モヤモヤをなくせばうまくいく ~マウント社会をこう生き抜け~ (勝木健太)の書評

silhouette of man raising his hands

モヤモヤをなくせばうまくいく ~マウント社会をこう生き抜け~
勝木健太
小学館

モヤモヤをなくせばうまくいく ~マウント社会をこう生き抜け~ (勝木健太)の要約

SNSが可視化した現代の「マウント社会」では、無意識の比較がモヤモヤの原因になります。勝木健太氏は、マウントを単なる悪ではなく不安の裏返しと捉え、構造を見抜く視点を提案します。「比べない私」すらマウントになる時代、自分と他者の心の動きを理解することが、自由でしなやかな人間関係への第一歩になると教えてくれる一冊です。

モヤモヤの正体はマウントにあり!

モヤモヤの正体はマウントだと。そう気づくだけで、心は少し軽くなる。マウントを俯瞰できるようになると、相手の言葉に巻き込まれずにすむ。人間関係のモヤモヤを解消するいちばんの 方法は、戦うことでも、我慢することでもない。見抜いて、比べ合いの世界から、一歩引いてみること。それが、私たちの心を、少しずつ自由にしてくれる。(勝木健太)

多くの現代人は、日々の暮らしの中で、なんとも言い表しづらい「モヤモヤした感情」を抱えています。SNSで他人の生活や成果が日常的に見えるようになった今、無意識のうちに誰かと比較してしまい、気持ちが乱さることが多くなっています。私も時々、他者のSNSの投稿によって、モヤモヤを感じています。

勝木健太氏のモヤモヤをなくせばうまくいく ~マウント社会をこう生き抜け~は、まさにこの「モヤモヤ」の正体を明らかにし、それにどう向き合えばいいのかを解説してくれる一冊です。著者は京都大学工学部を卒業後、メガバンク勤務を経て外資系コンサル、起業とバイアウト、上場企業の執行役員を歴任した実務家であり、多様な経験から人間関係のリアルな課題に鋭く切り込んだ書籍を出版しています。(勝木健太氏の関連記事

本書のテーマは、人間関係における「マウント構造」を見抜き、それを冷静に俯瞰する力を養うことです。マウントとは、ただ誰かを見下すための行為ではなく、不安や孤独を埋め合わせようとする繊細な心の反応であると著者は述べています。

例えば、就職や婚活、育児、子どものお受験など、私たちの人生のあらゆる場面にモヤモヤは潜んでおり、それらは多くの場合、比べ合いの中で生まれてきます。 私たちは、いつしか他人の価値観を自分に押し当て、「こうあるべき」「これが正解だ」と思い込まされてきました。

その結果、自分の内なる声を見失い、違和感を抱えてもその理由がわからず、ただモヤモヤとした気持ちだけが残っていくのです。

しかし著者は、その「モヤモヤ」こそが私たちの知性のサインであると言います。社会が提示する価値観に違和感を覚えることは、「本当にそれでいいのか」と自分自身に問いかける心の声の表れなのです。その声を受け止めるには、まず人はなぜ他人を測りたがるのか、その仕組みを理解する必要があります。

本書では、マウントを「身体」「財力」「立場」「知性」「利他」「超越」の六つに分類し、それぞれがどのように現代人の心に作用するのかを丁寧に紐解いています。SNSでの投稿や日常会話に潜む何気ないマウント行為も、その裏側には「自分は大丈夫だと思いたい」という小さな祈りのような願いが隠れていると著者は指摘します。

また、マウントは年齢によっても姿を変え、若年期・中年期・老年期それぞれの局面で、異なる形で現れます。若い頃は学歴や就職先、将来性といった“これから”をめぐる競争の中で、無意識のうちにマウントが生まれます。

中年期になると、キャリアや家庭、子どもの進学先など、“積み上げてきたもの”を軸にしたマウントが表面化します。

そして老年期には、“いかに充実した人生を送ってきたか”や、“どれだけ余裕ある生活を楽しんでいるか”といった、過去の歩みや今の穏やかさを通じたマウントが顔を出すことがあります。

62歳になった今でも、私は自分がマウントを取ってしまっていることに気づくことがあります。忙しさ自慢や旅先や食事の投稿も含め、マウントになる発言には注意が必要です。

たとえばこの書評ブログも、私の読書量や読んでいる本を紹介することで、読む方によっては「知識で優位に立とうとしている」と受け取られてしまうかもしれません。 自分の経験や関心を誰かと共有したいという利他の気持ちが、知らず知らずのうちにマウント的な表現になってしまうことがあるのです。

本書では、そのような年齢によるマウントの変化を、人類史や進化論にまでさかのぼって解説しています。マウントとは「なくすべき悪」ではなく、「誰の中にもある生存本能の一部」であると気づかされます。だからこそ、自分を責めるのではなく、まずはその構造に気づき、やさしく見つめ直すことが大切なのだと感じます。

「なぜあの一言にモヤッとしたのか」がわかるようになると、他人だけでなく、自分自身の反応にも優しくなれる。そのことが、モヤモヤを手放し、より自由に生きるための第一歩になるのです。

超越のマウントとは何か?

超越のマウントとは、比べないことで比べてしまうという、人間の心が抱えるいちばんやっかいな矛盾である。どの世代にも共通するのは、比べていないように見せながら、どこかでまだ比べている自分がいることだ。人は比べることで一時的の安心を得て、やがて比べることに疲れると、「比べない」という姿勢の内側に、もう一度、別の安心を探しはじめる。超越のマウントは、その反動の形だ。

そんな中で、もっとも扱いが難しく、現代的なマウントとして浮かび上がるのが「超越のマウント」です。これは「比べないことで比べてしまう」という、極めて繊細で逆説的な心の動きから生まれます。

誰とも比べていないように見せながら、心のどこかではやはり比べている。人は比べることで一時的な安心を得て、やがて比べることに疲れると、「もう比べない」という姿勢の中に、あらたな安心を探し始めます。

この超越のマウントは、その手放しの裏側にある微細な執着を映し出しています。 近年、「肩書きも欲も手放しました」「モノを減らしたら人生が軽くなった」と語る人の例を著者は紹介します。地方移住やリトリート、断食などへの関心が高まっているのも、その流れの一つだと言います。

一見、競争から降りたように見えるこの動きも、実は「降りる」という選択を通して、別の形で優位性を示そうとする“出家マウント”に変わっていくことがあります。「どれだけ整っているか」「どれだけ自由でいられているか」という新しい軸で、また新たな比べ合いが始まってしまうのです。

心理学では、これを「逆説的自己呈示」と呼びます。気にしていないように見せるときほど、実は最も気にしている。たとえば「もう比べない」と言ったその瞬間に、それ自体がマウントになるという矛盾が生まれるのです。「比べない私」という言葉には、知らず知らずのうちに「余裕ある自分」を演出したい欲がにじみ出てしまうのです。

本書にはさまざまな学説が紹介されており、著者の主張のエビデンスになっています。社会学者ゲオルク・ジンメルは「人は同じになろうとしながら、同時に差をつけようとする存在である」と述べました。 まさに、超越のマウントとはこの二つの相反する欲求の間に生まれるバランスの上に成り立っています。

「競争から降りたつもり」の瞬間に、今度は「降りられる私」を通じて、また新しい競争を始めてしまうのです。その構造に気づけるかどうかが、心の自由の鍵になります。

また、マズローが提唱した「自己超越欲求」も、こうした現象を深く説明してくれます。人は成功や承認を超えた先に、自然との調和や心の平穏を求めるようになります。たとえば「都会を離れて、心豊かに暮らしています」と語る人の声には、その欲求が表れているようにも見えると著者は述べています。

しかし、それをSNSで発信した瞬間、「悟った自分」をアピールする行為へと変わってしまうこともあるのです。手放したいのに、手放したことを伝えたくなる。この矛盾こそが、人間らしさの証なのかもしれません。

私たちは、「もう自由でいたい」という解放の願いと、「まだ認められたい」という承認欲求の間で揺れ動き続けています。比べないことで比べてしまう。その逆説こそが、いまを生きる私たちのもっとも人間的で、もっとも正直な心のかたちなのです。

マウントへの対処法

マウントを取る側にも、取られる側にも、根っこの部分には同じ不安が流れている。大切なのは、自分を責めることではなく、その構造を見抜くことだ。

マウントという言葉に、どこかネガティブな印象を持っている方も多いかもしれません。しかし本質的には、他人を見下すための行為ではなく、社会の中で自分の存在意義を確かめようとする、人間的な防衛反応にすぎないのです。

著者は、マウントを取る側にも、取られる側にも、同じように「不安」が流れていると指摘しています。だからこそ、私たちは自分を責めるのではなく、その構造に気づき、理解することが大切なのです。 誰かの言葉にざらつく気持ちを抱いたとき、その裏側にある相手の不安に思いを馳せてみると、「ああ、これは不安が形を変えて表れているのかもしれない」と冷静に受け止めることができるようになります。

人間関係のモヤモヤを解消するもっとも効果的な方法は、戦うことでも、無理に我慢することでもありません。構造を見抜き、比べ合いの舞台から一歩引いてみることです。この「一歩の距離感」が、心の呼吸を整え、人との関わり方をしなやかにしてくれます。

マウントという現象は、誰か特定の人の問題ではなく、私たち一人ひとりが持つごく自然な感情なのだと気づかされます。そして、自分の中のマウントにもやさしく目を向けられるようになることが、人間関係におけるモヤモヤを手放していく第一歩になるのだと感じました。

私自身、誰かの発言に心がざらついたときには、マインドフルネスを活用し、深呼吸するようにしています。「この人も不安と向き合っているのだろう」と考えることで、少しずつ心が軽くなり、自由になっていくのを感じています。

誰かの発言に心をざらつかせるたび、「ああ、この人も不安と戦っているんだ」と思えたなら、その瞬間から、あなたの心は少しずつ自由になっていくはずです。

人類の歴史は、しばしば「文明の発展」や「技術の進歩」として語られてきた。けれど、少し視点を引いて眺めてみると、もうひとつの流れが見えてくる。それは、「優越の進化史」とでも呼ぶべき、もう一つの物語だ。

獲物を誇った狩人、畑の広さを競った農民、死後までも格を示そうとした王。貴族は教養で張り合い、近代国家は鉄道や工場を「進歩の証」として誇示しました。そして現代。SNSのタイムラインでは、さりげない日常の断片が、静かなマウント合戦の舞台へと変わっています。

なぜ人は、これほどまでに「優劣」に敏感なのでしょうか。その根の深い場所には、群れの中で信頼を築き、協調を保ちながら「自分の価値をどう伝えるか」を工夫してきた、進化の記憶が眠っているのです。

マウントとは、単なる見栄や虚勢ではありません。それは、他者との関係を調整し、自分の居場所を確かめるための、古代から受け継がれた社会的な合図なのです。 SNSで「盛る」ことは、もはや虚勢ではなく、時代に適応するための洗練された技術になりました。

社会学者アーヴィング・ゴッフマンが述べたように、人間社会とは巨大な舞台であり、私たちは誰もが観客の視線を意識しながら、日常という名のパフォーマンスを演じています。この理論を今に置き換えれば、SNSとは自己呈示がアルゴリズムによって増幅された、現代的な劇場だと著者は述べています。

投稿はひとつひとつの演目であり、プロフィールはその人の公演のパンフレットのようなものなのです。

かつて人類は力で競い、やがて文化で競い、そして今はSNSで競い合うようになりました。優越のゲームは形を変えながらも、絶えることなく今も続いているのです。

人類の歴史は、しばしば「文明の発展」や「技術の進歩」として語られてきた。けれど、少し視点を引いて眺めてみると、もうひとつの流れが見えてくる。それは、「優越の進化史」とでも呼ぶべき、もう一つの物語だ。

人類の歴史とは、マウントの様式を絶え間なくアップデートしてきた長い記録でもあると著者は指摘します。力、知識、所有物、文化──その時代ごとに、優越を示すための「見せ方」は巧みに形を変えてきました。そして現在、その舞台はSNSへと移り変わっています。

比較と演出が、かつてないスピードで流通するこの世界では、「いいね」の数やフォロワーの規模、投稿の映えが、優越の指標として機能しています。優越の幻想が秒単位で更新されていくSNSは、まさに“現代の焚き火の輪”と呼べるかもしれません。

タイムラインや通知音によって、私たちは今日もまた、「自分はここにいる」とそっと確かめ合っているのです。

しかし、マウントという現象を「構造」として理解できるようになると、人へのまなざしは少しやわらいできます。「誰かより優れていたい」「もっと認められたい」という感情は、実は誰の中にもあるごく自然なものです。マウントとは、「つながりたい」「安心したい」という願いが、言葉や行動に姿を変えてあらわれた、人間らしいサインにすぎません。

その仕組みに気づいたとき、不思議と心の引っかかりがほどけていきます。モヤモヤしていた感情が、すっと軽くなる瞬間が訪れるのです。 もちろん、世界そのものを急に変えることは難しいかもしれません。

「世界の解釈」は、自分の力でこの瞬間からでも変えることができます。他者から感じた怒りや嫉妬、不安を観察し、一歩引くことで、「ああ、この人も、ただ安心したかったのだ」と気づけるようになります。

そして、誰かと比べるのではなく、自分の歩幅で立つことが、マウント社会をしなやかに、生きやすくしていくための小さな知恵なのだと思います。

ちなみに、私自身のSNSの投稿やこのブログの文章にも、人によっては「マウントっぽいな」と感じる部分が多々あるかもしれません。それはきっと、私の中にある「ちょっと安心したい」という気持ちが、ふとした言葉ににじみ出てしまっているからだと思います。

もし「またマウントかよ」と感じたら、このおじさんも「安心したいだけなんだな」と、軽く受け流していただけたらと思います。

最強Appleフレームワーク
この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

Ewilジャパン取締役COO
Quants株式会社社外取締役
Mamasan&Company 株式会社社外取締役
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
徳本昌大 Amazonページ >
 

徳本昌大をフォローする
コミュニケーションウェルビーイング習慣化書評生産性向上ブログアイデアライフハック
スポンサーリンク
徳本昌大をフォローする
Loading Facebook Comments ...

コメント

タイトルとURLをコピーしました