認知的負荷を理解し、生産性を高めよう!


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天才科学者はこう考える 読むだけで頭がよくなる151の視点
著者:ジョン・ブロックマン
出版社:ダイヤモンド社

本書の要約

人の短期記憶を司るワーキングメモリには限界があります。ある瞬間に私たちの意識に入り込んでくる情報の量を「認知的負荷」と呼びますが、これがワーキングメモリの容量を超えると、私たちの知的能力には問題が生じてしまいます。結果を出したければ、情報の量と質をコントロールすべきです。

ワーキングメモリとは何か?

ワーキングメモリは、今、私たちの意識にある情報(短期記憶)を短い間、蓄えておくところだ。日々過ごすなかで何かを見聞きして得た印象、頭に浮かんだ考えなどが一時的にそこに蓄えられる。(ニコラス・カー)

ジョン・ブロックマン天才科学者はこう考える 読むだけで頭がよくなる151の視点書評を続けます。私たちはなぜ、物忘れをするのでしょうか?あなたはカウチにくつろいで座り、テレビでドラマを見ています。するとふいに、キッチンに用事があることを思い出します。立ち上がって歩き出しますが、早足で10歩ほど歩いてキッチンに着いたときには、何をしようと思ったのかを忘れています。しばし、呆然としますが、また後で思い出せば良いと考え、気に止めません。物忘れは頻繁に起きるので、仕方がないと諦めてしまうのです。年齢を理由に物忘れを当たり前だととらえてしまうのです。

これは、私たちの知力には限界があることを示す現象で、私たちのワーキングメモリの容量がいかに小さいかを示しています。ワーキングメモリは、私たちの短期記憶を短い間、蓄えておくところです。日々過ごすなかで何かを見聞きして得た印象、頭に浮かんだ考えなどが一時的にそこに蓄えられます。このワーキングメモリは、一般に容量に限界があると考えられています。

プリンストン大学の心理学者、ジョージ・ミラーは1950年代に、私たちの脳が度に董られる短期記憶の数が7つ前後であると主張しました。彼は「マジカルナンバー7±2」というこの論文で、数字や単語を記憶する場合、人が記憶できる量は「チャンク」と呼ばれる塊りで表すと7±2個の範囲に収まることを指摘しました。

しかし、本書で認知的負荷について書いているジャーナリストのニコラス・カーは、この7つという数字は、実際より多すぎると考えています。その後の研究で、容量は覚える対象によって変わり、数字なら約7個、文字なら約6個、単語なら約5個であることが分かってきました。研究者のなかには、ワーキングメモリに一度に蓄えられる短期記憶の数はせいぜい3つか4つではないかという人もいます。

情報が多過ぎると理解度が下がる?

ある瞬間に私たちの意識に入り込んでくる情報の量を「認知的負荷」と呼ぶ。認知的負荷がワーキングメモリの容量を超えると、私たちの知的能力には問題が生じる。入ってきた情報がすぐに出て行ってしまい、うまく処理できなくなる(用事を思い出してキッチンに行ったのに、結局、忘れてしまう、というような現象が起きる)。長期記憶に移行させる前に情報が消えてしまうのだ。だから情報をしっかりと自分の知識に加えることができない。

記憶がうまくいかなければ、それについて思考をする能力は当然著しく底下します。ワーキングメモリが過負荷になると、注意力が散漫にもなります。いったん注意力を失うと、その流れは止められず、注意力は散漫になる一方です。神経科学者トルケル・クリンベリは「私たちは、自分が注意を向けていたことしか覚えていられない」と指摘しています。

この認知的負荷という考え方を、発達心理学者や教育研究者は長い聞、教育法の開発や評価に利用してきました。生徒に短時間にあまりに多くの情報を与えすぎると、理解度が下がり、学習効果があまり得られないという事実が知られていたのです。

私たち現代人は情報が大爆発する時代を生きています。SNSやYouTubeなどの動画の普及で情報の伝達速度が驚異的に向上したおかげで、現代人はかつてないほどの大量の情報にさらされています。この大量の情報を十分に理解できれば、誰もが利益を享受できます。

情報過多時代には、受け取る情報の増加が記憶や思考にどう影響を与えるのかもよく知っておくべきだとニコラス・カーは指摘します。

自分のワーキングメモリがいかに小さくて脆弱かを知っておけば、認知的負荷が大きくなっても十分にうまく対応していけるに違いない。また、自分に向かって流れてくる情報の量もうまく制御できるようになるはずだ。

私たちがワーキングメモリで処理できる情報は限られています。今はフェイクニュースがあふれ、ノイズが私たちの思考と行動を左右します。

何か複雑でなおかつ重要な知的作業をするとき、あるいは他人との会話などで流れてくる情報を十分に理解し、吟味したいときには、情報の蛇ロは開き過ぎないよう注意すべきです。一度に入ってくる情報の量は一定以下に抑えることで、私たちは結果を出せるようになります。

情報のどれが重要かを見極め、大量な情報を入手しないようにすべきです。昨日のブログにも書きましたが、生産性を高めるためには、ノイズとシグナルを見極めることがとても重要です。

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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