WHOLE がんとあらゆる生活習慣病を予防する最先端栄養学
T.コリン.キャンベル、ハワード.ジェイコブソン
ユサブル
WHOLE (T.コリン.キャンベル、ハワード.ジェイコブソン)の要約
プラントベース・ホールフード(PBWF)は、多様な野菜、果物、ナッツ、種子、豆類、全粒穀物などの植物性食品を自然な状態で摂取する食事法です。加工食品や肉を避け、カロリー比率は炭水化物80%、脂質10%、タンパク質10%を目安とします。従来の食事バランスとは異なりますが、この食事が私たちに健康をもたらします。
健康のためにプラントベース・ホールフード(PBWF)が重要な理由
ほとんどの人は、健康や長寿の鍵を自分の手で握っていることにまだ気づいていないのです。 (T.コリン.キャンベル、ハワード.ジェイコブソン)
「栄養学分野のアインシュタイン」と称されるT.コリン・キャンベルと健康教育者のハワード・ジェイコブソンが執筆したWHOLEは、栄養学の分野に革命をもたらす重要な著作です。著者らは半世紀にわたる研究成果を基に、私たちの健康を左右する最大の要因が日々の食事選択であると主張しています。
彼らの研究によれば、適切な食事は高価な薬や手術以上に効果的で、副作用もないとのことです。がん、心臓病、2型糖尿病、脳梗塞など、多くの現代病は食事で予防できるとし、既に症状がある場合でも改善が可能だと述べています。
著者らが提唱する理想的な食事法は「プラントベース・ホールフード」(PBWF)と呼ばれるものです。この食事法の基本は、植物由来の食品を、できる限り自然な状態(ホールフード)で摂取することにあります。具体的には、多様な野菜、果物、ナッツ、種子、豆類、全粒穀物を中心とした食生活を送ることを推奨しています。
一方で、PBWFは加工食品や動物性食品を避けることも重要な要素としています。また、現代の食生活で過剰摂取されがちな塩、油、砂糖の使用も控えめにすることを勧めています。栄養素のバランスとしては、カロリー比率で炭水化物80%、脂質10%、タンパク質10%を目安としています。
これは、多くの人々が慣れ親しんでいる食事バランスとは大きく異なるものですが、研究結果はその有効性を裏付けています。これまで研究されてきた食べ方で最も健康的であるだけでなく、処方薬や手術、遺伝子操作よりも効果があると言うのです。
さらに興味深いのは、サプリメントに関する最新の研究結果です。多くの人々が栄養補給のためにサプリメントを利用していますが、最新の研究ではその効果に疑問が投げかけられています。サプリメントは単なる栄養素の集合体に過ぎず、食物が本来持つ複雑な栄養構造を再現することはできないというのです。
私たちが日常的に食べているリンゴには、驚くべき秘密が隠されています。キャンベル博士の同僚であるリウ博士のチームが行ったリンゴの研究は、非常に興味深い結果を示しています。彼らは、生のリンゴ100グラムが持つ抗酸化活性を調査しました。その結果、リンゴの抗酸化力は、なんと1500ミリグラムのビタミンCに相当することが判明したのです。
これは、一般的なビタミンCサプリメントの約3倍の量に匹敵します。 さらに驚くべきことに、同じ100グラムのリンゴを科学的に分析してみると、実際に含まれているビタミンCの量はわずか5.7ミリグラムでした。つまり、まるごとのリンゴから得られるビタミンC類似の活性は、純粋なビタミンCが持つ力の263倍にも相当するということになります。
この研究結果は、私たちの栄養摂取に対する考え方に大きな影響を与える可能性があります。リンゴに含まれる個々の栄養素をすべて錠剤の形で摂取したとしても、それは生のリンゴを食べるのと同じ効果は得られないのです。なぜなら、リンゴという食物全体としての働きは、それに含まれる各栄養素の単純な合計を遥かに超えるものだからです。
この発見は、食品の複雑な相互作用の重要性を示唆しています。リンゴには、ビタミンC以外にも様々な栄養素や植物性化合物が含まれています。これらの成分が複雑に絡み合い、相乗効果を生み出すことで、個々の栄養素の単純な合計以上の効果を発揮していると考えられます。
このような研究結果は、サプリメントに頼るよりも、バランスの取れた食事を通じて栄養を摂取することの重要性を強調しています。サプリメントは特定の栄養素を濃縮して提供しますが、食品全体が持つ複雑な相互作用や相乗効果を再現することは難しいのです。
健康を維持し、病気を予防・改善するためには、サプリメントや加工食品に頼るのではなく、自然の恵みをそのまま活かした植物性の食事を中心とすることが重要だということが、科学的に証明されつつあります。
植物性由来の食事を積極的に食べよう!
PBWF食を受け入れた人は、大半の健康上の問題は以前の食事によって起こった、あるいはそれが原因で大幅に悪化したと気がつきます。そして、体が正しいものを取り入れはじめたとたん、問題は自然に速やかに解消します。
PBWFダイエットを採用した人々の多くが、驚くべき体験をします。彼らは、自身の健康問題の多くが以前の食習慣に起因していたか、それによって著しく悪化していたことに気づくのです。体が適切な栄養を摂取し始めると、これらの問題が自然かつ迅速に解消されていく様子を目の当たりにすると言うのです。
この現象は、食事が健康に及ぼす影響の大きさを如実に示しています。 著者らが強調するのは、個々の栄養素や化学物質の影響を個別に研究する従来の方法では、食品が人体に及ぼす総合的な影響を把握することは不可能だという点です。これは、長年栄養学を支配してきたリダクショニズム(細分主義)的アプローチへのホーリズムからの挑戦です。
私たちの文化には、このリダクショニズム的な栄養の考え方が深く根付いていると著者らは指摘します。食べ物に含まれた栄養素だけを問題にし、カロリー計算、たんぱく質摂取量への注目、栄養成分表などを重視します。
一般的に、栄養素をたくさん摂取すれば、それだけ体内での効果も大きくなると考えがちです。しかし、実際はそう単純ではありません。例えば、ビタミンCを100mg摂取した場合と500mg摂取した場合を比較しても、体内での作用量は5倍にはならないのです。
この現象は、ビタミンCだけでなく、ほぼすべての栄養素や関連する化学物質に当てはまります。つまり、1回の食事で摂取する栄養素の量と、実際に体内の作用部位に届く量の間には、ほとんど直接的な関係がないということです。
このことは、私たちが考えている以上に、栄養素の必要摂取量を正確に把握することが難しいことを示しています。「〇〇ミリグラムの栄養素を摂取すれば良い」という単純な指針は、実際の体内での作用を正確に反映していない可能性が高いのです。
このような不確実性は、数値やデータを重視するリダクショニスト(還元主義者)にとっては受け入れがたい事実かもしれません。しかし、この知見は、食品成分表を鵜呑みにしたり、サプリメントの効果を過大評価しないためにも、非常に重要になります。
栄養素の摂取と体内での作用の関係がこれほど複雑であることを理解すると、バランスの取れた食事の重要性がより明確になります。単一の栄養素を大量に摂取するよりも、様々な栄養素を含む多様な食品を摂取することの方が、体全体の健康にとって有益である可能性が高いのです。
この事実は、サプリメントへの過度の依存を見直し、より自然な食品を中心とした食生活の重要性を再認識させてくれます。栄養素の摂取量を厳密に管理しようとするよりも、バランスの取れた多様な食事を心がけることが、より効果的な健康維持の方法かもしれません。
例えば、サプリメントに頼るのではなく、様々な色とりどりの野菜や果物、全粒穀物、豆類などを積極的に取り入れることが推奨されます。これらの食品は、ビタミン、ミネラル、食物繊維、抗酸化物質など、多くの栄養素を自然なバランスで含んでいます。
さらに本書は、製薬会社やサプリメント企業による情報操作の問題も指摘しています。これらの企業が広告費や政治家への献金を通じて、情報の流れをコントロールし、正確な情報の伝達を妨げているという主張は、現代の栄養情報を批判的に見る必要性を訴えかけています。
高タンパク食に関しては、フリーラジカルの生成を促進し、組織損傷を引き起こす可能性があると警告しています。一方で、植物性食品の優位性についても興味深い見解を示しています。植物も光合成の過程でフリーラジカルを生成しますが、進化の過程で抗酸化物質という防御機構を獲得しました。これらの抗酸化物質は、フリーラジカルと結合して中和し、体へのダメージを予防する役割を果たします。
著者らが提唱するのは、リダクショニズムではなく、植物由来の自然食をWholeで食べると言う考え方です、これらの食品には、多種多様な栄養素が含まれており、それらが複雑に相互作用しながら体全体の健康に寄与します。
つまり、単一の栄養素を選んで摂取するのではなく、バランスの取れた植物性食品を毎食摂取することで、体のあらゆる組織に必要な栄養が行き渡るというのです。 この考え方は、私たちの食事選択に大きな影響を与える可能性があります。
本書が示す新たな栄養学の視点は、健康的な食生活をより直感的で実践しやすいものにする可能性があります。特定の栄養素の含有量を気にするのではなく、多様な植物性食品を楽しむことに焦点を当てることで、食事そのものがより豊かで満足度の高いものになるかもしれません。
さらに、この本は食品産業や健康産業の在り方にも一石を投じています。過度に加工された食品やサプリメントへの依存から脱却し、より自然な食品を中心とした食生活へと移行することの重要性を説いています。
本書が提案する食生活を取り入れることで、より健康的で持続可能な食生活を実現できそうです。それは単に個人の健康改善にとどまらず、環境への配慮や食文化の豊かさにもつながる可能性があります。
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