顧客価値を劇的に高める生成auマーケティング(大広WEDOテクノロジーチーム)の書評

Phone displays chatgpt, next to laptop.

顧客価値を劇的に高める生成AIマーケティング
大広WEDOテクノロジーチーム
日本能率協会マネジメントセンター

30秒でわかる本書のポイント

【結論】 生成AIを単なる「効率化の道具」ではなく、顧客の深い本音を引き出し、価値を共創するための「対話型インフラ」として再定義すべきである。
【原因】 従来のマーケティングでは、数字(データ)は追えても、その背景にある顧客の感情や文脈(ナラティブ)を直接掴むことが難しく、判断にズレが生じていた。
【対策】 生成AIをコンタクトセンターや接客の核に据え、対話をベクトルデータ化して蓄積・分析することで、潜在ニーズを施策に即時反映させるサイクルを構築する。

本書の30秒要約

本書は独自の「AIペルソナ」と「ダイナミックプロンプト」によって、これまで“取りにいけなかった”顧客の本音を、対話のかたちで引き出します。しかも、その対話ログを分析可能なデータとして資産化し、施策に落とし、クリエイティブの精度へ還元するところまでを一気通貫で示します。顧客理解を「思いつき」ではなく「再現性」に変える、ベクトル・マーケティングのメソッドが凝縮された、マーケター必読の一冊です。

おすすめの人

・顧客の「数字」は見えているが、「本音」が見えず施策が空振りしているマーケター
・生成AIを導入したが、定型業務の自動化(コスト削減)止まりで、売上向上に繋げられていない経営層
・カスタマーサポートのログを宝の持ち腐れにせず、商品開発や販促の資産に変えたい責任者
・AI時代の新しいクリエイティブ制作や、パーソナライズされた顧客体験を設計したいディレクター 

読者が得られるメリット

・顧客理解の解像度が極限まで高まる AIペルソナを活用したシミュレーションにより、デプスインタビュー並みの深いインサイトを低コストで得られるようになります。
・「売れる」仮説の検証スピードが加速する
AIを「思考の相棒」にすることで、アイデアの分母を爆発的に増やし、高速で仮説検証のサイクルを回せるようになります。
・現場の「気づき」を組織の「資産」へ変換できる
散乱しがちな顧客との対話ログを「ベクトルデータ」として構造化し、いつでも分析・再利用可能な状態にする仕組みが学べます。

顧客の声を生成AIで正しく収集する

生成AIを活用すれば、お客様と「直接」つながることができる。大広WEDOテクノロジーチーム

企業や広告会社のマーケターは顧客の本当の声を聞くことが難しいというペインを長年抱えてきました。数字は追えても、顧客の意思決定の背景にある感情や文脈は見えづらく、間違った判断を下していました。

しかし、生成AIが普及し、対話を設計できるようになったことで、顧客の声を以前より具体的に掴める場面が増えてきました。その変化を、単なる業務効率化で終わらせず「顧客価値の創造」へと押し上げるための実装知を、マーケターの言葉でまとめたのが顧客価値を劇的に高める生成AIマーケティングです。

本書は、広告業界大手の大広グループ(大広、大広WEDO)が、現場で培った知見を結集して執筆した一冊です。急速に普及する生成AIを、便利な作業短縮の道具としてではなく、マーケティングの本丸である「顧客価値」にどう接続するかを体系的に解説しています。

AI関連書籍の多くが技術解説やツール紹介に寄りがちななかで、本書は徹底してマーケター視点を貫いている点が際立ちます。人間とAIが常に協働することで、これまで届きにくかった深層心理の理解や、個々の顧客に最適化された体験価値の提供が可能になるという未来図を、具体的な運用手順とともに示していきます。

本書の中心的テーマは、「効率化から価値創造へ」というシフトです。生成AIの導入を、作業時間の短縮や定型業務の自動化にとどめず、データ分析の深化やクリエイティブの質の向上を経て、顧客自身も気づいていない潜在ニーズの発見や新しい顧客体験の設計へとつなげていく流れとして捉え直します。

ここで重要なのは、AIが何かを「代わりにやってくれる」から価値が生まれるのではなく、マーケターが問いを設計し直すことで、価値創造に至る道筋が開けるという発想です。生成AIは、正解を一発で当てるツールではなく、思考の選択肢を増やし、仮説検証のスピードと精度を上げるパートナーとして扱われています。

AIだからこそ、「隠れた本音」が届きやすい。

生成AIが対話の入口を広げると、顧客とのやり取りの回数が増えます。結果として、提案に使える論点と選択肢の母数が増えていきます。本書は、顧客の建前的な要望よりも、矛盾や迷いを含む顧客のリアルな声こそが価値創造の起点になる、という前提に立っています。

中でも重要なのは、顧客理解をAIで拡張する提案です。生成AIにブランドの価値観や語り口、判断基準を与えて「AIペルソナ」として運用し、対話を重ねます。従来はデプスインタビューやフォーカスグループでしか拾いにくかった感情の機微や言語化されない動機をシミュレーションし、仮説の精度を高めていきます。

本書では、生成AIを用いて顧客の声を収集し、施策へ還流させるまでの流れを、次のステップとして整理しています。

【ステップ0】なぜ生成AIを活用して顧客データを蓄積する必要があるのかを整理する
この段階では、コンタクトセンターの運営を「人中心」から「AI中心」へ移行させるメリットとして、次の4点が挙げられます。
メリット① 安定感のある顧客対応ができる
メリット② 低コストで導入できる
メリット③ 「営業マン代行」として自社の事業領域を網羅し、顧客へ広く深い案内ができる
メリット④ 顧客が本当に求めていることを引き出せる

【ステップ1】AIを活用したコンタクトセンターを構築する

【ステップ2】LLMを活用した対話で顧客ロイヤリティを高める

【ステップ3】対話から得た顧客データをマーケティングに活用できる形で蓄積する

【ステップ4】ベクトルデータ化された「顧客の声」を分析する

【ステップ5】分析結果をクリエイティブやプロモーション施策に反映させる

この流れが示唆的なのは、AIを「受け身の自動化ツール」ではなく、「対話を起点に価値を生む仕組み」として設計している点です。対話がデータになり、データが分析になり、分析が施策へ落ち、施策が再び対話へ戻っていく。この循環が回り始めると、マーケティングはキャンペーンの打ち上げ花火ではなく、学習するシステムに近づきます。

加えて、社内導入で壁になりやすい著作権リスクやハルシネーションへの懸念にも触れ、法的・倫理的観点からガイドラインをどう考えるかが示されています。生成AIの導入は「やるか、やらないか」ではなく、「どう設計して、どう統制するか」の問題になりつつありますが、その現実に即した視点が備わっています。

ベクトル・マーケティングを実践する

対話データのベクトル化により、たくさんの優良顧客の傾向がつかめると、マーケティングの効率化が図れる。

本書が提示する最大のメリットは、顧客の声を「聞ける」ようになることよりも、それを意思決定に使える形で蓄積できる点にあります。顧客の声は、集めた瞬間から価値になるわけではありません。多くの場合、声は散らばり、担当者の記憶や経験の中に沈み、会議に上がる頃には無難に整形されてしまいます。

つまり、顧客理解が暗黙知のまま個人に属し、組織として再利用できない。これが長年のボトルネックでした。ところが生成AIをコンタクトセンターの中心に据えると、対話がログとして残り、残るだけでなく、後工程で分析・分類・検索できる形へ整えやすくなります。現場で起きていた気づきが、個人の暗黙知から組織の形式知へと変換され、資産として積み上げていけるのです。

大広グループでは、自社のブランド人格、企業知識や商品知識、顧客情報を回答に反映させる仕組みを「ダイナミックプロンプト」と呼びます。プロンプトがAIへの指示文だとすれば、ダイナミックプロンプトは、状況に合わせて指示文そのものを自動で組み替える発想です。顧客の質問が届くたびに、その意図を解釈し、必要な知識を社内の情報から引っ張り出し、さらに過去の対話履歴や顧客情報も踏まえて最適な回答を生成していきます。

AIの世界でRAGと呼ばれる考え方を活用した技術のひとつで、たとえるなら「高速でカンニングペーパーを参照しながら答える」ようなものです。

結果として、AIはブランドを理解したうえで、目の前の顧客の文脈にも即した回答が出せるようになり、対話が自然に積み上がっていきます。

さらに本書では、同社独自の生成AIエンジン「Brand Dialogue AI(BDAI)」にも触れられています。BDAIの強みは、製品情報や企業情報といった「知識」を入れるだけでなく、その企業の主義や価値観、どうふるまうべきかといった「人格」までインプットできる点にあります。

著者らはこれを「ブランド人格」と呼び、企業ならではの個性そのものだと位置づけています。顧客対応に生成AIを用いる際、知識の充実は前提ですが、それだけでは回答が均質化しやすく、どこか“どの会社でも言えそうな話”になりがちです。

BDAIは知識にブランド人格を付与することで、その企業らしいブランドイメージに沿った対話を成立させ、機械的な受け答えから一段抜け出したコミュニケーションを可能にします。結果として、ブランドと顧客の双方を理解した回答が生まれ、対話として積み重なっていくのです。

ここまで読んで改めて思うのは、新しいテクノロジーは「理解する」だけでは足りず、使い倒して初めて味が出るということです。AIをチームの仲間として迎え入れ、人間が介在しながら改善を回すHuman-in-the-loopを愚直に回し続けることで、AIの精度は現場の要請に沿って上がっていきます。

すると、マーケティング戦略はよりスピーディに推進できるようになり、試行回数が増え、学習が深まり、打ち手の質が上がります。結果として顧客から支持され、売り上げや利益が伸びていく。これが、本書が描く「効率化から価値創造へ」の、最も現実的な着地点です。

本書は独自の「AIペルソナ」と「ダイナミックプロンプト」によって、これまで“取りにいけなかった”顧客の本音を、対話という形式で引き出します。しかも終わるのは収集ではなく、その対話ログを分析可能なデータとして資産化し、施策に落とし、クリエイティブの精度へ還元するところまでを一気通貫で示します。

本書のまとめ

・本書のポイント:効率化を超えた「顧客価値の創造」
生成AIの導入を単なる「作業時間の短縮」や「定型業務の自動化」で終わらせず、マーケティングの本丸である顧客価値の創出へと押し上げるための実装知を体系化した一冊です。

大広WEDOは、AIを人間の代行ではなく、人間の思考を拡張し選択肢を広げる「相棒(思考の増幅装置)」として定義しています。これにより、従来は捉えきれなかった顧客の感情の機微や、言語化されない潜在ニーズを具体的なデータとして掴むことが可能になります。

・独自メソッド:対話データを資産化する「ベクトル・マーケティング」
本書の最大の特徴は、顧客との対話ログを「ベクトルデータ」として構造化し、意味の近さで検索・分析可能にする手法を提示している点です。これにより、顧客の迷いや本音といった未整理な発話を、意思決定に使え「活用可能な資産」へと変換します。

また、ブランドの人格や商品知識を状況に応じて組み替える「ダイナミックプロンプト」を用いることで、一人ひとりの文脈に即した深い案内を実現し、AIを「24時間稼働する優秀な営業代行」として機能させます。

・実装のロードマップ:対話を起点とした学習サイクル
具体的な運用においては、AIを中心としたコンタクトセンターを構築し、そこから得られる対話データをマーケティング施策へ還流させるプロセスを重視しています。

顧客の声が溜まり、意味付けされ、再びクリエイティブやプロモーションの改善に反映される。このHuman-in-the-loop(人間が介在する改善サイクル)を回し続けることで、マーケティングは単発のキャンペーンではなく、常に学習し続けるシステムへと進化し、結果として持続的な売上成長と顧客支持をもたらします。

顧客理解を「思いつき」ではなく「再現性」に変える、ベクトル・マーケティングのメソッドが凝縮された、マーケター必読の一冊です。

本記事は書評ブロガー・ビジネスプロデューサーの徳本昌大が執筆しました。

最強Appleフレームワーク


Loading Facebook Comments ...

コメント

タイトルとURLをコピーしました