坂口孝則氏の未来の稼ぎ方 ビジネス年表2019-2038の書評

現在、社会を切り取っているひとはどんな職業に当てはまるだろうか。一つだけに当てはめられはしない。科学者で、経営者で、アーティスト。写真家で、コンサルタントで、大道芸人。会社員でありながら、マンガを販売し、社会についてメディアで発言するといったことが起きる。テクノロジーを感情で語ったり、世界のリアルな経済状況を旅しながら語ったりする。そんなハイブリッドな知が求められている。それは世界がもはや、一つの知からの堅苦しい解釈を忌避しているように私には思われる。新商品創造にも、事業開発にも、異質なる観点が必要なのだ。目指すは「何屋さんかわからない」仕事といってもいいすぎではない、と私は思う。(坂口孝則)

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「何屋さんかわからない」を目指そう!

坂口孝則氏の未来の稼ぎ方 ビジネス年表2019-2038の中に書かれている「何屋さんかわからない」を目指すという考え方にとても共感を覚えました。以前の私は広告会社に勤めるビジネスパーソンでしたが、7年前に本を書いたことで自分の肩書きに著者が加わりました。会社をやめて独立した今は、書評家、社外取締役、マーケティングアドバイザー、コンサルタント、ブロガーなどの肩書きを仕事によって使い分けています。自分の仕事が何屋だか説明しずらくなっていますが、以前に比べはるかに仕事が楽しくなりました。

人生は100年、会社の寿命は10年と言われるようになりました。今後は一つの肩書きで人生を終えるのが難しくなるはずです。坂口氏が言うようにビジネスパーソンは複数のスキルを身につけ、それを組合わせるべきです。何屋さんかがわからないを目指すのも一つの手だと思います。

ただ、すくなくとも複数、異分野の知見をもっていれば、スキルの掛け算はできる。さらに、一つの会社ではなく、複数のコミュニティに属し、異なる発想を摂取しなければならない時代に私たちはいる。いま属する業界だけではなく、積極的に他業界の情報収集が必要だ。

私も複数の仕事を組合わせることで、独立後も稼げるようになりました。変化に対応し、自分の価値を高めるためには、自分への投資を欠かさないことです。自分の未来を明確にし、何で稼げるかを考えるべきです。

私はその道のプロに会う、本を読む、旅をすることを意識していますが、坂口氏は多動力を発揮するなら、勝負する領域についてデータを徹底的に調べ、仮説に基づいた未来予想をもって進むべきだと述べています。すくなくとも時代の流れに反していなければ、チャンスを得られるはずです。

知が多様に広がっていく世界違う言葉で「複雑系」といってもいいにおいては、ジャンルの横断、越境、溶解が必要だ。

自分の世界に閉じるのをやめ、様々な世界を体験し、ジャンルの横断を心がければ、チャンスは広がります。自分とは異なる業界のプロと話したり、未来を書いた専門書を読んで、閉じた世界から抜け出しましょう。

また、本書の分析を活用すれば、未来のヒントを得られます。著者の坂口氏が広範なデータに基づき、〈コンビニ〉〈エネルギー〉〈インフラ〉〈宇宙〉〈アフリカ〉などの20業界の未来を予測しています。変化の特徴、業界の現状、今後稼げる商品まで学べるようになっていますが、今日はその中からアフリカの未来を取り上げ、稼ぎ方を考えてみたいと思います。

 

アフリカの人ロ増が日本企業に恩恵をもたらす!

日本の人口が1億2000万人を切ると考えられている2024年に、アフリカでは富裕層が増えると考えられている。The Wealth Report2015によれば、2024年までアフリカ富裕層の数は二桁の成長率で増えていく。

アフリカの富裕層は確実に増加します。それも今後の5年で桁外れの金持ちがアフリカに登場します。ultra−high−net−worth−individual(UHNWI)では3000万USドル以上(33億円)を所有する金持ちを超富裕層と定義しています。このUHNWIがアフリカ各国で増加し、アフリカ全体では2024年までに59%伸びることが予想されています。UHNWIは同期間で、全世界平均が34%、アジアの伸びが48%、ヨーロッパ/米国ともに25%となっており、アフリカはアジア以上に伸びることがわかっている。通常の富裕層と定義されるミリオネア(資産100万ドルー11億1000万円以上)も、同時期にアフリカでは53%も増加するのです。

今後は世界人口の中心がアフリカになっていくことも明確です。2015年国際連合調査によると、世界人口73億5000万人で、アフリカの人口は12億を占めています。これは比率でいえば16%ですが、2024年には18%に上昇し、2050年には26%、2100年にはなんと40%になるのです。さらに、2050年には世界における人ロトップ20のうち、7力国がアフリカになると予想されています(ナイジェリア、コンゴ民主共和国、エチオピア、タンザニァ、エジプト、ケニア、ウガンダ)。とくにナイジェリアは4億1006万人を有し、世界4位になり、GDPも伸びていきます。

数年前まで何度かビジネスでドバイを訪れましたが、滞在したホテルやショッピングセンターには多くのアフリカ人富裕層がいたことを思い出しました。おしゃれな洋服や貴金属を身につけた彼らは、美女を侍らせ、美味し食事を堪能していたのです。私たち日本人よりはるかにお金を持っており、その消費パワーに圧倒されました。こういった富裕層とのビジネスを考えれば、日本人もまだまだ稼げるはずです。

このアフリカ各国で存在感を増しているのが中国で、日本は何歩も出遅れています。アフリカ経済は石油への依存度が高いために、景気変動の影響を受けやすいという弱みがありますが、中国はその苦境すら利用しています。中国はモノづくりの原材料をアフリカから輸入し、アジアの安価な労働力を活用し、さらにそれをアフリカに販売するサプライチェーンを構築しています。このシステムを使って、ナイジェリアなどのアフリカ各国で中国はマーケットを開拓しているのです。アジアだけでなく、日本人は一度ナイジェリアなどを訪れた方がよいと著者の坂口氏は指摘していますが、私も近々アフリカに行ってみようと思いました。

アフリカでの稼ぎ方について坂口氏は国境をキーワードにしています。

アフリカの特徴として働き手が国境をこえている点がある。それは祖国への送金の多さを意味する。毎年250万人が祖国をあとにしている。現在ではビットコインなどを使った送金手段もある。出稼ぎ先と祖国をつなぐサービスなどが必要とされるだろう。

簡単でわかりやすい送金サービスやブロックチェーンを使った技術をアフリカに持ち込むのはありだと私も思います。アフリカの人口増や女性の働く時間の長さを考慮すると、外食やセントラルキッチンの需要も増えそうです。人口が増えれば、建築業界も潤います。建築家や建材の生産ノウハウなどを持った日本人にはチャンスがたくさんあるはずです。日本の過去の成功体験や自分たちの強みをアフリカに持ち込むことで、成功の可能性が高まります。

まとめ

未来の稼ぎ方を考える際には、様々なデータを組み合わせ、どこにチャンスがあるのかを考える必要があります。本書には世界のデータに基づいた2038年までの未来予測が書かれているので、アイデア作りの参考になります。20世紀末からの20年、ビジネスの覇者は製造業からITへと移ったように、この20年も世界は変化を続けます。その時、稼げる自分でいるための指南書として、本書を活用しましょう。

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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