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座右の書『貞観政要』 中国古典に学ぶ「世界最高のリーダー論」
著者:出口治明
出版社:KADOKAWA
本書の要約
組織のトップは感情で決断を下してはいけません。部下も出世に影響すると考え、自分の意見を言わないと組織をダメにします。仕事は人生の3割にしかすぎないと考え、仕事中心にものごとを考える習慣をやめることで、自由に発言できるようになります。
感情で判断しない組織をつくる!
人の意見というものは、常に同じだとはかぎらない。だから、政務を正しく行うためには、意見の是非を論じるべきである。ところが、自分の過ちを聞くのを嫌がったり、『自分の考えを否定するのは、自分のことを恨んでいるからだ』と思う人がいて、また、個人的に気まずくなるのを避けようとして思っていることを口に出さなかったり、間違いを指摘すると相手の面目を潰してしまうと黙っている人がいる。こうしたことがやがて大きな弊害となって、国を滅ぼしかねない。(李世民)
出口治明氏の座右の書『貞観政要』 中国古典に学ぶ「世界最高のリーダー論」の書評を続けます。偉い人の前では、出世を意識し、反対意見を言いづらいものです。しかし、李世民はそんな部下ばかりだと国を滅ぼすと述べています。
何か物事を決めるときは、感情をベースにすると良い結果は得られません。上司の顔を伺うのをやめ、数字・ファクト・ロジックで正しいと思うことを、嫌われようが文句をいわれようが、きちんと主張すべきだと出口氏も指摘します。
僕は、職場での仕事は、プライベートな生活に比べれば比較的簡単であると考えています。なぜなら、仕事を行う上でいくつものルールが定められているからです。ルールに則って考えれば、9割の人が、正しい判断と正しい仕事ができると思 います。けれど、現実の世界では、9割の人が誤った判断をしています。その原因は、感情をベースに物事を考えているからです。(出口治明)
部下が言いたいことを言わずに我慢を続けると、
では、どうすれば、その場の状況や感情に左右されず、自分の意見を主張できるようになるでしょうか?出口氏は人生における「仕事」の位置付けを変えるべきだといいます。仕事中心にものごとを考える習慣をやめることで、自分らしく生きられるようになります。
僕は、仕事にそれほどの重きを置いていません。1年は8760時間。その内、仕事をしている時間はせいぜい2000時間です。人間は、3分の2以上の時間を、食べて、寝て、遊んで、子育てをして暮らしています。仕事をしている時間は、せいぜい3割程度です。仕事は全体の3割しかないのですから、極論すれば、どうでもいいことです。
考えてみれば、仕事の時間は1日の3割程度です。仕事のことばかり考えるから、上司の顔色が気になり、正しいことを言えなくなるのです。逆に、仕事はせいぜいが人生の3割程度のものだと位置付けることができたら、気が楽になります。
仕事が人生のすべてであると思っていると、上司に嫌われたくない、ミスはできないと臆病になってしまいます。けれど、仕事はどうでもいいという認識を持つことができれば、余計なことを考えず、正しいことが主張できるようになります。
「仕事は人生のすべてではない」と考える!
政府の仕事は山のようにある。1日に万もあるような重要な政務をひとりだけの考えで決裁することはできない。君主といえども、すべてのことに精通しているわけではないので、1日に10の案件を決裁したとすれば、そのうちの5つは判断を誤るかもしれない。間違わないで正しい答えができたとしても、それは幸運だっただけだ。判断が当たればいいが、上に立つ人の言葉 は重いので、当たらなかったら大変なことになる。だから政務は、専門的な知識を持った賢い人物に任せるようにして、君主は余計な口出しをせず、見 守るようにしたほうがよい。(李世民)
上司は自分の力には限界があると考え、部下に権限を委譲すべきです。李世民は、皇帝には絶対的な権力がある一方で、能力は決してオールマイティではないと考えたのです。太宗(李世民)は、賢くない自分がすべてに口を出し、権力を発動させれば、 部下や人民を惑わす結果になることがわかっていました。
農業のことは農民に任せ、商業のことは商人に任せ、軍のことは軍人に任せ、本当に大事なことだけを自分が決めるようにしたのです。部下やプロフェッショナルに仕事を任せ、自分は何もしないで見守ることが太宗の理想でした。
すべてを自分で判断しようとせず、賢良な部下に任せ、任せた以上、上司は途中で絶対口を挟まないことをルールにすることで、組織は成長します。仕事を任せる側は、こうした権限の感覚を身につけることがとても重要です。現代のリーダーも太宗の姿勢を見習い、口出しを減らすことで、本当に重要なことにフォーカスできるようになります。組織のトップは自由に発言でき、プロフェッショナルが力を発揮できる環境をつくるべきです。
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