一つの疑いが頭をもたげた。あの一連の抗生物質は、私を苦しめていた細菌を全滅させただけでなく、もともと体の中にいた細菌まで絶滅させてしまったのではないだろうか。私は自分の体が微生物の棲めない荒れ地になってしまったように感じ、かつて私の体を棲み処としていた100兆個の友好的な微生物がどれだけ重要な存在であったかを、このときはじめて意識した。
(アランナ・コリン)
アランナ・コリンのあなたの体は9割が細菌: 微生物の生態系が崩れはじめたは
健康オタクの私には、たいへん興味深い一冊でした。
私たちは体内に棲む微生物を保護しないことで、新たな病に苦しみ始めました。
その結果、体内微生物の生態系が破壊され
さまざまな問題を引き起こしていると著者のアランナ・コリンは警告を発しています。
体内の情報を知れば、遺伝子だけでなく
細菌を大事にすることが重要だとわかります。
あなたの体のうち、ヒトの部分は10%しかない。あなたが「自分の体」と呼んでいる容器を構成している細胞一個につき、そこに乗っかっているヒッチハイカーの細胞は9個ある。あなたという存在には、血と肉と筋肉と骨、脳と皮膚だけでなく、細菌と菌類が含まれている。
抗生物質によって、自分の中の細菌を殺してしまった体験から
著者は微生物と人間の関係を追求し始めます。
ヒトゲノム・プロジェクトのおかげで共生微生物の研究が進み
微生物なしに、人は健康でいられないことがわかってきました。
共生微生物がバランスを崩すと、アレルギー疾患や肥満を引き起こすのです。
体の病気だけでなく、不安症、うつ病、自閉症といった心の病にも
微生物が影響していたのです。
あなたの体は9割が細菌 [ アランナ・コリン ] |
アランナ・コリンは自分の微生物のDNAを解析します。
抗生物質という有害物質によって腸内が汚染されていることを
著者は恐れていましたが、実際には、腸内の細菌の多様性が欠けていただけでした。
使用した抗生物質によって、少数派の菌種が絶滅していましたが
これが彼の健康を損なってるのでは?と彼は考えます。
ここから、著者のコリンは自らの健康を取り戻す旅を始めました。
食生活を変える努力によって、彼は共生微生物との関係を改善していったのです。
現代人は抗生物質のおかげで、ポリオや天然痘からは解放されました。
私たちは感染症にはかからなくなったのですが
その代わりに新しい病気(21世紀病)を患うようになりました。
花粉症、糖尿病、アトピー性皮膚炎、自己免疫疾患の症状が
あたりまえになってしまったのです。
1型糖尿病や自己免疫疾患、肥満、心の病が増えるタイミングが
感染症がなくなった時と同じだという著者の指摘に唖然としました。
現代人は、伝染病では死ななくなりましたが
肥満やアレルギーに苦しむようになってしまったのです。
体内に存在する細胞の90%を占める微生物の世界が
以前とは様変わりすることで、21世紀病は引き起こされます。
腸内細菌の全体(マイクロバイオータ)のバランスが崩れることで
肥満やアレルギーを患っているとすれば、腸内の環境を整えることが大事になります。
抗生物質や除菌製品の過度の使用には注意しながら
食生活を改善し、マイクロバイオータのバランスをとることが良さそうです。
自分の健康を守るために、微生物との共生を考えたくなりました!
今日もお読みいただき、ありがとうございました!
ソーシャルメディアを武器にするための10カ条 [ 徳本昌大 ] |
photo credit: UNICEF Ethiopia Scabies response in drought-affected areas via photopin (license)
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