ビル・バーネットとデイヴ・エヴァンスのスタンフォード式 人生デザイン講座の書評

もしだれもが言うように、大学時代が人生で最良の4年間だとすれば、残りの人生はひたすら下り坂だ。(ビル・バーネットとデイヴ・エヴァンス)


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「行きづまり思考」を乗り越える方法

私の大学時代は確かに楽しかったですが、56歳になった今のほうが充実した人生を送れています。大学3年のころは未来の仕事について不安を覚えていましたが、社会に出るとその悩みは消えました。私は商法を専攻しましたが、法律の仕事につくつもりはありませんでした。周りが金融や法律の仕事を選ぶ中で、何をするかが決まらず、自分の将来に対して漠然と不安を感じていたのです。私はその後、法律とは全く異なる広告という天職を見つけ、40代前半まで楽しく働くことができました。

ビル・バーネットとデイヴ・エヴァンススタンフォード式 人生デザイン講座によるとアメリカの大卒生のうち、最終的に大学の専攻と関連する仕事を選ぶひとは27パーセントにとどまっているそうです。「大学の専攻によって残りの人生でなにをするかが決まる」「大学時代は人生で最良の時期(そのあとは働きづめの退屈な人生)」だという固定観念は「行きづまり思考」でしかなく、実に多くのひとが、この思考のせいで望みどおりの人生を設計できずにいます。大学の専攻とは無関係な職業に4分の3の学生がついていると捉え直すと気持ちが楽になるはずです。

2人の著者は本書を通じて、この「行きづまり思考」の解消を目指し、アメリカでは発売後すぐにベストセラーになり、多くの大学で2人のメソッドが使われるようになりました。

アメリカでは、働くひとびとの3人に2人が仕事に不満を抱えている。そして、15パーセントのひとびとは自分の仕事をきらっているのだ。

仕事で成功したとしても、それで幸せになれるわけではありません。成功=幸せだと考えることも行き詰まり思考のひとつです。本当の幸せは自分に合った人生をデザインして得られるのです。

アメリカでは、44歳から70歳までの3100万人以上が、個人的なやりがい、継続的な収入、社会的な影響力を兼ね備えた第2のキャリアを歩みたいと考えていますが、第2のキャリアを見つける人はあまり多くありません。、残りのおおぜいの人は、どこから手をつければよいのかわからず、「人生を大きく変えるにはもう手遅れなのではないか」と恐れています。

私は44歳の時に断酒し、自分のセカンドキャリアについて真剣に考えました。ソーシャルメディアで発信を重ねるうちに著者となれ、その後はいくつかの会社の社外取締役になり、経営の一端を担っています。12年前に勇気を持って、自分の人生をデザインしたおかげで、新たな生き方を手に入れることができました。人生に手遅れということはなく、いくつになっても、私たちは自分らしいストーリーをつくれるのです。

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ライフデザインのための5つのマインドセット

デザインはコンピューターやフェラーリのようなすばらしい製品をつくるのに役立つだけではないすばらしい人生をつくるのにも役立つ。デザイン思考を使えば、有意義で楽しくて充実した人生を築ける。あなたの経歴、仕事、年齢なんて関係なし。一流のテクノロジー、製品、空間を生みだしたのとまったく同じ考え方で、あなたのキャリアや人生をデザインできる。人生をうまくデザインしてやれば、豊かな人生が待っているつねになにかを生みだし、進化しつづけ、そしてサプライズが待ち受ける人生。費やした努力以上の結果が返ってくる人生だ。そうして、平凡なくり返しの毎日から抜けだせるのだ。

その時々に応じて、自分のやりたいことは変わります。自分の若いころを振り返ると、20代、30代、40代の前半は広告会社の仕事が楽しく、目の前の仕事に集中してました。アルコールに依存するという問題はありましたが、広告やマーケティングの仕事を天職だと考え、人生をエンジョイしていました。

40代になるとソーシャルメディアを活用し、情報発信するうちに自分のブランドが作れ、自信を手に入れました。それ以来、私は自分に色々な可能性があることに気づけたのです。「人生を完壁に計画することなんて不可能。人生に唯一の正解なんてない。だからこそ人生はおもしろい」と著者たちは言いますが、確かに自分の人生のデザインは一つではありません。人生はモノではなく、体験の連続であると考えることで、私は体験中心の人生をデザインできるようになりました。

人生は成長と変化だ。人生は止まっているわけではない。行き先があるわけでもない。ひとつの疑問に答えればすべて終わり、というわけにはいかない。だれも自分がなにになりたいかなんてわからない。

著者や社外取締役になること、広告会社以外の職業を体験することで、私は自分の人生をデザインすることの楽しさを発見できました。

デザイナーという仕事は、世の中にまだ存在しないものを想像し、つくることです。その結果、世界を変えられます。自分の人生のデザイナーになり、デザイナーと同じことをしてみるのです。いまだ存在しないキャリアや人生を想像し、未来の自分をつくることで、あなたの人生は変わります。

デザイナーのように考え、どんどん疑問を掲げ、いまだ存在しないものをデザインしていくことが人生なのだと理解すれば、あなたの人生はいままで想像もできなかったほどキラキラと火花を散らしはじめる。もちろん、あなたが火花を散らしたければの話だが。どういう人生をデザインするかはあなた次第なのだから。

人生をデザインする方法を学び、実践したい人には、本書のアイデアやツール(「やってみよう」)を活用すべきです。

デザイン思考には、過激なコラボレーションやプロセス思考が欠かせません。私たちは5つのシンプルなマインドセットを身につけなければなりません。
■好奇心(興味をもつ)
■行動主義(やってみる)
■視点の転換(問題を別の視点でとらえなおす・行きづまり思考からの脱却)
■デザインはプロセスだと「認識」する(人生をプロセスだと理解する・人生は波乱万丈)
■過激なコラボレーション(一人きりでライフデザインをつくる必要はない。人の助けを借りる)

このマインドセットを取り入れ、課題解決のチームをつくることで、ライフデザインの天才になれるはずです。今日のハイテクな世界の課題を解決するためには、多様なチームを組むことが必要です。実際、スタンフォードのdスクールでは、経営、法律、工学、教育、医学などの大学院生がチームを組んで、画期的なイノベーションを起こしています。孤高な天才を目指すのをやめ、まずは人生をデザインするチームをつくりましょう!

まとめ

デザイン思考を身につければ、有意義で楽しくて充実した人生を築けます。そのために好奇心、行動主義、視点の転換、認識、過激なコラボレーションの5つのマインドセットを身につけましょう。孤高な天才を目指すのでなく、優秀なチームをつくって、ライフデザインをより良くするのです。

文庫版をkindleで今回再読しました。 以前の書評はこちらからお読みいただけます。

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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