書籍:「説明」がうまい人がいつも頭においていること
著者:犬塚壮志
出版社:サンマーク出版
ISBN-10 : 4763142763
30秒でわかる本書のポイント
【結論】 :説明がうまい人は、話し方のテクニックを磨いているのではありません。「相手の頭の中を整理する思考プロセス」を身につけているのです。
【原因】 :説明の失敗は、情報量の問題ではありません。「相手の既知と未知をつなぐ設計」が欠けているだけです。
【対策】 :「何を言うか」より「相手がどう受け取る準備ができているか」を先に考える。この思考の順番を変えるだけで、あなたの説明は最短ルートで相手の心に届くようになります。
本書の要約
説明とは単に「情報を渡すこと」ではありません。相手の頭の中を整理し、自分の考えを正確に届けるための技術です。駿台予備校で圧倒的な支持を集めた犬塚壮志氏は、説明がうまい人ほど自分の知識をひけらかさないと言います。彼らが常に意識しているのはたった一つ、「どうすれば、自分の頭の中にある考えを、相手の頭の中に正確に届けられるか」ということだけです。論理だけでは伝わらない場面で、相手の心を動かす説明の技術が本書には凝縮されています。
こんな人におすすめ
・一生懸命話しているのに「で、結局何が言いたいの?」と言われてしまう人
・部下や後輩への指導で、言葉がうまく伝わらないと感じているリーダー
・プレゼンや商談で、相手の「Yes」を確実に引き出したい人
・「論理的思考」を持っているのに、なぜか相手に伝わらないと悩むビジネスパーソン
本書から得られるメリット
・「説明とは何か」という根本的な定義が変わり、相手視点のコミュニケーションができるようになります
・スキーマ理論を活用し、相手とのコミュニケーションが図れるようになります。
・相手の感情を動かすスキルによって、仕事のパフォーマンスが高まります。
・会議・プレゼン・メール・日常会話のすべてで、即日から使える実践的な思考フレームが得られます

スキーマを超えて、相手が「受け取れる状態」をつくる
上手に説明をするためには、「①自分よりも、『相手』を意識すること」。そして、「②相手はどうしたら『わかる』のか」「③相手がわかる『順番』とは何か」を考えることに尽きます。(犬塚壮志)
説明が苦手な人の多くは、説明を「一方的な情報提供」だと誤解しています。しかし、どれほど価値のある情報でも、受け手の準備が整っていなければ、右から左へと抜けていくだけです。説明とは情報量の勝負ではなく、相手の理解が成立する条件を整える行為なのです。
駿台予備校で圧倒的な支持を集めた犬塚壮志氏は、説明がうまい人ほど自分の知識をひけらかさないと言います。彼らが常に意識しているのはたった一つ、「どうすれば、自分の頭の中にある考えを、相手の頭の中に正確に届けられるか」ということだけです。論理だけでは伝わらない場面で、相手の心を動かす説明の技術が本書「説明」がうまい人がいつも頭においていることには凝縮されています。
人間の脳には「スキーマ」と呼ばれる既存の知識の枠組みがあります。この枠組み(スキーマ)に入っていない概念や言葉は、どれほど丁寧に説明しても理解してもらえないのです。説明がうまい人は、このスキーマを超える方法を自然と使っています。
実務で効くポイントを3つに絞ると、次の通りです。 1つ目は、一言で言うと——結論を最初に置くことです。 「つまり、一言で言うと〇〇です」から始めます。相手の脳に「受け取るべき情報の器」を先に作ることで、その後の説明がすべてその器に収まっていきます。
2つ目は、相手が持っている辞書を想像することです。 自分の言葉が「相手の辞書」に載っているかどうかを常に問いかけます。相手の語彙・経験・関心領域を想定してから話すことで、言葉が初めて「意味」として届くようになります。
3つ目は、専門用語を使うなら解説をセットにすることです。 専門用語はそれ単体では「音」にすぎません。「〇〇とは、簡単に言えば△△のことです」と解説を添えて初めて、相手のスキーマに接続され、理解が生まれます。 犬塚氏が強調するのは、「相手がすでに持っている知識(既知)」と「新しい情報(未知)」をどうつなぐか、という“知的マッチング”の視点です。

プロの講師は、いきなり未知の概念を投げ込みません。まず理解の入口、つまり「フック」を作ります。その代表がアナロジー(類推)思考です。「それって、皆さんがよく知っている〇〇みたいなものです」と例えた瞬間、相手の頭の中に理解のルートが生まれます。
ここで大事なのは、比喩や例え話の巧さではなく、相手がすでに知っていることにフォーカスし、理解を深めるコミュニケーションを取れるかどうかです。
説明がうまい人は、相手の理解を期待するのではなく、理解が生まれるルートをしっかりと設計しています。実務では、この差が意思決定の速度に直結します。 さらに重要なのが、不要なものを取り除く勇気です。真面目な人ほど正確さのために情報を盛り込みますが、情報量は理解量に比例しません。
むしろ逆で、余計な情報は混乱を増やし、「結局何が言いたいのか」を曇らせます。「何を言うか」よりも「相手が受け取れる形になっているか」。この軸に立てるだけで、説明は一段クリアになります。
私自身、著者と何度か仕事をしたことがありますが、彼のコミュニケーションはまさにこの考え方に基づいており、とても分かりやすいものでした。資料作成も相手の課題に寄り添う形で行われ、結果としてクライアントがプランを素早く採用してくれたことを今でも覚えています。
抽象と具体を往復し、「例えば」で迷子を防ぐ
説明がうまい人は、話す前に「どの情報とどの情報を、どうつなぐか」という論理構成を、あらかじめ頭の中で組み立てながら、自分が話す内容の「関係性」を意図的にデザインしています。
「話が長い」「何が言いたいかわからない」と言われる人は、情報が並列のまま流れてしまっていることが多いと言います。重要度の差が示されず、結論・根拠・補足が同じ土俵に置かれてしまうと、聞き手は情報の海で溺れてしまいます。この問題に対し、犬塚氏は抽象と具体を往復することをすすめています。
・結論(抽象):結局、何の話か(全体像)
・理由・詳細(具体):なぜそう言えるのか(事例・データ)
・まとめ(抽象):だから、こうなる(再確認)
抽象で現在地を示し、具体で道案内をする。このセットがあるだけで、聞き手は迷子になりません。 説明がうまい人は、抽象的な理念(空からの視点)と、具体的な行動(地上の視点)を自由自在に行き来します。そして、聞き手が道に迷わないように、「例えば」という名の親切なハシゴを必ず用意しておくのです。
なぜ具体例がそれほど重要なのか。理由はシンプルで、聞き手は言葉を「文字」としてではなく、「映像」として理解するからです。抽象語だけでは像が立ちませんが、具体例が入ると場面が立ち上がります。
結果として、具体例を付け足したほうが記憶に残りやすくなります。情報量は増えるのに、むしろ理解が進むのです。この逆転は、認知心理学の「二重符号化理論」(言語情報とイメージ情報の二系統で記憶されやすい)とも整合します。
また、話の筋は「つなぎ言葉」で補強できます。「なぜなら」「つまり」「たとえば」「だからこそ」——こうした言葉が情報と情報の間に論理の橋を架け、話全体に結束性と一貫性を生み出します。納得感は、内容の豪華さよりも、筋の通り方で決まります。
説明がうまい人は、話しながら結論を探しません。話す前に、伝える結論を一つに絞っています。ここが定まると、情報は「結論に必要かどうか」で取捨選択できます。つまり、不純物を捨てる判断が速くなります。
結論を組み立てるためのフレームワークが「ピラミッド・ストラクチャー」です。強力な「結論」は、必ず「根拠」によって支えられています。そして、その根拠は「理由(なぜそう言えるのか)」と「事実(何がそれを証明するのか)」という、二つのパーツで構成されています。
結論を頂点に置き、その下に根拠の層を積み上げる——この構造を事前に設計しておけば、話は揺れません。聞き手は自然に「納得」し、アクションを起こしてくれるようになります。
相手に行動してもらうために必要なこと
「事実」と「意見」の切り分けこそ、説明のうまい人が、例外なく頭においてい「超基本」であり、あなたの説明の信頼性を劇的に高めてくれます。
意見は人によって変わりますが、事実は誰が見ても同じです。説明が強い人は、自分の意見を押しつけません。まず事実を提示し、聞き手自身が結論にたどり着けるように設計します。だから反論されにくく、合意形成が速いのです。
ここで実践として効くのが、主観語を事実語に置き換えることです。感情や感覚を表す形容詞・副詞を、具体的な数値や客観的な言葉に翻訳します。「すごく伸びた」ではなく「前年比120%に伸びた」。「かなり多い」ではなく「全体の7割を占める」。この置き換えだけで、説明は「印象」から「根拠」へと重心が移ります。
さらに、言葉の解像度も上げます。たとえば「企業」は解像度が低い言葉です。「大企業」→「大手メーカー」→「大手自動車会社」→「トヨタ自動車株式会社」「本田技研工業株式会社」という具合に、必要なところで具体へズームし、不要なところでは抽象へ戻す。説明がうまい人は、この往復を自在に行っています。
また、理解を行動へつなげるには「納得感」が欠かせません。相手の「なぜ?」を先回りして解消し、「これは自分に関係がある」と自分事化できたとき、理解は初めて行動に接続します。
犬塚氏の「説明とは、相手の頭の中に『わかった!』という快感を作ることである」という言葉は、その本質を突いています。 そして、技術以前の前提があります。説明がうまい人は、自分の話したいことよりも相手の心の状態を優先します。
その場の空気を読み、ときには「話さない」「後回しにする」という選択をする。それこそが、相手との信頼関係を築くための最高のコミュニケーションなのです。
相手がつまらなそうにしている際には、他責ではなく自責思考でとらえるようにしましょう。説明がうまい人は、「聞いていない」という態度を相手からの重要なサインとして受け取ります。そして、「なぜ、この人は今、私の話を聞けないのだろう?」と、その背景にある事情に思いを巡らせるのです。
説明の技術とは、相手を動かす前に、相手を理解しようとする姿勢でもあります。 この差は、プレゼンの場面でさらに顕著に表れます。説明がうまくない人は、集めた情報をスライドに順番に並べるだけ、つまり「情報提供」だけでプレゼンを終えてしまいます。聞き手の頭には、無味乾燥なデータの断片が残るだけです。
しかし、説明がうまい人は、その情報をストーリーとして再構築します。聞き手の心を動かす物語の脚本家になるのです。プレゼンにあえて余白をつくり、質疑応答で相手の疑問を回収して納得を積み上げていけば、圧倒的な信頼を得られるようになります。相手に理想の未来をイメージさせることができたら、ビジネスの成功確率は間違いなく高まります。
本書の強みは、構成そのものが「説明の見本」になっている点です。主張にはロジカルな設計思想があり、フレームワークで整理され、エビデンスで裏付けられている。さらに、抽象と具体の往復が徹底されているため、読者は常に現在地を把握しながら読み進めることができます。
読み終えたあと、「今日から使ってみよう」と思える具体策も含め、説明本としてこれほど実用的に仕上がっていれば、ベストセラーも当然の結果です。
コンサルタント 徳本昌大のView
本書を読み終えて、私が最も強く感じたのは、「説明とは技術ではなく、相手への思いやりの設計だ」という気づきでした。 説明がうまくない人は、頭に浮かんだ情報を、浮かんだ順で口に出してしまいます。すると聞いているほうは、情報がバラバラに入ってきて、全体像が見えないまま話が終わってしまいます。
しかし、説明がうまい人は、話す前に「どの情報とどの情報を、どうつなぐか」という論理構成を、あらかじめ頭の中で組み立てています。自分が話す内容の「関係性」を意図的にデザインしているのです。このとき、単に情報を並べるのではなく、情報と情報の間に「つなぎ言葉」という「橋」を架けることで、聞き手の頭の中にスムーズに理解が流れるように設計しています。
「相手の頭の中で何が起きているか」という視点から逆算し、話し方をデザインすることで、信頼を勝ち得ているのです。
私自身のコンサルティングや執筆活動を振り返っても、言葉が相手に届かなかったときは、決まって「自分が見ている景色」をそのまま伝えようとしていた時でした。相手が見ている景色(既知)に立ち、そこから新しい景色(未知)へと手を引いて案内する。その手間を惜しまないことこそが、プロフェッショナルの仕事なのだと痛感します。
本書は単なるコミュニケーションのノウハウ本ではありません。他者と真に分かり合いたいと願うすべての人のための、思考のフレームワークです。明日からの会議や商談で、あなたの言葉が「伝わる」から「動かす」へと変わる一冊として、自信を持っておすすめします。
🖋 書評:徳本昌大 書評ブロガー・ビジネスプロデューサー
















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