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トリガー 人を動かす行動経済学26の切り口
著者:楠本和矢
出版社:イースト・プレス
本書の要約
最もホットなビジネス理論の1つである「行動経済学」。これからのマーケティングには、この行動経済学の知見が不可欠になります。著者はわかりづらいと言われる行動経済学の理論を目的別5カテゴリーに分類し、26の切り口に整理し、マーケティングへの導入のハードルを下げてくれました。
行動経済学をマーケティングに活用しよう!
生活者は、時として(というかかなりの頻度で)『合理的でない』選択をする。(ダン・アリエリー)
ダン・アリエリーのおかげで、「行動経済学」とう言葉が当たり前のように使われるようになりました。しかし、有効なビジネス理論の1つである「行動経済学」は範囲も広く、難解な言葉が多いため、多くのビジネスパーソンがなかなか使いこなせずにいます。これはとてももったいないことで、行動経済学をビジネスに使うことで、生活者との距離を確実に縮められます。
私たちが行動経済学を使いこなせない理由は、以下の3つに分類できるとマーケティング戦略アドバイザーの楠本和矢氏は、トリガー 人を動かす行動経済学26の切り口の中で指摘します。
(1)言葉が難しいから
(2)体系化されていないから
(3)検討フレームワークになっていないから
著者はこの3つの課題を解決し、行動経済学を「マーケティング」につなげることで、生活者との関係を変えられると言います。
実際、生活者は「論理だけでは説明がつかない非合理的な判断」で行動を決めることが大半です。この生活者の癖を知り、コミュニケーションのデザインを変えるだけで、生活者がものやサービスを買ってくれるようになります。
生活者の非合理的な判断を以下に列挙します。
・同調したい気持ち
・見栄や虚栄心
・単なるサービスの置き場所
・一瞬の印象
・世間的な評判
・難しい選択を避けた判断
・飢餓感や射幸心
・感情の起伏
・抜け切れない習慣
・誰かが決めたルールなど
これを逆手にとり、マーケティングに活用することで、生活者を味方にしたり、ファンにできるのです。
著者は本書で、行動経済学の各理論を目的別に以下の5カテゴリーに分類し、26の切り口として整理しています。
・効率良く「好感認知」をつくるための5つの切り口
・新たなニーズを創るための7つの切り口
・魅力的なものに見せるための5つの切り口
・購入ストレスを低減するための4つの切り口
・自然に継続させるための5つの切り口
今日は効率良く「好感認知」をつくるための5つの切り口を紹介したいと思います。
効率よく好感認知を高める5つの切り口
効率良く「好感認知」をつくるための切り口は以下の5つになります。
1、ユーザーを広告塔に
2、それとわかるデザイン
3、強力パートナーに乗る
4、社会的トピックに紐付け
5、ファンから情報発信
1、ユーザーを広告塔に
生活者が、その商品/サービスを利用すればするほど、その事実がユーザーの周囲に自然に知られていきます。私たちは、バンドワゴン効果に弱く、商品が人気を多く集めていることがわかると、元々関心がなかったにもかかわらず、興味を示してしまいます。最近、流行りのインフルエンサー・マーケティングが、まさにこれにあたります。
2、それとわかるデザイン
明らかにそれとわかる「シンボリックな特徴」を持たせることで、商品自体に広告塔の役割を果たさせる方法。高額なもの、個性的なもの、先進的なものを選んでいる自分をアピールしたい、という心理を加味することでSNSへの投稿も増えます。
3、強力パートナーに乗る
すでに好感認知を獲得し、かつ露出機会が多いパートナーに、商品/サービスをバンドル(付属)してもらうことで、便乗的に好感認知を獲得する方法になります。何度も繰り返し接触させられることによって、それに対する警戒心が薄れ、次第に親近感を持ち始める「ザイアンス効果」によって、新たな顧客を獲得します 。
4、社会的トピックに紐付け
生活者やメディアが興味を持ちやすい「社会的トピック」に絡めたコミュニケーションを行うことで、メディアやSNSに取り上げられる可能性を高めます。
北欧のあるフィンテック企業は、それを使って商品/サービスを購入すると、その商品/サービスの購入がもたらすCO2排出量が自動計算・管理できるクレジットカードを発表しました。日々の生活の中で、環境問題を生活者に認知させるユニークな取組みだと評価され、世界的な広告賞を取るなど、グローバルに注目を集めることに成功します。
このケーススタディでは、環境に良いうという「目立つ特徴」に引きずられ、クレカがポジティブに評価されています。ある対象を評価するときに、目立ちやすい特徴に引きずられて、他の特徴についての評価が歪められる現象である「ハロー効果」が、この会社のマーケティングでは使われています。
5、ファンから情報発信
ロイヤリティの高いファンから、客観的な視点で、商品/サービスに関連する情報や感想を発信してもらい、それを使って好感認知を獲得する方法です。ファンベース・マーケティングによって、生活者の周りにいる仲間を顧客にできます。
ある自動車メーカーでは、復刻したスポーツカースポーツカーのユーザーを対象とした「ファンコミュニティ」を開設しました。オンライン上だけでなく、様々なオフラインのイベント(例”走行会など)を継続的に実施したのです。イベントに参加している様子や、マイカーのカスタム写真など、そのクルマのある楽しい生活の一片をユーザー自らに発信してもらうことで、多くのファンを獲得しました。
商品/サービスの提供者から直接アピールされるよりも、第三者から間接的にそれを聞くとより強く信じてしまう「ウィンザー効果」によって、好感認知を高めていけます。自分が愛用したり支持したりしているものについて、それを選択したことの正当性を、他者に奨めることで再認識したい「一貫性の法則」も働きます。
本書を読むことで、これからのマーケティングには、行動経済学の知見が欠かせないことがわかります。著者が紹介する法則や事例はどれも面白く、マーケティングを考える際に役立つはずです。最終章では「26の切り口」を使って、マーケティングアイデアを創出する方法が紹介されていますが、こちらは別の機会に書きます。
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