60歳からの人生を変える22の発想 ~医師をやりながらベストセラーを出した僕の方法~(松永正訓)の書評

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60歳からの人生を変える22の発想 ~医師をやりながらベストセラーを出した僕の方法~
松永正訓
小学館

30秒でわかる本書のポイント

結論: 60歳は引退ではなく「人生のリセットボタン」を押す時期。やりたいことを明確にし、利他の心でワクワクな人生後半を設計すべきである。
原因: 人生100年時代、かつての「楽隠居」モデルは崩壊した。一方で、体力・集中力の減退という現実に抗い、若い頃と同じ働き方を続けることはリスクを伴う。
対策: 「仕事・時間・人」の3要素をアップデートする。未来を予測するのではなく、理想の未来を自ら「作ってしまう」行動が必要。

本書の3行要約

本書は、老後を単なる余生として消化するのではなく、「人生後半をどう設計し、どう楽しむか」へ視点を引き上げてくれる一冊です。医師として現場を知る著者が語る「プライドの手放し方」や「新しい情熱の見つけ方」は、仕事一筋で生きてきた人ほど現実味をもって響きます。

おすすめの人

・定年退職を控え、セカンドキャリアに漠然とした不安を感じている方
・若い頃と同じペースで働き続けることに限界(体力の衰えなど)を感じている方
・「人生100年時代」を、守りではなく攻めの姿勢で楽しみたい50代・60代
・副業、出版、ブログ発信など、新しい挑戦を行いたい方

読者が得られるメリット

・「時間の主導権」を取り戻す視点: 酒を断つ、あるいは余暇の質を変えることで、密度の濃い生活を送る術が学べる。
・失敗コストを最小化するリスク管理: 致命傷を避けつつ、確実に成果を出すための「転ばない設計」が身につく。
・自己肯定感と幸福度の向上: アウトプット(書評やブログ)を通じて他者とつながり、感謝される喜びを再発見できる。

60歳は人生後半のリセットのタイミング

60歳で楽隠居ができる時代はとっくに終わった。(松永正訓)

私は本書の著者・松永正訓氏とほぼ同世代です。体力の衰えを意識する場面は増えましたが、それでも日々ベンチャー支援や大学での教育に関わり、刺激のある時間を過ごしています。

20年以上前であれば、60歳で「楽隠居」することが自然な選択肢として語られていました。しかし、人生100年時代と呼ばれる現在では、還暦は引退ではなく、仕事と時間の使い方を改めて組み直す節目になりつつあります。私自身も、まさにその感覚を持っています。

60歳からの人生を変える22の発想 ~医師をやりながらベストセラーを出した僕の方法~は、63歳の開業医である松永氏が、いわゆる「定年世代」に向けて、人生を安定させ、充実させるための具体的な視点を整理した一冊です。

著者は人生後半を変える要素として「仕事」「時間」「人」を挙げ、抽象的な精神論ではなく、日常の運用を変えるための発想として22の提案を提示しています。

読み終えたあとに残るのは、気合いで突破するというより、準備とプランで再現性を上げていく手応えでした。 本書を通して最も納得感があったのは、60歳以降の働き方は若い頃と同じでは成立しにくい、という前提です。

体力や集中力、回復力は年齢とともに確実に変化します。それでも若い頃と同じペースで走り続ければ、どこかで歪みが表に出やすくなります。だからこそ著者は、働き方の中心に「よく休むこと」を据えています。

休み時間を積極的にとり、心身を意識的に休めることで集中力ややる気が戻り、結果として仕事のアウトプットが安定します。よく休むことは、単に疲労回復の手段ではなく、よい仕事を生み出すための前提条件だという捉え方です。私も60歳を迎えて以降、この点を以前より明確に意識するようになりました。

ここで重要なのは、休みを「手が空いたときの余白」として扱うのではなく、人生後半を楽しむための時間設計として捉え直すことです。

もし仕事の中に空き時間があるなら、それはただの隙間ではなく、次の成果を生むための資源になり得ます。体を休めると同時に、その短い時間で仕事の進め方を見直したり、余暇の使い方を考えたりする。

ほんの少しでも「ものを考える」時間を意図的に差し込むだけで、残された時間の使い方そのものが変わっていきます。

また本書は、年齢を言い訳にしない姿勢を促しながらも、無責任に挑戦を勧めません。若い世代や起業家にとって失敗は、学びに変わりやすい経験です。むしろ、積極的に失敗すべきだと言ってもいいでしょう。

しかし、60歳を過ぎると話はまったく違ってきます。失敗のコストは一気に跳ね上がり、場合によっては取り返しのつかない致命傷になりかねません。

「もうやり直しが効かないかもしれない」──その現実を、私自身も肌で感じています。 だからこそ著者は、「60歳になったら、かんたんに最初の一歩を踏み出してはいけない。人生の残り時間は少ないのだから、失敗は許されない」と、あえて強い言葉で警鐘を鳴らします。

これは、挑戦を否定しているわけではありません。むしろ、「挑戦のやり方をアップデートせよ」というメッセージだと読むべきでしょう。 勢いだけで飛び込むのではなく、先に勝ち筋をつくる。 ゴールを明確にし、そこまでの道筋を描き、無理のない手順に細かく分解してから動く。 「走りながら考える」よりも、「転ばない設計」を優先する。 60代以降の人にとっては、そのほうが限られた時間と体力を、確実な成果に変えやすいからです。

もっとも、挑戦を重ね、失敗を経験することで、大きな人脈や深い学びを得られるのも事実です。 だからこそ私は、リスク管理を徹底しつつも、起業家マインドだけは失わず、行動し続けたいと考えています。

人生を楽しむという姿勢を象徴する例として、朝の鏡のエピソードが紹介されます。洗面のとき、鏡の中の自分に「自分は今の仕事を楽しんでいるか」と著者は問いかけます。もし楽しめていないなら、状況が変わるのを待つのではなく、自分から楽しさを探しにいく。仕事の面白さは与えられるものではなく、見つけにいくものだというのが著者の考えです。

私も毎朝、鏡に向かって笑顔を作り、「今日も仕事を楽しもう」と自分に声をかけています。自分を奮い立たせるというより、短い自己対話で一日の方向を整えている感覚に近いです。忙しい日でも、この数十秒があるだけで判断が前向きになり、行動が確実に加速します。

そうした経験があるからこそ、鏡の中の自分に問いかけるという著者の提案は、日々の行動を後押しする習慣として取り入れる価値があると思います。

自分の未来は自分で作ろう!

自分の未来を知りたいのであれば、自分で未来を作ってしまえばいい。

未来が不安であるならば、「自分の未来を知りたいのであれば、自分で未来を作ってしまえばいい」という著者の言葉は、やはり強く刺さります。未来は当てにいくものではなく、こちらから形を与えていくものだ、という視点です。

この一文を読んだとき、私は40代の頃に、自分のキャリアを「選び直す」決断をした記憶がよみがえりました。サラリーマンとしての延長線に安心を置くのではなく、サラリーマンを辞めるという前提で、断酒し、出版して、著者になる、社外取締役になる、大学教授になる、と複数の到達点を先に言語化しました。

結果として、日々の選択が場当たりにならず、「この行動はどの未来につながるのか」という問いで整理され、目の前の行動が一本の線としてつながり、私のキャリアを変えてくれました。

自分から先手を打てば未来が見える、というのは、気合いや根性の話ではありません。見通しがない状態で不安が膨らむのは自然な反応であり、その不安を減らすには、未来の輪郭を具体化する必要があります。

そのための最も確実な方法が、人生を自分で設計し、未来を「作ってしまう」ことです。何年後にどうなっていたいか、何を残したいか、どんな役割を担いたいかを先に決める。そうすると、次にやるべきことが分解され、必要な準備や学び、会うべき人が見えてきます。未来が固定されるというより、意思決定の基準ができることで、迷いが減っていくのです。

不安が薄れるにつれて、思考は守りから攻めへ切り替わり、マイナス思考はポジティブ思考へと移行しやすくなります。著者が言う「未来を作る」は、心を奮い立たせる精神論ではなく、視界を確保し、判断の精度を上げるための技術だと私は受け取りました。

本書の中で著者は、夜の余暇の時間を読書や書評の執筆にあてています。同じ年の書評家として、私は朝型という違いはあっても、同じ世代の人が似た実践を積み重ねていることに、素直に励まされました。

読書には、知らないことが知れるという純粋な楽しみがあります。しかし、それを自分の中だけで完結させず、書評としてアウトプットすることで、読者にとっては新しい本との出会いになり、著者や出版社にとっては本が適切な読者へ届くサポートにもなります。ブログを習慣化することで、他者とのつながりが強化され、結果として感謝される場面が生まれ、幸福度がアップするのです。だからこそ私も、死ぬまでインプットとアウトプットを続けたいと考えています。

もう一つ、著者との共通点として印象に残ったのが、酒をやめたことです。60代以降は時間が有限ですから、酒を飲むことよりも、自分がやりたいことに時間を使ったほうがよい、という選択には共感を覚えました。

ここで重要なのは、単に「時間を取り戻す」という話ではなく、時間の主導権を取り戻すという点です。何に時間を使うかを自分で選び直せるようになると、生活の密度が変わり、結果として人生後半の設計が現実味を帯びてきます。

特に、仕事一筋で生きてきた方にとっては、医師というプロフェッショナルな立場から語られる「プライドの捨て方」や「60代以降の働き方」といったアドバイスの数々が、理屈ではなく実感として響くはずです。

本書は、「老後をどう過ごすか」という発想を一段押し上げ、「残りの人生をどう熱狂して生きるか」へと視線を変えてくれます。そのためのマインドセットと実践法が詰まっており、特に50代・60代の方におすすめしたい一冊です。

最強Appleフレームワーク

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