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アートシンキング 未知の領域が生まれるビジネス思考術
著者:エイミー・ウィテカー
出版社:ハーパーコリンズ・ノンフィクション
本書の要約
アートシンキングは、今いるA地点から、未知のB地点を作り出すことです。失敗しても大丈夫と自分に「失敗許可証」を与え、行動し続けるアート思考を身につけることによって、私たちは問題を発見し、それを解決する術を見つけられるようになるのです。
アート的な思考・行動様式が求められる3つの理由
アートとビジネスの関連について考えるとき、必ず向き合うことになる「2つの問い」があります。その問いとはすなわち「なぜアート的な思考をビジネスに盛り込む必要があるのか?」という「WHYの問い」と、「どのようにしてアート的な思考をビジネスに盛り込むことができるのか?」という「HOWの問い」です。(山口周)
アート的な思考を取り入れることが、ビジネスパーソンに求められています。なぜ、ビジネスにアート的な思考を取り入れる必要があるのでしょうか?コンサルタントの山口周氏は、アートシンキング 未知の領域が生まれるビジネス思考術(エイミー・ウィテカー著)のまえがきで、その理由を3つあげています。
1、正解の無価値化
2、「利便性」に価値が認められなくなった
3、「失敗のコスト」が極めて低くなっている
昭和から平成の初期にかけては、「正解」を追求することが、とても重要なスキルでした。しかし、令和の時代にはその価値が大きく減損し、逆に「問題」の価値が大きく高まっています。現在、市場に残っているのは「深いけど狭い問題」か「広いけど浅い問題」のどちらかになります。「普遍的な問題」があらかた解消してしまうと「正解」を提供する能力が、今度は過剰供給されることになります。
経済学の基本原則に則れば「過剰なもの=正解」の価値はデフレし、「希少なもの=問題」の価値がインフレすることになります。今後は「誰も気づいていない新しい問題を発見・提起できること」に優秀な定義はシフトします。アート的な思考とは「未知のB地点(領域)にたどり着くこと」ですが、この思考を身につけることで、つねに「新しい問題」を探せるようになります。
皆が当たり前だと思っていることに対して「何かがおかしい、美しくない」と思える審美的感性、さらには時代感覚や世界観に基づいて「本来はこうあるべきではないのか?」をイメージし、それを他者に伝えられる力が求められているのです。この思考を取り入れれば、誰もがクリエイティビティを秘めたアーティストになれるのです。
最近では「利便性」の価値が低くなっています。現在の世の中では「役に立つこと」の価値が急速にデフレする一方で、「意味があること」の価値がインフレしています。現在の世の中をきちんと観察してみれば、多くの市場において便利なモノほど安く買い叩かれている一方で、不便なモノほど高額で売買されていることがわかります。デジタルが大衆化し、アナログや手作りが希少化することで、不便なものの評価が高まっています。
「便利さの価値」がデフレしている一方で、情緒やロマンを伴う「不便さの価値」は大きくインフレしている時代に、大きな価値を生み出していくためには「機能的価値=役に立つ」から「情緒的価値=意味がある」に向けて「価値の軸足」を切り替えていく必要があります。
世の中において「意味的な価値」を最も強く、深く追求している人々がアーティストなのです。彼らの思考様式・行動様式から学ぶことが合理的になっているのです。
現在の社会では、ビジネスの「失敗のコスト」がどんどん低下しています。事業リソースを内部化せず、適時・適宜に外部から調達することが可能になったことです。この結果、チャンスだと思えば、企業はすぐに行動できます。多くの分野でベンチャーが大企業からシェアを奪っているのも、失敗のコストが低くなったからです。
失敗のコストがどんどん低下し、むしろ「慎重になりすぎることの機会コスト」が失敗のコストを上回るような時代になりつつある今、アーティストたちがしばしば見せる「失敗に関する寛容な態度と考え方」から私たちが学べるものは少なくありません。
山口氏のまえがきの紹介が長くなりましたが、ここからニューヨーク大学芸術学部助教授のエイミー・ウィテカーが提示するアート思考について書いていこうと思います。
失敗や拒絶を恐れないマインドセットを養おう!
アートシンキングに必要なことは2つある。1つは失敗や拒絶を受け入れること。もう1つは、勝利や敗北に感じられることも、もっと長いプロセスの一部でしかないと理解することだ。(エイミー・ウィテカー )
アートシンキングを身につけたければ、何度失敗しても飛行は可能だと信じるライト兄弟のマインドセットを取り入れるべきです。失敗を恐れなければ、私たちは必ずA地点からB地点にたどり着けます。失敗許可証を入手することで、私たちは本当に重要な問いに取り組む自由を得られます。
作家、思想家、教師、企業家、科学者、映画制作者、アーティストなど、本書で著者のエイミー・ウィテカーが紹介する人たちは、市場経済に身を置きながら、クリエイティブな人生や組織全体をデザインする道を見つけています。そして、彼らは多くの失敗を経験しながら、チャンスを追い求めていました。失敗経験を通じて、自分が何をやりたいのかを問いかけ続け、成功を手に入れたのです。
リスクを負うためには、ポートフォリオ思考を取り入れましょう。生活の一部を、リスクの少ない安定した仕事に充て、残りの時間を使って、創造的プロジェクトに取り組むのです。
多くの成功者も未知のB地点に向かう草むらの中で新しいことに挑戦し、自らのスキルを高めるために自分の時間を使っていたのです。視界の悪い草むらでは不安を感じますが、大きなビジョンを持つことで、それを乗り越えられるようになります。
実際にエベレストを登っていたとしても、いつ頂上にたどり着くかは誰にもわからない。アレクサンダー・グラハム・ベルは、29歳のときに電話を発明した。ルース・ハンドラーは、42歳のときに初代バービー人形をデザインした。ルイーズ・ブルジョワは70代になって、初めて彫刻家として一流の美術館で個展を開いた。ベーブ・ルースも若き日には演劇を志した。レイモンド・チャンドラーが犯罪小説を書きはじめたのは、石油会社の重役を解雇されたあと、40代になってからのことだった。デヴィッド・サイドラーが『英国王のスピーチ』でオスカーを獲り、受賞スピーチで「父はいつも私に〝おまえは遅咲きの役者だ〟と言っていました」と語ったとき、彼は73歳だった。
草むらにいることは人を不安にさせますが、目の前の作品に集中することで、その気持ちを打破できます。結果を恐れず、プロセスを大切にすることが、不安から逃れる最良の方法です。イーゼルの前に立ち続けることが、作品を完成に導く唯一の方法なのです。アートの核心はプロセスにあると考え、自分への問いかけをやめないようにするのです。
イノベーションを起こした人も、突破口を開く直前までは行き詰まった人と同じように停滞した日々を送っていたことを忘れないようにしましょう。過去に誰も成し遂げたていないことを達成したければ、地図も手本もないと考え、MDQ(メジャー・ドラマティック・クエスチョン)を自分に質問するのです。「それは実現可能なのか?」というMDQによって、人のモチベーションは高まります。MDQは灯台のように目指す地点を照らしてくれ、私たちの背中を押してくれます。
大きな問いかけをすることは、リスクを伴う一方、予想もしない場所にたどり着く可能性もある。
私たちは解決策のないプロジェクトに取り組むリスクを負うことで、より大きな果実を得られます。大きな課題を発見し、それに向かって行動を起こすことが重要だと考えましょう。安全だけを求めていると、漸進的な改良を選びがちになり、小さな勝利しか得られません。アートシンキングを取り入れ、より大きな課題を発見し、人生を豊かなものにしましょう。
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