。

先進国では不動産価格が上昇し、資産インフレが起こってます。今のアメリカや日本の若者は、永遠に持ち家を持てないほど資産価格が上がっているのです。格差という不平等が蔓延する社会は健全なものでなく、どこかで修正に動いてもおかしくありません。

アメリカや中国がさまざまな問題を抱える中、課題先進国である日本が再び成長軌道に乗ると著者は指摘します。

今後世の中がAI化、省人化していくなかで、日本はそこをリードできる可能性が高いと、私は捉える。AI化、省人化技術を磨くと、今度は生産性が高まるし、日本の少子高齢化についてさほど心配しなくてもよくなる。

無人化・自動化・AI化の流れが急速に進む中、技術面、国民性、人件費、為替などを総合的に評価すると、現在の日本には優位性があります。

バブル末期にディスアドバンテージになっていた日本のコスト高が、いまは逆にコスト安に変わっています。トータルコストが安くなっている日本へのサプライチェーンの回帰により、生産設備が戻り、技術が戻り、それと共に人材やノウハウが集まります

日本回帰のシナリオが描かれば、資本も集まり、日本の景気の復活、賃金上昇、デフレからの脱却ができるはずです。日本の少子高齢化から来るネガティブな影響もこれで相殺できます。

日本人の考えがデフレマインドからインフレマインドに変わることで、日本に眠っている個人資産の11%しか向かっていない株式に資金が動きはじめます。これから日本の株価は上昇トレンドに入ります。

①デカップリング
②SDGs投資などのコスト増によるグリーンフレーション
③労働人口の減少
これら3つのトレンドが今度も続くことから、構造的インフレの時代は長らく続きそうです。

日本人が日本株を買い出すことで、外国人も日本株の購入に動きます。世界の投資が日本に集まることで、日本経済が復活し、株価が再び上昇するというのが著者のメッセージになります。


この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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