ホラクラシーで新たな成長を目指すザッポス。ザッポス伝説2.0 ハピネス・ドリブン・カンパニーの書評


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ザッポス伝説2.0 ハピネス・ドリブン・カンパニー
著者:トニー・シェイ、 ザッポス・ファミリー、 マーク・ダゴスティーノ
出版社:ダイヤモンド社

本書の要約

ザッポスは変化に適応するために、トップダウンの経営を捨て、ホラクラシーを導入しました。社員は様々なサークルに属し、多様な仕事にチャレンジできます。彼らは顧客や社員との対話を通じて、新たな事業を起こせます。ザッポスは顧客の声と社員のやる気から、次々にイノベーションを起こしているのです。

ザッポスが採用したホラクラシーとは何か?

ザッボスにおける私の役割は、たとえるなら、温室を設計した建築家です。適切な条件を維持すれば、植物は自力で成長して花を咲かせるでしょう。すべてのものが一定の基準に沿って作られ、適切にメンテナンスされて、温室のすべての植物が成長し、その可能性を最大限に発揮できるようにする。それが私の仕事です。必要に応じて、私が温室の中に入って窓を交換したり、枠を調整したり、新しい温室に移動させることもありますが、基本的に邪魔にならないようにします。私が影になって、自然な成長を遅らせないようにします。(トニー・シェイ)

ザッポス伝説2.0 ハピネス・ドリブン・カンパニー書評を続けます。変化に適応しない企業はやがて滅びます。ザッポスのような優良企業でも変化を恐れると停滞します。ザッポスのCEOのトニー・シェイは、組織が大きくなる中で、自分や管理職の仕事を見直し、部下の邪魔をしないことで企業を成長させることを決めます。「ホラクラシー」という仕組みを導入し、企業をより強くしようとしたのです。

組織が多くなると役割が固定化し、イノベーションが生まれづらくなります。偶然から生まれるイノベーションを無くさないために、トニーはトップダウン経営をやめ、制約を減らすことを考えました。彼は企業が嵐に耐え、変化のスピードに耐えるには、レジリエンスが不可欠だと気づきます。

レジリエンスの要素は複雑です。創造性、インスピレーション、人間性、確固とした(しかし柔軟性のある)信念と強固な基盤の上に築かれた進歩が必要です。それこそまさに、私たちがザッポスの創業当初から育んできたものです。100年近く変わっていないトップダウンのピラミッド構造で仕事をしている私たちCEOや従来の管理職が、進歩や創造性やインスピレーションの邪魔にならないはずがありません。会社は大きくなればなるほど、官僚的になり、動きが鈍くなって、革新的ではなくなります。 それは誰か一人のせいではなく、会社の規模や階層構造がもたらす結果です。そうした古い経営スタイルで成長を目指すほぼすべての企業がたどり着く最後のゴールは、倒産です。

トニー・シェイは、 都市にはレジリエンスがあることを発見し、それを経営のお手本にします。都市は繁栄し、数百年、数千年と続くこともあります。帝国や国が崩壊しても、都市は絶えず変化し、生き残ります。都市の住民は自ら動くことで、住む街をよりよくしようとします。

都市の規模が2倍になるたびに、住民1人当たりのイノベーションと生産性は15%向上します。都市には指数関数的な性質があります。一方で、ほとんどの組織、特にビジネス組織では、正反対のことが起こります。組織の規模が2倍になるたびに、生産性は大幅に低下する傾向があることがわかっています。

ヒエラルキー型の企業は、1つのことが効率的になって改善されると非常にうまく機能しますが、世の中が変化したり、強い競合やイノベーションが起こると全く機能しなくなります。今の日本の大企業が苦しんでいるのもここに理由があります。レジリエンスや多様性、都市のような機敏さを維持する力がなければ、偉大な企業もあっという間に滅んでしまうのです。トニーはザッボスを都市のような自己組織化のシステムに移行させると決め、2014年1月から自己組織化への第一歩を踏み出しました。

ホラクラシーは、成長する都市と同じよう運営されます。法律や規定を作るのは統治機関ですが、「支配者」は置きません。トップダウン型の指揮系統をやめ、サークルという新たなフレームを採用したのです。 自己組織化する組織では、社員は複数の「チーム」に所属して、複数の「ロール(役割)」を担えます。

社員は自ら新しいサークルを作れ、必要に応じて組織全体から人々を引き入れることもできます。 新しい自己組織型では、誰でも新たな方針を提案できますし、ザッポスのメンバーからは、ほかの視点や反対意見などのフィードバックをもらえます。ホラクラシーを採用することで、社員は既存の仕事をしながら、新たなビジネスのアイデアにチャレンジできます。これが顧客から支持されれば、社員は新たな業務に専念でき、社内起業家になれるのです。

ホラクラシーがザッポスのイノベーションの源泉

起業家精神とは、10億ドルを生むようなアイデアを考えることだけではありません。空白を埋めることを考えるのです。顧客へのサービスについて、人にサービスを提供することについて考えるのです。顧客はオフィスの中にもいます。あなたの隣にいるかもしれません。すべての人が顧客です!(クリス・ピーク)

「起業家になるためには、とてつもないアイデアを山ほど持っていなければならない」と思いがちですが、実際には、1つのアイデアを突き詰めて行動することに尽きます。「アイデアが100万個あっても、自分の頭の中にあるだけで共有せず、何も行動を起こさなければ、何も起こらない」とクリス・ピーク(戦略イニシアティブ担当)は指摘します。顧客の声に注目し、そこからビジネスの可能性を見出すのがザッポス流です。

社員がアイデアを表明して、実現に向けて踏み出すためのサポートをすることが、ザッポスの経営者の新たな役割になったのです。社員は自分でアイデアを出し、そのための資金源を見つけ、実行すればよいのです。ザッポスのコアバリューにフィットするビジネスなら、遠慮は禁物です。

自己組織化や、私たちのMBDが目指すのは、社員の自主的な成長が常に可能な会社です。この会社のすべての個人に、大胆なアイデアを追求して、才能を発揮し、ビジネスを立ち上げ、あるいはザッボスの中で新しいチームをつくって、私たちが考えたこともないようなアイデアを追いかける、そんな自由を与えたいと思っています。

自己組織化と市場ベースのダイナミクス(MBD)が結びつくことで、企業はよりイノベーティブになるとクリスは言います。

ザッポスは顧客と予算をつくる「CGB」という考えを採用しました。 ザッポスはネットワーク経済の構築を支援し、チームは社内外の顧客のニーズに迅速に対応できるようになりました。今までのトップダウンの予算編成に比べて、フィードバック・ループが強化されて、現在のような予測不可能な市場環境でも、より柔軟に対応できるようになったと言います。さらに、新しいアイデアやイノベーションのための資金や協力が、顧客やパートナー、組織内のチームから調達できるようになります。

私たちが目指すのは、顧客とクライアントと株主に、社員に、素晴らしいサービスを提供することです。そして、社員は自分たちの運命と自分たちが目指している未来について、より強い発言権を持つことになるでしょう。私たちが行っていることはすべて、私たちのコア・バリューを拡大した延長線上にあります。(レイチェル・マーチ)

ザッポスは古くからの黄金律「自分が他人からしてもらいたいと思うように、他人にしなさい」を実践します。 「変化を受け入れ、変化を推進する」ことで、ザッポスは苦境を乗り越えます。彼らは顧客や社員、地域社会への思いやりを忘れずに、顧客とともに新たなサービスを生み出していったのです。

トニー・シェイは責任のトライアングルという考え方を提示します。企業は3つの制約を意識すべきです。この三角形の中では、やりたいことは何でもできます。ただし、これらの制約の中で社員は動かなければなりません。

■ 1つ目の制約 コア・バリューと文化に忠実であり続けること。
社内の各サークルは、何をするにせよ、コア・バリューや文化と一致していて、それらの構築を助けるようなものでなければなりません。
■2つ目の制約 顧客サービスと顧客体験。
すべてのサークルは、ザッポスのブランドにフィットするサービスや体験を重視しなければなりません。
■3つ目の制約 それぞれのサークルは基本的にミニ・スタートアップと見なされるため、 損益のバランスを取る必要がある。

トニー・シェイは、損益のバランスが取れていないサークルや、周りを邪魔しながら自分の収益を最大化しようとするサークルは、いずれ消滅すると指摘します。健全な都市なら、倒産する企業があれば、必然的に新しい企業が台頭します。同じように自己組織化のシステムでは、いつでも新しいサークルを形成できます。

ホラクラシーを導入したければ、経営者は社員や顧客の話に耳を傾けることから始めるべきです。そして、社員を信頼して、変化を起こす力を与えるのです。社員に力を与えれば、驚くような結果が生まれるとトニーは言います。

自己組織化は、人間の組織に関して言えば、進化の観点から自然界で証明された唯一の組織形態です。本質的に自己組織化されたシステムである都市と同じように、自己組織化に移行することの利点には、イノベーションと生産性とレジリエンスが高まり、時の試練に耐えられることが挙げられます。(トニー・シェイ)

自己組織化とMBDが真価を発揮すれば、成功率は10倍に跳ね上がるとクリス・ピークは考えています。 従来のようなリーダーシップだけでは、常に正しい意思決定を下すことはできません。現場の声に耳を傾け、顧客と直接話をして、顧客のニーズを聞き出すことからイノベーションは起こります。社員に多くの力を与えれば、社員はより革新的になり、素晴らしい事業を生み出します。

実は本書も自己組織化とMBDから生まれたと言います。ホラクラシーによって、社員がクリエィティブになれること、コアバリューに沿った素晴らしいサービスを提供できることを本書が証明しています。次回はMBDから生まれた感動的はサービスである「ザッポス・アダプティブ」をご紹介します!

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