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RANGE(レンジ) 知識の「幅」が最強の武器になる
著者:デイビッド・エプスタイン
出版社:
本書の要約
現代のようなルールが変わる意地悪な世界では、寄り道や試行錯誤を繰り返し、自分のレンジを広げることが成功の秘訣だと考えるようにしましょう。世の中をよりよくしたければ、幅広く始めて、成長する中でさまざまな経験をし、多様な視点を持つ「レンジ(幅)」のある人たちを育てるべきなのです。
超専門化よりも、レンジが重要な理由
タイガーの歩んできた道は、僕とは全く違う。(ロジャー・フェデラー)
世の中は複雑さを増し、ビジネスや研究開発、大学教育、スポーツなどで「超専門化」現象が見られます。マルコム・グラッドウェルが有名にした1万時間の法則も専門分野への特化がもてはやされるきっかけを作りました。しかし、こうした「超専門化」が成功しやすい分野は、実は非常に限定されていることがわかってきたのです。超専門家は、ゴルフやチェスなど、ルールが明確で、迅速かつ正確なフィードバックが得られる「学習環境が親切」な領域だけなのです。
米国の科学ジャーナリスのデイビッド・エプスタインは、今までの成功法則、幼い頃からの英才教育(タイガー・ウッズ型)を否定します。ロジャー・フェデラー(様々なスポーツを体験)した方、レンジの広さが成功の鍵だというのです。現代のようなルールが変わる意地悪な世界では、タイガーをロールモデルにするよりも、フェデラーの考え方を取り入れるべきです。寄り道や試行錯誤を繰り返し、自分のレンジを広げることが成功の秘訣だと考えるようにしましょう。
著者は、タイガー・ウッズ型の人間を育てることばかりを考えると、キャリアを途中で変更する天才が現れなくなると言います。効率を無視した非専門化によって、様々な課題を見つけられる人を増やすことで、世の中をよりよくできるというのです。
私たち全員が直面する課題は、専門特化がますます推奨され、要求されることさえある世界で、どうやって幅の広さや、多様な経験や、分野横断的な思考を維持していくかということだ。世界の複雑さは増しており、世界がテクノロジーで相互につながって、さらに大きくなり、個人はごく小さな部分しか見えない状況になっている。その中では、タイガー・ウッズのような早熟さや、明確な目的意識が求められる場面は確かにある。しかし、その一方でもっと多くのロジャー・フェデラーも必要になる。幅広く始めて、成長する中でさまざまな経験をし、多様な視点を持つ「レンジ(幅)」のある人たちである。(デイビッド・エプスタイン)
私たちは多様な視点を持つ、レンジの広い人が増えるように教育の仕方を変えるべきです。チェスやゴルフのルールに則ったゲームには、英才教育が有効ですが、ルールが不明確なもの、新しいチャレンジには通用しないのです。一つの分野に特化するのではなく、音楽や芸術、機械工作など幅広い知識と体験が、ルールが変更される世界では価値があるのです。
クリエイティブな領域で力を発揮するレンジと言う生き方
自分を誰かと比べるなら、自分より若い他人ではなく、自分自身と比べよう。成長のスピードは人それぞれであり、他の人を見て後れを取ったとは思わないことだ。あなたは恐らく、自分がどこに行こうとしているのか、まだわかっていないのだろう。だから、後れを取ったと思っても、何の助けにもならない。
一つの分野で成功しなくとも、様々な知識や経験が未来の自分を助けてくれます。失敗し、落ち込んだ時には、この経験が未来に役立つと考え、チャレンジをやめないようにすべきです。他者との比較をするのではなく、過去の自分と比較することで、自分の成長を確認しましょう。
心理学者で、クリエイティビティーに関して優れた研究をしているディーン・キース・サイモントンは、クリエイティブな成果を上げる人は、「狭いテーマにひたすらにフォーカスするのではなく」幅広い興味を持っていると述べています。知識や体験のレンジの広さが、専門領域の知識からは得られない洞察を生み出すのです。
技術イノベーションからコミック本まで、さまざまな領域のクリエーターを対象とした研究によると、多様な経験を持つ個人は専門家のグループよりも創造に貢献することがわかっています。もし、ある分野から全く別の分野に移っても、その経験がムダになることはありません。
あちこちに寄り道をしながら考え、実験するほうが、特に不確実性の高い現代では力の源になります。昔ながらのパターンに頼っていては、新しい課題の発見や解決はできません。問題が曖昧で明確なルールがない世界では、レンジが人生を生産的かつ、効率的にしてくれます。スタートアップやクリエイティブな領域で働く人は、著者が提唱するレンジという考え方を忘れないようにしましょう。
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