利他主義なおせっかい焼きが陥る問題点。エドワード・M・ハロウェル氏のハーバード集中力革命の書評

アリは人間よりも何百万倍も数が多いことから、ハーバード大学の生物学者かつ自然学者であるエドワード・ウィルソンに「もう1人の地球の征服者」と呼ばれたが、利他主義のもっとも驚くべき例は、まさしくこのアリに見られる。ある種のアリは、ほかの同類よりも早く死ぬことになるような仕事を当然のように引き受けるという。アリの利他主義は遺伝的に決定されており、逆らえないものなのだ。自由意志は介在しない。人間にはいくぶんかの自由意志があると見られるが、最近の研究によれば、人間も自分の利己的な欲求に反してふるまうことを選ぶ場合があるという。私たちが思っているよりも人間とアリには共通点があるのだ。(エドワード・M・ハロウェル)

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利他主義者の問題点とは何か?

エドワード・M・ハロウェル氏のハーバード集中力革命の中に、利他的な人が集中力を発揮できずに、人生で問題点を抱えることがあるという話が紹介されていました。人には利己的な目標と利他的な目標があり、そのどちらかを選ぶ能力があります。驚くことに多くの人間は「自分自身の必要」よりも「他人の必要」に注目し、利他的に行動すると言います。

レイチェル・バックナー=メルマンらによる2005年の調査では、「自分自身の必要を無視して他人の必要のためにつくす傾向」を評価しました。354世帯からの回答にもとづいて出された結論は、「人間が利他的行動をとる理由の一部は、相手が自分と同族かどうかにかかわらず、利他的行動パターンをとらせる遺伝子のためである」というものでした。

DNAに利他主義が組みこまている人が世の中にはいるのです。極端な言い方をすれば、”利他主義者”にとって他人を助けることは喜びそのものなので、こうせずにいられない人がいるのです。彼らは利他的に行動することでドーパミンを放出し、幸せになれるのです。「他人のために何かする」ことがドーパミンの放出レベルを上げ、幸福度を高めています。

fMRI(機能的磁気共鳴画像法)を用いてリアルタイムで、脳の快楽中枢の活動を観察できますが、ジョージ・モルらは、慈善事業への寄付に関する決定をしている被験者のスキャンを行いました。その中で、被験者は「お金を受け取るか」という質問を受けました。もちろん彼らは「受け取る」と答え、fMRIは喜びの反応を記録しました。続いて、「受け取るお金の40パーセントを慈善事業に寄付するか」と質問しましたが、fMRIの記録によると、「寄付する」ことを選んだ被験者では、自分自身がお金を受け取ったときよりも快楽中枢の活動がさらに活発だったのです。

しかし、一見幸せに見える利他的に行動する人にも、集中力を失うという問題点があります。

生来の利他主義と他人への同情が止められない性質のために、集中力を失ってしまった人々は大勢存在する。

こういった利他的で他人に尽くす人にも面倒を見てくれる人が必要なのです。激しい感情に耐えるコツは、他の人に助けを求めることです。1人で心配することは、特に危機においては破滅へとつながると言います。

利他主義者も正しい人と一緒に悩めば、事態がよく見えるようになり、自分の行動の問題点に気づけます。利他的なおせっかい焼きには以下の5つの問題点があります。
■エネルギー
他人の面倒を見ることは精神的な疲れをもたらします。

■感情
ほかの人の否定的な感情を引き受けるときには、奇妙な精神的取引が起こります(投影性同一化)。他者から悪い影響を受け、自分の感情のバランスを崩してしまうのです。

■エンゲージメント
他人の問題に関わると、自分自身の問題と向き合う能力を減らしてしまいます。

■仕組み
ほかの人の面倒を見すぎると、自分自身の面倒を見るための指針になるはずの仕組みを無視してしまいます。

■コントロール
何が起こっていて、それを防ぐにはどうしたらよいかを理解していなければ、他人を救おうという気持ちと反対の気持ちが支配しはじめる。

 

おせっかい焼きの問題を解決する10のヒント

諸君の周囲にいる人々を観察していただきたい。そうすれば、彼らがいかに自分の生の中で道に迷っているかがわかるだろう。彼らは自分の身に起きていることに何の疑念も抱かず、夢遊病者のように、それぞれの幸運もしくは不運の中をさまよい歩いているのだ……生とはさしあたり、自分が迷いこんでいる混沌だからである。(ホセ・オルテガ・イ・ガセット)

利他主義者は集中力を高めるために、どう対処したらよいのでしょうか?著者はおせっかい焼きの問題を解決する10のヒントを紹介しています。

①自分の直感的反応、すなわち反射的・潜在的・感情的な最初の反応が、まず他人の面倒を見る方向に向いていることを認めるようにします。自分自身の状況をよくすることよりも、自分以外のあらゆる人を幸せにすることを優先している事実を認識するのです。

②利他主義であることは多くの点でほめられるべきものであり、この傾向を自分自身の面倒を見る能力と協調させているかぎり、組織にとって非常に価値があると考えます。

③自分自身の世話をすることは利己主義とはもちろん異なります。だからこそ、飛行機の客室乗務員は、まず自分の酸素マスクをつけるようにと言うのです。他人の手伝いも大事ですが、自分のことをこなした後で、他者のことを考えましょう。

④自分自身の面倒を見るのは組織全体にとってよいことであるという事実を頭にたたきこみましょう。多くの人、中でも女性は反対のことをして、深みにはまります。まず、最初に自分の面倒を見ることは、必要なことであるという事実を他人に伝えるようにするのです。

⑤スケジュールに「自分のための時間」を入れることで、重要な問題に集中して取り組めるようになります。まずは自分の時間を優先し、睡眠や運動の時間を確保しましょう。瞑想や祈り、そのほかの内省的な時間が、心に平穏をもたらします。

⑥自動的に「はい」と言うのではなく、「少し考えさせてください」と伝えるようにすることで、自分の感情と行動をコントロールできます。

⑦一緒に働いている人が苦しんでいるときは、飛びこんで助けに行くのにもっともふさわしい人間が自分であるかどうかを考えましょう。一度飛びこんでしまえば、飛びだすのは難しいということを忘れないようにすべきです。だから、(1)長引くことになるかもしれない問題にかける時間があり、(2)必要な助けを提供するのにもっともふさわしい人間が自分であり、(3)必要な助けを提供するだけのエネ ルギーや感情的余裕がある場合にのみ飛びこむようにするのです。

⑧他者に助けを求めることを学びましょう。他人の面倒を見る人のほとんどはいわゆる「反依存」、すなわち助けを受けるより助けを提供するほうがずっと心地よいと感じる人間です。自分の心地よい範囲から踏みだして、助けを求めることを学ぶのです。利他主義者が自ら頼むようになれば、周りの人々も喜びます。

⑨助けを提供する時間やエネルギーが自分にない場合には、組織の誰かほかの人が助けてくれるはずです。だから、自分が助けることが減れば、その空いた役目を担ってくれる人が増えます。

⑩すべての努力について、自分が自分であることを喜びましょう。他者へのサポートをほどよく手控えることで、自分の人生を楽しめるようになるのです。

まとめ

利他主義者は慈善活動をすることで、ドーパミンを放出し、幸せを感じます。しかし、他者への時間を増やすと自分の人生をエンジョイできなくなります。その問題を避けるためには、自分の時間をしっかり確保する必要があります。時には、他者からサポートを受け入れるようにしましょう。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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