ITはときに、旧来の利益構造を大きくゆさぶる。同様のインパクトを、トランスファーワイズは金融業界にもたらしつつある。(日経ビジネス・編集部)
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トランスファーワイズは国際送金の覇者になれるか?
10年後のGAFAを探せ 世界を変える100社の中には、スタートアップから上場直前期までの興味深い会社が100者紹介されています。日経ビジネスの編集者たちが、GAFAを脅かす“次の覇者”をレポートしています。時代は日々変化し、実際、GAFAの存在を脅かす企業がいくつも現れています。今年はUberやLyftのIPOが話題になりましたが、バイオ、ロボティクス、AI、フィンテックなどの分野で若い起業家が新たなサービスを生み出しています。
今年の2月にエストニアを訪問しましましたが、人口130万にしか居ないこの国にも、いくつものユニコーンが存在しています。エストニアはスカイプの開発で有名ですが、マイクロソフトの売却益を手にした経営者がベンチャーに投資しています。彼らは#ESTONIANMAFIA(エストニアンマフィア)と呼ばれ、資金面だけではなく、メンターとして、エストニアのスタートアップを盛り上げる活動を行っています。
本書の中にそのうちの一社のトランスファーワイズ(Transferwise)が紹介されていました。エストニア生まれで「スカイプ」を開発していた夕ーベット・ヒンリクスとクリスト・力ーマンは、年間70兆円ともいわれる国際送金市場を根底から覆そうとしています。2人は2011年、国際送金に特化したトランスファーワイズをイギリスで創業し、現在勢力を世界中に伸ばしています。
スカイプが国際通話の価格破壊を起こし、通信会社のビジネスモデルは瓦解しました。彼らは次のビジネスを国際送金とし、イノベーションによって、顧客を取り込むことに成功しました。起業のきっかけは、故郷エストニアに送金する際の手数料の高さでした。複数の銀行を経由して資金が移動するため時間がかかり、不透明なコストも上乗せされていました。私もなんども経験していますが、日本からの海外送金は、1回当たり数千円かかるのが一般的です。2人のエストニア人はそこに商機を見つけ、新しい仕組みを生み出したのです。
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フィンテックが変える未来の銀行業務
国際送金市場のプラットフォーマーになる!(クリスト・力ーマン)
日本の口座から英国へ、英国の口座から日本に送金したい利用者が別々にいた場合に、同社は2つのニーズを独自のシステムで結び付け、実際のカネの流れを「日本から日本」と「英国から英国」という国内送金に切り替えます。これにより、大手銀行に比べ国際送金の手数料を最大で8分の1程度に引き下げることができたのです。
これが顧客の支持を得て、今では世界71力国で400万人超の利用者を抱え、送金額は毎月30億ポンド(約4200億円)に拡大しています。わずか、7年で世界11拠点に1400人の社員を抱える規模にまでに成長しました。トランスファーワイズの企業価値は、現在30億ポンド(約4200億円)に達していいます。
昨年から、彼らは新たなサービスをスタートしました。既存の銀行口座から送金用の資金を引き出すのではなく、トランスファーワイズ自身が口座を提供することにしました。口座開設に手間取ことが多い移民や留学生にとって、利便性はさらに高まります。
英国政府は世界の金融センターの地位を守るため、新たなてテクノロジーを歓迎します。彼らはフィンテックの流れを強力に後押ししています。なんと実績がほとんどないモバイル専業のスタートアップに銀行免許を与えてしまったのです。
モンゾ(Monzo Bank)はクラウドファンディングで資金調達後、2015年に設立されたベンチャーです。店舗を持たずスマホ上のアプリだけで営業していますが、17年に英金融監督当局から正式に免許を取得しました。既に130万人超の利用者がおり、企業価値は13億ドル(約1430億円)に達しました。毎週4万人が新たに口座を開くなど、ユーザーはこの新興銀行を評価しています。スマホのアプリのUIもよく、簡単に口座を開設できます。キャッシュレス決済が当たり前になる中、イギリスはフィンテックで銀行業界での覇権を維持しようとしています。デジタル化によってマネーの流動性は飛躍的に高まりますが、この潮流をうまく捉えた企業が10年後の勝者となるはずです。トランスファーワイズやモンゾのような新興勢力が、世界で次々に生まれて業界の常識を破壊しています。
まとめ
既存の金融業界は顧客側の視点に立てず、ユーザーにお金や時間など余計な負担をさせてきました。この数年で金融にもデジタル化の波が押し寄せ、フィンテック企業が新たなサービスで顧客の支持を得ています。デジタル化でマネーの流動性が高まる中、既存銀行の存在を脅かす新興勢力が次々に生まれていくはずです。
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