苦楽力 1%の成功者が実践する「クリアリング」の技術(西田一見)の書評

silhouette photo of man on cliff during sunset

苦楽力 1%の成功者が実践する「クリアリング」の技術
西田一見
清談社Publico

苦楽力 1%の成功者が実践する「クリアリング」の技術(西田一見)の要約

本書『苦楽力』は、感情・言葉・イメージ・動作を使って脳の反応をポジティブに書き換え、行動力や自己効力感を高める実践書です。3秒ルールや夜の10分間ルーティンなど、誰でも日常に取り入れやすいメンタルトレーニングが紹介されており、感情に振り回されずに自分を整え、成果を出したい人におすすめの一冊です。科学的根拠に基づき、継続可能な習慣形成を後押ししてくれます。

成功者が活用している4つのメンタルスキルとは?

「苦楽力」が備わっている人と、そうでない人との決定的な違いは、「目標に向かってひたすら突き進んでいけること」(西田一見)

成功する人には例外なく、「感情をうまくコントロールする力」が備わっています──この事実を、私たちは改めて意識する必要があるでしょう。西田一見氏による苦楽力 1%の成功者が実践する「クリアリング」の技術は、まさにその核心に迫る一冊です。

著者は、脳の使い方を意識的にトレーニングする「SBT(スーパーブレイントレーニング)」の第一人者であり、大谷翔平選手をはじめとするトップアスリートやビジネスリーダーたちが、どのように感情を整え、集中力と行動力に変えているのかを、科学的な理論と豊富な実践例を通して解説しています。

人生やビジネスにおいて、誰しもが困難に直面する瞬間があります。むしろ、「うまくいかない」「やる気が出ない」「もう限界だ」と感じることのほうが日常的かもしれません。しかし、同じ状況でも、そこから前に進む人と、足を止めてしまう人がいる。その違いは、知識やスキルの差ではなく、「感情にどう向き合っているか」によって生まれるのです。

本書のキーワードとなるのは、「成信力」「苦楽力」「他喜力」そして「予感力」という4つのメンタルスキルです。これらは単なる精神論ではありません。扁桃核の反応、脳の記憶の上書き機能、感情と行動の連動性といった現代脳科学の知見と密接に結びついています。

まず「成信力」とは、自分の未来を肯定的に信じる力です。目標に向かうには、「ワクワク」する感情が必要不可欠であり、この状態がドーパミンの分泌を促し、脳を「行動したくてたまらない状態」に導きます。そして、その先にあるのが「成功した自分をリアルにイメージする力」です。脳は現実と想像を区別しないため、イメージの質が高まれば高まるほど、その実現可能性は飛躍的に高まるのです。

次に「苦楽力」。これは苦しみやストレスを「楽しさ」に変える力に他なりません。私たちの脳は、過去の記憶や感情に応じて、目の前の出来事に「快」か「不快」のラベルを貼っています。つまり、出来事そのものに意味はなく、それにどう反応するかが全てなのです。苦しいとき、ただ「つらい」と受け取るのか、「ここを乗り越えれば自分はもっと強くなれる」と受け取るのかで、結果はまったく違ってきます。

たとえば、苦手な上司との関係性。多くの人はそこに「嫌悪」「回避」「緊張」という感情を抱きますが、それを「このやりとりを超えたら、自分はもっと成長できる」「ここでの経験が、自分の人間関係スキルを磨いてくれる」と再解釈するだけで、脳はまったく違う信号を受け取るのです。

しかも、そこに自分の好きなもの、たとえば「焼き肉」や「音楽」などのポジティブな連想を加えると、扁桃核は「快」に反応し始めます。これは単なる気分転換ではなく、脳の配線を根本から書き換える行為なのです。

さらに、「他喜力」は、自分以外の誰かの喜びを原動力に変える力です。ビジネスであれば顧客、スポーツであればファンや仲間、家庭であれば家族。自分ではなく、他者の笑顔のために動くとき、人間は予想を超えるパフォーマンスを発揮する傾向があります。利他の心が、脳に安心感と報酬系の刺激を与えるためです。

最後に「予感力」。これは、直感や「なんとなくよさそう」という前向きなひらめきを形に変えていく力です。脳には、RAS(網様体賦活系)と呼ばれる情報フィルターがあり、ポジティブなイメージを持てば持つほど、それに関連したチャンスや情報が見えやすくなる。つまり、良い予感を意識的に抱く人ほど、チャンスの扉を開く鍵を無意識に探し出せるのです。

脳の上書きをして、プラスの結果をもたらす方法

ウソのプラスの情報(言葉)を入れることで、扁桃核が判断して「不快」から「快」に切り替わり、脳が肯定的になってきます。

あなたの「イメージ」「言葉」「動作」──この3つが連動したとき、脳はその通りの現実をつくりはじめます。つまり、一度「苦手だ」と思ってしまえば、その思い込みは強化され、やがて行動や結果にも影響を及ぼします。「嫌い」「つまらない」という感情を抱けば、その感情にふさわしい現実が目の前に現れてしまうのです。

だからこそ大切なのは、「好き」「得意」「面白い」という肯定的なイメージを、どれだけ脳に送り届けられるかということです。人間の脳は、自分が思い描いたイメージに向かって、無意識のうちに行動を最適化するようにできています。心理学でいう「自己成就予言」は、まさにこの仕組みのことを指しています。

日々、どんな言葉を使い、どんな感情を持って自分と向き合っているのか。その“内なる対話”が、未来を静かに、しかし確実に書き換えていくのです。 私たちが無意識に発している言葉──それが「セルフトーク」です。

たとえば、「めんどくさい」「やりたくない」「最悪だ」「ツイていない」といったネガティブな言葉が習慣化してしまうと、それは単なる口癖ではなく、脳への“誤った指令”となります。脳はそれを事実だと認識し、そうなるように周囲の情報を取捨選択し始めます。結果として、やる気は失われ、現実にも「うまくいかない流れ」が生まれてしまうのです。

反対に、「よし、やってみよう」「楽しみだ」「ツイてる」「最高だ」といった言葉は、扁桃核を「快」のモードに切り替え、脳内のやる気スイッチを自然に押してくれます。重要なのは、たとえその言葉が最初は“演技”だったとしても、繰り返せば脳はそれを本物とみなすということです。

脳は「真実かどうか」よりも、「何度繰り返されたか」に反応する器官です。つまり、ポジティブな嘘は、やがてポジティブな現実をつくるのです。 特に注目したいのが、「言葉は耳を通して脳に戻ってくる」という仕組みです。私たちが発した言葉は、音声として再び自分自身に返ってきて、「自己からの情報」として再入力されます。

このサイクルが繰り返されると、脳はその内容を“現実”として再構成し、思考・感情・行動の質にまで影響を及ぼしていくのです。

逆境を乗り越えて成功する人は、「オレはツイてるぞ」と思っているので、不満など微塵もなく、脳が肯定的になっています。

実際、私自身も「ツイてる」「ラッキー」を口癖にすることで、運の流れが明らかに変わったと感じています。最初は形だけの習慣でしたが、続けるうちに、些細な出来事にも「ありがたい」と感じるようになり、心に余裕が生まれました。そしてその余裕が、人間関係やチャンスの引き寄せにまでつながっていったのです。

言葉が変われば、脳が変わり、脳が変われば行動が変わる──これは理屈ではなく、体験として確信をもっています。 さらに効果を高めたい人には、「動作」を加えることをおすすめします。

たとえば、どんなピンチにあっても「ナンバーワンポーズ」をとる。それだけで、「自分はできる」「大丈夫だ」という意識が脳に条件づけされていくと著者は言います。

これは脳科学的にも「身体の動きが感情を先導する」という“身体フィードバック理論”に裏打ちされています。ポーズは嘘をつかないのです。 1日5回、自分の意思でナンバーワンポーズをとりながら、「ツイてる」「今日はいい日だ」と声に出す。

さらに、そこに「成功した」「うまくいった」未来のイメージを重ねる──つまり、「ポーズ+言葉+イメージ」。この3点セットがそろったとき、脳はそれを“実現すべき目標”として認識し始めます。たとえ目の前に困難があっても、そこに反応せず、自分の“設定した未来”に向かって自然と行動が整っていくのです。

もちろん、人生はそんなに単純ではない、という声もあるでしょう。けれど、あなたが今どんな環境にいたとしても、「言葉」と「イメージ」と「動作」は自分で選ぶことができます。つまり、人生の土台をつくる力は、常にあなたの手の中にあるのです。 言葉を変えれば、脳が変わる。

脳が変われば、感情が変わり、行動が変わる。そして行動が変われば、現実が変わります。これは精神論ではなく、脳と身体と意識を整える人生をデザインするメソッドです。

3秒ルールで結果を出す方法

「イメージ1秒+言葉1秒+動作1秒=3秒」となるわけですが、これを実践することで、どんなにイヤな気持ちが起こっても、必ず消せるようになるというわけです。

どんなにネガティブな感情に襲われても、それを3秒で切り替える方法があります。それが、著者が提唱する「3秒ルール」です。 やり方はとてもシンプルです。

まず1秒目に、「だけど、ここが踏ん張りどころだ」「だけど、これを乗り越えたら、ワンランク上の自分になれる」と、いったんネガティブを受け止めながらも、それを前向きな意味に転換する“だけど接続”のイメージを浮かべます。ここでポイントとなるのは、「逃げたい」「嫌だ」という気持ちにフタをするのではなく、受け止めたうえで反転させるということです。

続く2秒目では、「できる!」「好き!」「うまくいく!」といった断定的なポジティブワードを声に出します。この言葉の力が、脳内の扁桃核を「快」に切り替え、行動を促す準備を整えてくれるのです。どんな言葉でも構いません。あなた自身が“気持ちが上がる”と感じる言葉であれば、それが最適なセルフスイッチになります。

そして最後の1秒。ここでは、「お約束のポーズ」を決めて実行します。たとえば、ニコッと笑う。あるいは、ガッツポーズ、胸に手を当てる、拳を握る。動作を伴わせることで、感情と身体がリンクし、思考が一段階強く定着します。

この「イメージ1秒+言葉1秒+動作1秒」の3秒ルールを繰り返すことで、どれだけ強いイライラや不安、落ち込みであっても、脳のスイッチをリセットできるようになると著者は指摘します。

人は誰しも、感情の波に揺さぶられる瞬間があります。テンションが下がるのはごく自然なことで、それ自体を責める必要はありません。ただ、そのままにしておくか、それとも切り替える技術を持っているか。それこそが、ビジネスでも人生でも結果を分ける決定的な差となるのです。

この3秒ルールをマスターすれば、状況がどうであっても、自ら率先して仕事や学びに向き合うことができるようになります。そして、「今日よりも明日、もっと成長していたい」という前向きな感情が、あなたの中に自然と育っていきます。成功しているビジネスパーソンやアスリートたちは、このようにして“最強思考”を日々構築しているのです。

さらに、この思考を支えるベースにあるのが「感謝」です。誰に対しても「ありがとう」と思い、「ありがとう」と口に出す。これだけで、ネガティブな感情の沼から一歩引き離されます。感謝には、心を鎮め、認知を整える力があるのです。怒りや焦りが湧いたときほど、意識して「ありがとう」を使ってみてください。外的状況が変わらなくても、あなたの内側は確実に変わっていきます。

また、著者は「夜の10分間」の活用が、感情と行動の質を左右すると述べています。就寝前の静かな時間帯は、脳の吸収力が最も高まる、いわば“ゴールデンタイム”であり、この時間にどのような情報を脳に入力するかによって、翌日の思考や行動が大きく影響を受けるというのです。

著者が推奨するのは、以下の4つのステップからなるシンプルなルーティンです。
①まず、自分が達成したい目標を想起し、それに対して乗り越えるべき課題や現在の障壁を明確にイメージします。

②次に、「私は必ずできる」と自己暗示をかけます。この際、声に出して言葉にすることで、自己説得の効果はさらに高まります。

③続けて、目標を達成した自分がどのように喜び、何を感じているかを、できる限り鮮明に思い描きます。

④最後に、達成の瞬間そのものをビジュアライズし、感情と成功のイメージをリンクさせた状態で眠りにつくのです。

この習慣は、単なるイメージトレーニングではなく、睡眠中に働く脳の“感情再生”の特性を利用した、極めて実践的なメンタル技術です。人の脳は、睡眠中も感情的に印象深い記憶を繰り返し再生する傾向があります。したがって、寝る直前にネガティブな出来事や感情を反芻することは、それらを脳に定着させてしまい、翌日の心理状態や判断力に悪影響を及ぼすリスクを高めます。

逆に、ポジティブな目標と、それを実現したときの喜びを結びつけて脳に入力すれば、潜在意識レベルで「未来志向のプログラム」が作動し、無意識のうちに前向きな行動が引き出されやすくなります。このような就寝前の「感情設計」は、いわば自分の意志で思考の回路を整えるセルフマネジメントの一形態であり、成果志向の人々に共通する夜の思考習慣でもあります。

言葉によって思考が変わり、イメージによって行動が変わり、習慣によって現実が変わっていく。その連鎖の出発点として、就寝前の10分間は極めて重要です。毎晩の静かな時間をどう使うか。それは一人ひとりの選択に委ねられていますが、その積み重ねが、未来をかたちづくっていくのです。感情と行動を整える習慣を持つこと──それが、結果を変えるもっとも確かな道筋のひとつであると言えます。

本書は、脳の仕組みに基づいた感情マネジメントの技術を、誰でも実践できる形で紹介した一冊です。言葉・イメージ・動作の組み合わせによって、ネガティブな感情を即座に切り替え、行動力と自己効力感を高める方法が体系的にまとめられています。とくに「3秒ルール」や「夜の10分間ルーティン」は、日常にすぐ取り入れられる実用性の高いメソッドであり、自分を変えたいと願う人、前向きな習慣を身につけたい人にとって、強力な味方となる内容です。

最強Appleフレームワーク


この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

Ewilジャパン取締役COO
Quants株式会社社外取締役
株式会社INFRECT取締役
Mamasan&Company 株式会社社外取締役
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
徳本昌大 Amazonページ >
 

徳本昌大をフォローする
投資哲学リーダーウェルビーイング戦略天才習慣化書評生産性向上
スポンサーリンク
徳本昌大をフォローする
Loading Facebook Comments ...

コメント

タイトルとURLをコピーしました