トランプ・インフレが世界を襲う(朝倉慶)の書評

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トランプ・インフレが世界を襲う
朝倉慶
ビジネス社

トランプ・インフレが世界を襲う(朝倉慶)の要約

2025年の政権発足で、世界は未曽有の不確実性の時代に突入します。物価上昇による生活苦から、各国で経済支援を求める声が強まっていますが、その支援策がさらなるインフレを加速させる悪循環に陥っています。米国も日本も膨大な財政赤字を抱え、そのツケは庶民がインフレという目に見えない税金で支払うこととなります。

トランプ政権発足でインフレが加速する?

一般的に国がインフレになり、経済破綻に近づくとその国の株価は暴落しているようなイメージを持つ人が多いと思います。ところが現実は逆で経済が悪化して中央銀行がそれに対処するため補助金を連発し、貧困層に現金をばらまいて、その国の通貨を大きく下げてしまいます。結果、その国の株価は自国の通貨の価値の減価を受けて大暴騰してしまうのです。(朝倉慶)

2025年のアメリカの政権交代により、世界は不確実性をより深めた時代へと突入しようとしています。これまで築き上げてきた国際秩序は大きく揺らぎ、各国は自国第一主義へと傾斜を強めています。

グローバル化の恩恵を享受してきた世界経済は、今や分断と対立の道へと進もうとしています。 特に深刻な問題として浮上しているのが、世界的なインフレーションの加速です。各国で物価上昇による生活苦が深刻化し、市民からは政府に対して様々な経済支援を求める声が日増しに強まっています。

しかし、その要求に応えようとする政府の行動が、皮肉にもさらなるインフレ圧力を生み出す結果となっています。減税や給付金といった支援策は、一時的な救済にはなるものの、長期的にはインフレを加速させる要因となるのです。

現在の状況は、かつてアルゼンチンやトルコが経験した経済危機と酷似しています。市民の切実な要求と、それに応えようとする政府の施策が、結果として通貨価値の下落とインフレの悪循環を引き起こしているのです。政治的な解決策を見出せないまま、世界経済は混迷の度を深めています。

米国と日本は、既に返済が困難とも言える規模の財政赤字を抱えています。この膨大な借金は、結果として一般市民の肩に重くのしかかることとなります。歴史が示すように、インフレという目に見えない形での課税によって、庶民が知らず知らずのうちに国の借金を返済させられることになると著者は指摘します。

日本でも40年ぶりとなる本格的なインフレの兆候が見え始めており、世界的にもインフレ圧力が強まっています。そして2025年に発足する新政権は、このインフレの流れをさらに加速させる可能性が高いのです。 注目すべきは、今回の経済危機が従来型の株式市場の暴落という形ではなく、通貨価値の急激な下落、すなわちハイパーインフレーションとして現れる可能性が高いことです。

世界各国の政府が財政規律を維持できない状況下では、通貨への信認が失われ、想定を超える物価上昇が起こり得ます。 このような状況下では、これまでの経済政策や金融政策が十分な効果を発揮できない可能性があります。世界経済は、これまで経験したことのない未知の領域に足を踏み入れようとしているのです。政治的な対立と経済的な混乱が相互に影響し合い、その解決をさらに困難なものにしています。

この未曽有の危機を乗り越えるためには、国際協調の新たな枠組みの構築と、持続可能な経済政策の実現が不可欠です。しかし、それには世界的な合意形成が必要であり、現状では極めて困難な課題となっています。私たちは今、人類史上の重要な転換点に立っているのです。

この先の道のりは決して平坦ではありませんが、世界が協力して新たな経済秩序を構築できるか否かが、私たちの未来を大きく左右することになるでしょう。歴史の教訓を活かしながら、持続可能な解決策を見出していくことが求められています。

物価上昇に対して政府に文句を言うより自らその変化を捉えて、この劇的な時代の変化に対していかに生き抜くべきか、自分の頭でしっかり考えるべき局面がきていると思います。

日本経済は長い間「安すぎた」とされる状況にありました。しかし、近年のインフレ加速によって、ついに欧米や東南アジア諸国との経済的な価格帯の差を埋める動きが本格化し始めています。株価や地価、さらにはマンション価格の上昇といった現象は、単なる一過性の出来事ではなく、本格的な物価上昇の兆候として捉えるべきでしょう。

これらの動きは、今後の日本経済の構造的な変化を示唆しており、注目すべき重要な局面を迎えています。 最近の日経平均株価が34年ぶりに史上最高値を更新したことは、この流れを象徴する出来事といえます。

単に株価が上昇したというだけでなく、それが示しているのはインフレの進行が本格化しているという現実です。これまでの日本は長らくデフレの影響を受け、物価が低く抑えられてきましたが、世界的なインフレ傾向の波に乗り、一時の欧米のように5%を超えるインフレ率が恒常化する可能性も考えられます。

日本の株価が上がる理由

今後は日本の安すぎたすべて、株価、賃金、物価が国際水準に変わっていくわけです。

日本でインフレが進む背景には、複数の要因があります。一つは、世界的な需給バランスの変化です。パンデミック後の経済回復に伴い、原材料やエネルギー価格の上昇が進み、それが国内の製品価格に波及しています。また、グローバル経済の中で、日本が抱えてきた価格競争力の高さも徐々に調整されつつあります。

以前は「安価で高品質」と評された日本製品やサービスが、現在ではその価格帯を見直す動きが見られます。これは単なるコストの上昇に留まらず、価値の再評価を伴った価格の適正化が進んでいるともいえます。

さらに、地価や不動産価格の上昇も、こうしたインフレ傾向を裏付ける重要な指標です。日本では長らく続いた不動産価格の低迷が終わりを告げ、都市部を中心に急速な上昇が見られるようになっています。特にマンション価格の高騰は顕著であり、この動きはインフレの初期段階における典型的な兆候として理解できます。

これらの動きは、国内外の投資家が日本市場の価値を再評価し始めた結果ともいえます。 こうした変化は、一見すると国内の購買力を圧迫し、消費者にとっては負担となる側面もあります。

しかし、長期的には日本経済の健全化と新たな成長機会をもたらす可能性があります。物価や賃金の上昇が進むことで、従来停滞していた消費が活発化し、企業の収益向上や新規投資の拡大が期待されます。また、インフレが経済全体に広がることで、デフレ時代に見られた閉塞感やリスク回避的な行動が緩和される可能性も高まります。

現にトルコの株価はここ3年で10倍になりました。これはトルコリラの価値が著しく下がっていく中で名目のインフレが起こって、株価が急騰となったわけです。これは将来の日本の姿です。すぐにこうなるとは言いませんが、上場企業の利益に貨幣価値が減価して収益が向上している流れがはっきり現れています。  

現在、世界各地でインフレが進む中、株式市場にもその影響が明確に現れています。トルコの例を見ると、この3年間で株価が10倍に急騰しています。これは、トルコリラの価値が著しく下落する中で名目のインフレが進行し、それに伴い企業の利益が増加し、株式市場が活性化した結果です。

この現象は、ある意味で将来の日本の姿を先取りしているといえるかもしれません。すぐに日本でも同様の急激な変化が起こるとは言えませんが、貨幣価値の減価が上場企業の収益向上に寄与する流れは、すでに顕在化し始めています。

日本の家計の金融資産は、2000年時点で約1400兆円とされていました。その後、経済成長や資産運用の拡大に伴い、この数字は着実に増え続けています。この膨大な資金は、株式市場や国債、社債などの債券市場に流れ込むことで資産運用され、最終的にそれらの時価総額を押し上げる役割を果たします。

一部の人々は、これらの資金が預金や保険商品に回ると考えるかもしれませんが、銀行や保険会社もまた、その預かった資金を国債や株式への投資、企業への融資に振り向けています。そのため、結果的には株式市場が家計金融資産の最も大きな受け皿となるのです。

こうした資金の流れは、世界的にも同様です。金融資産が増え続ける限り、株式市場は基本的に拡大を続けます。歴史的にも、長期的な視点に立てば、株式市場が上昇を続けてきたのは、まさにこのメカニズムによるものです。株式市場の成長は、単なる偶然ではなく、膨大な資金が投資され続けることで自然に起こる現象です。

この視点から考えると、日経平均株価が将来的に10万円、30万円、さらには100万円に到達する可能性は極めて自然な流れと言えます。これは決して空想的な話ではなく、金融資産の増加と株式市場の膨張がもたらす論理的な帰結です。

日本企業の収益が向上し、インフレの影響が名目価格の上昇として現れることで、株式市場の拡大がさらに加速する可能性があります。 もちろん、短期的には経済の変動や政策的な要因が影響を及ぼすことは避けられません。しかし、長期的に見れば、家計や企業の金融資産が増え続ける限り、株式市場が上昇を続けるはずです。

このような視点を持つことで、日本経済の将来をより現実的に捉え、資産運用や投資の方向性を考えることが重要になってきます。株式市場の成長は、個人にとっても日本全体にとっても、新たな可能性を切り開く重要な要素となると著者は指摘します。

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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