温暖化がもたらす5つの厄災。日本経済 予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方の書評


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日本経済 予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方

著者:鈴木貴博
出版社:PHP研究所

本書の要約

気候変動が私たちの未来に大きな影響を及ぼしそうです。2020年代から2040年代には、豪雨災害の甚大化、熱波の到来、疫病の増加、飢饒、そして海面の上昇などが起こり、人類は甚大な被害を被ります。しかし、若者や環境団体がいくら温暖化リスクを訴えても、政治家や既存勢力が動かないのが実態です。

温暖化がもたらす5つの厄災

気候変動の結果、私たちの生活を脅かす5つの災厄が科学的に予言されています。豪雨災害の甚大化、熱波の到来、疫病の増加、飢饒、そして海面の上昇です。このうち前の3つは2020年代を通じて、そして後のふたつも2040年までには私たちの未来に甚大な影響をもたらす変化になると予測されています。(鈴木貴博)

鈴木貴博氏の日本経済 予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方書評を続けます。「世の中の変化の大半は、5年前にはその兆候とも言える芽を見つけることができる」と鈴木氏は言いますが、今、日本で起きている記録的な巨大台風やゲリラ豪雨も10年以上前にスーパーコンピュターで予測されていました。

ゲリラ豪雨などの集中豪雨が日常化する中で、被害も甚大になっています。過去の常識でつくられた対策では持ち堪えられなくなり、河川が氾濫する恐れが高まっています。そればかりか、2020年代には気候異変という観点から、以下の新しい災害が起きると予測されています。
■熱波の到来
■疫病の増加
■飢饒
■海面の上昇

2番目の災厄である「熱波の到来」が、2020年代には東京や大阪など日本の大都市を襲うようになる可能性が高まっています。熱波は4年から7年に一度起きるといった特徴があり、それが対策を打つことを難しくします。暑い夏、すごしやすい夏などが何年か交互に続いた後に、突然ある年に過去日本が経験していなかった規模の熱波が到来します。

最高気温が40度を超える日が1週間以上続く熱波が来ると鈴木氏は言います。 こういった熱波が到来したときには、クーラーのない部屋で生活をしている高齢者がつぎつぎと病院に搬送されるようになります。かつて日本で経験したことがないほどの規模でそれが起こります。気温40度以上の熱波が、2020年代のうちに2回ぐらいはやってくると考え、私たちは準備を怠らないようにすべきです。

また、経験のない疫病発生のリスクも今後10年間で現実化するといわれています。2020年は新型コロナウイルスによるパンデミックが世界を震憾させていますが、今後もこの災厄との戦いは続きます。なぜなら、ウイルスというものは突然変異を起こすリスクを内包している病原体だからです。しかし、それ以上に恐ろしいのが、疫病の蔓延だと言うのです。

確かに新型ウイルスによるパンデミックは恐ろしいのですが、季節的には冬の伝染病が多く、これまでの例では夏が近づくにつれて鎮静化する傾向にあります。しかし温暖化という気候の変化は、先進国の温帯の大都市に新たな害虫の発生と伝染病の出現をもたらします。

最近、日本にアジア南方に住む害虫が上陸したというニュースが頻繁にもたらされるようになりました。セアカゴケグモやピアリといった日本には棲息していなかったタイプの虫たちが、上陸するようになってきたのです。従来はそのような悪性の外来生物は冬を越すことができずに絶滅するものでしたが近年、冬が温かくなってきたことで越冬するように事態が変わってきたのです。2020年代を通じて冬がどんどん暖かくなることで、この状況はさらに悪いほうに定着していきます。

温暖化の影響で今後、日本でも熱帯の蚊が繁殖します。実は、蚊は最もたくさんの人類の命を奪っている最悪の生物で、サメもワニよりも怖い存在です。蚊が細菌を持ち込み、それが日本の温暖化した気候の中で定着していくと、熱帯性の伝染病が蔓延していきます。

このような病原体が一番猛威を振るうのは災害時です。つまり台風、集中豪雨、伝染病は、これから先の未来の気候災害でワンセットとして私たちが迎え撃たなくてはいけない新たな敵だということです。

今後の10年で、私たちは冬にはウイルスに悩み、夏には新たな伝染病に悩まされそうです。

地球温暖化で都市の消滅が早まるか?

4番目の災厄として挙げられるのが世界的な飢饒です。2020年代から気候変動はエスカレーションし始め、2040年頃までにそれぞれの地域で栽培される農作物について、それぞれの地域の気候が不適切な状態へと変わっていきます。

北海道は本州とは違う寒さに強い品種である「ゆめぴかり」などの米が栽培されていますが、やがてはコシヒカリの有力な産地になるはずです。青森県は今はりんごの産地ですが、このまま気候変動が続くとやがてみかんの産地に変わることがシミュレーションで予想されています。確かに最近では、群馬県でマンゴーが栽培されるようになりましたが、度を越した温暖化は各地の農地を破壊する恐れがあります。

日本国内ではコメの品種変更で乗り切れる事態も、メコン川流域など熱帯の穀倉地帯では現実的ではありません。

世界の穀倉地帯で行われている大規模に地下水をくみ上げる方式の農業は、気温の上昇とそれに伴う水の不足に対してさらに脆弱です。そこに従来の作物が気候的に育たなくなるリスクが発生していく。多くの農地の地主が、これまでの農作物をあきらめ、経験のない新たな作物の栽培に移行しなければならない。厳密にいえば、そのための土づくりから違ったものになる。それが世界中で起きるとしたら、その移行が円滑に行われるとは限りません

農業では平均気温の2度上昇への対応はそもそも難しいと鈴木氏は指摘します。世界的にどこかのタイミングで70億人超の世界人口を食べさせることができなくなるほどの不作の年が、いずれおとずれると予測されているのです。21世紀の温暖化は再び人類に飢えをもたらすかもしれないのです。

5番目の災厄は、温暖化による海面の上昇です。イタリアのベニスなど世界の沿岸都市が水没すると言われていますが、2040年頃にはこれが大きな問題として浮上しそうです。地球温暖化によって、南極や北極の氷河や氷床が溶けることで、海面は確実に上昇します。

温暖化による海面上昇については、それが起きた場合の経済的被害が計算できない天文学的な規模になる分、これまでの科学者の予測は控えめなものでした。これまでの定説では2100年までに平均海面は1m上昇するだろうといわれていました。ところが最近の観測ではグリーンランドの氷が溶けるスピードが速まっていることから、2100年の海面上昇は2mに達するのではないかともいわれはじめています。しかもその計算の前提条件を読むと、2100年の地球の平均気温が2度上昇する前提だというのです。実際には地球の平均気温が2度上昇するのは2040年頃だと現在では予想されています。そして2度上昇した段階で、氷床の消滅はグリーンランドだけでなく、南極でも起こり始めると予測されています。つまり2040年代にいよいよ南極の氷床の消滅が始まるとしたら、本格的な海面上昇は2100年よりもずっと早く起きるはずです。

ニューヨークや東京や大連やシンガポールやマルセイユといった世界の先進都市のほとんどは沿岸部に発展しています。じわじわと上昇する海水面を堤防で凌ぐには限界があることは事実です。その本格的危機は、残念なことに、どうやら私たちが生きている間に目にすることになりそうなのです。

この危機的状況でも、地球温暖化を止めない人たちが数多く存在します。エネルギー産業、自動車産業、航空機産業、建築土木業など世界経済の主流派を構成する大企業の経営者は、自社に影響を及ぼすため、環境保護に反対の立場を貫きます。しかし、彼らがいくら反対の論陣を張っても、温暖化という現実は変えられません。

トランプ政権が終わり、少し世の中の空気も変わり始めました。温暖化対策にネガティブだった日本政府も先日ついに、2050年までに脱炭素社会を実現すると発表しました。2040年というタイミングで沿岸部の都市が消滅する可能性があるのならば、政治家も経営者も温暖化防止に向けての対策を早急に行うべきです。国民も利害を超えて、環境対策に真剣な政治家を選ばないと、自らの首を締めることになるのです。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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