いったい世の中に、自分たちが愛している商品の価値を支持してくれる「ファン」を喜ばすことほど、楽しい仕事が他にあるだろうか。(佐藤尚之)
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楽しい仕事とはファンを喜ばし、ファンから感謝されること
佐藤尚之氏の新刊ファンベース──支持され、愛され、長く売れ続けるためにが発売されたので、早速読んでみました。キャンペーンや短期施策を行っても、売り上げにが上がらなくなっています。情報過多の時代には、キャンペーン情報が生活者に届かなったり、届いたとしてもすぐに他の情報に追いやられ、忘れ去られてしまいます。類似商品も多くなり、すぐに生活者にスイッチされたり、人口減少によって、ユーザー自体の数も減っていくなど環境も変化しています。ものやサービスを売るためには、マス広告やキャンペーンとは別のアプローチが必要になります。本書で著者は、ファンを基軸にマーケティングを行うべきだと語っています。
ファンとは 「企業やブランド、商品が大切にしている価値を支持している人」だ。短期施策や単発施策で気づいてもらった 「価値」に対する 「好意」を積み重ねていくことが必要だ。
ファンを大切にするファンベースによって、中長期的に売上やブランド価値を上げていくことが可能になります。誰もが応援している商品やブランドがあるはす。幾多の商品やサービスがある中で、思わず友人に薦めたくなるブランドや商品が誰にもあるはずです。そのファン=支持者との関係を企業はもっと大切にすべきです。以前は新規の顧客を獲得することが至上命題でしたが、売り上げの構成比(パレートの法則)を考えるとコアのファンを企業はもっともっと大切にすべきです。
本書では様々なケーススタディが紹介されていますが、商品の売り上げの大部分は数%程度のコアなファンが支えていることがわかっています。ある飲料ブランドの売り上げは、8%のコアファンが46%の売り上げを支えていました。普通のファンまで広げると売り上げ構成の90%をファンが占めていたのです。ソニーのαシリーズなどはお客様との関係を強化し、ファン化させることでLTVを5倍以上にしました。ファンを基軸にマーケティングすることでアップセルやクロスセルが奏功し、LTVをアップできたのです。「企業やブランド、商品が大切にしている 『価値 』を支持している人 」(ファン)との対話を企業を繰り返すことが、長期的な売り上げを保証してくれます。サッカーのサポーターが熱狂的にチームを応援するように、ファンから応援される企業を目指すべきなのです。
ファンベース 支持され、愛され、長く売れ続けるために (ちくま新書) [ 佐藤 尚之 ] |
企業の本業とは生活者を笑顔にさせること!
企業の本業とは「生活者の課題解決」であり「笑顔を作ること」なのだ。そして、それを日々実行している企業活動は、それ自体が「社会貢献」だ。生活者の課題を解決し笑顔を作り続けていることは、すなわち、すべての生活者が生きていく「社会の課題」を解決し、社会全体を笑顔にし続けていることに等しい。社会の課題を解決する上に、そのブランドや商品が長く安定して売れ続ければ、雇用まで継続的に創出できる。これが社会貢献でなくて何であろう。そういう意味において、商品が長く安定して売れ続けることは、企業ができる「最大の社会貢献」なのである。ファンベースは、その「長く安定して売れ続けること」を可能にする。
私たちは生活者の課題を解決して、対価を得ています。お客様を喜ばすこと、笑顔にさえることができなければ、存在理由は無くなります。自分たちが貢献すればするほど、ファンは増えていき、売り上げも上がっていくのです。良い商品やサービスを生み出し、それをしっかりと伝えていけば、ファンが応援してくれるようになります。短期や単発の施策がどんどん効きにくくなっている中、ファンをベースにマーケティングを考えなければ、成功は覚束なっています。当然変化も必要で、ファンとの対話によって、フィードバックが得られます。ファンとともに改善することで、笑顔を増やせ、支持母体からさらなる応援をもらえるようになります。
ファンを、企業やブランド、商品が大切にする価値を支える「支持母体(ベ ース」として考えるのもファンベースの大事な一面である。ブランドや商品の「価値」は時代とともに変化していく。使われ方も、愛され方も、喜ばれるポイントも、少しずつ変わっていく。その変化をファンという支持母体とともに見極め、改善をくり返す過程もまたファンベースなのである。
著者の佐藤尚之氏は、ファンベースの重要性について以下の3つの視点で語っています。
■ファンは売上の大半を支え、伸ばしてくれるから
まさに売り上げもパレートの法則で、20%の顧客が80%の買い物をして、売り上げを支えています。数字の変動は若干ありますが、コアなファンが売り上げを支えてくれていることは間違いありません。浮動層をコアファンにすることが売り上げ拡大のためには必要なのです。逆にコアなファンがいない企業は、今後は競合の草刈り場になりそうです。ファンとの強固な関係を構築するために、コミュニティマーケティングやソーシャルメディアマーケティングを活用しましょう。(本書の都市とローカルのメディア接触比較は参考になります。ぜひご一読ください)
■時代的・社会的にファンを大切にすることがより重要になってきたから
人口減少、社会の成熟、情報過多により、新製品をヒットさせることは難しくなってきました。既存商品のファンを大切にし、コアなファンの支持やフィードバックをもらいながら、新製品を開発した方がリスクはおさえられます。新たなUSPの効果にも限界が見えてきました。新製品でUSPを打ち出すと、浮気者の浮動層が飛びつき、瞬間的に新規顧客は増えます。しかし、その機会に彼らをしっかり「ファン」にしておかないと、その浮動層はやがて強力な競合に奪われてしまいます。新規顧客をUSPで惹きつけられるのは短期間で、その間にファンにしておかないとその後の売り上げは期待できなくなります。
■ファンが新たなファンを作ってくれるから
価値観が近い友人がツボにはまるコンテンツは自分もツボにはまる可能性が高いし、価値観が近い友人が愛用しているモノは自分も愛用する可能性が高いし、価値観が近い友人が熱中するコトは自分も熱中する可能性が高いからだ。世の中に様々な情報が砂嵐のように吹きすさぶ今、こんなにありがたいものがあるだろうか。
価値観が近い人の口コミは本当に強力です。自分の言葉で本気企業を応援している人の話には説得力があり、私も思わず試してしまいます。今までにリアルとソーシャルメディアの口コミによって、私も数多くの商品やサービスを購入しています。本や音楽、デジタルギアや食品など信頼できる仲間が応援している企業を自分が応援するようになったことも数知れずです。ファンがファンを拡大することで、アップルは成長してきました。これをお手本にすると良い結果を得られそうです。情報過多の世の中でコアなファンほど大切な存在はないと信じて、マーケティング戦略を再度練り直すのです。その際、NPS(ネットプロモータスコア)を取り入れ、自社の状況を把握していきましょう。NPSやコミュニティでファンを可視化して、類友をファンにしていくのです。コアなファンは周りの類友をファンにしてくれる熱狂的なサポーターなのです。
まとめ
ファンを大切にし、ファンを起点にマーケティングを考えると売り上げを拡大できます。ファンベースのマーケティング思考が今後は求められてくはずです。「共感」から「熱狂」、「愛着」から「無二」、「信頼」から「応援」に顧客の気持ちをシフトさせることができれば、自ずと売り上げは上がっていくはずです。
今日もお読みいただき、ありがとうございました!
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