ジョン・R.カッツェンバックの最高の企業文化を育む「少数」の法則の書評

man wearing gray polo shirt beside dry-erase board
最高の企業文化を育む「少数」の法則

ジョン・R.カッツェンバック
日経BP

本書の要約

リーダーが自分の会社を変えたいと本気で思っているのであれば、高いレベルの共感、根気と強い意思、集中的な取り組み、そして何よりも、既存の組織文化から最も良い要素を引き出すための実際的な方法=クリティカル・フューが必要になるのです。

企業文化が重要な理由

もし、あなたが組織のリーダーで、ビジネスを新たな方向に動かすチャンスを探しているのなら、その努力の一部を組織文化の向上に注げば成功する確率が高い。逆に、文化を無視したり敵視したりすれば、目標は達成できないだろう。(ジョン・R.カッツェンバック)

著者のジョン・R.カッツェンバックは、企業文化変革研究・実践の中心拠点であるカッツェンバック・センターを運営しています。50年にわたり、カッツェンバックは組織文化をテーマに研究を続け、その成果を本書にまとめました。

会社が何に秀でているかは、その会社の文化によって決まります。会社の文化は重要であり、また強力です。企業の文化とは、その企業に深く根づいた姿勢、定着した習慣、繰り返される振る舞い、潜在的な感情、共通の世界観が集まったものなのです。

リーダーは企業文化、従業員の行動の中に感情に訴えかける要素(プラスの感情的エネルギー)を見出すことからスタートすべきです。それぞれの組織文化には、変化を成功させるために必要な要素がすでに含まれており、リーダーがそれらを大切にすれば、変化は持続性のあるものになります。

著者は有能な組織には緊密に結びついた3つの要素があると言います。
■ビジネス戦略・・・企業が進むべき方向であり、それを基盤として社員は戦う態勢を整えます。
■経営モデル・・・戦略の遂行を支援するための、指揮命令系統を構築する方法。
■組織文化・・・ほかの二つの要素の原動力となり、それらを支援します。文化とは、社員たちがそれぞれの役割、つまり会社の戦略をサポートする日々の活動に注ぐ情熱とコミットメントを意味します。

社員は、会社の目標に賛同し、その戦略を支援できるように理解を深め、さらに上の段階に進まなければなりません。それは、会社の戦略を成功させるには自分の行動や決断や働き方をどう変えるべきだろう、と自問することです。

社員の反応や選択は往々にして、抽象的で合理的な思考ではなく、感情に訴える刺激によって引き起こされます。リーダーが社員の仕事への取り組み方を変えるには、彼らをやる気にさせる合理的な刺激だけでなく、彼らの感情に訴える刺激が必要とされるのです。

しかし、組織文化をいきなり変えようとすると大きな軋轢が生まれます。

「クリティカル・フュー」とは、一言でいえば「企業の変革をもたらすために、企業が成長することを戦略的に的を絞って選択された少数の『社員の感情に訴える形質』『重要な行動』『真の非公式リーダー』を中心とする要素」だ。

クリティカル・フューの3つの要素は以下の通りです。これらのクリティカル・フューの要素に的を絞れば、複雑さが軽減され、ポジティブで非公式で持続的な影響を業績に与えられるようになると著者は指摘します。

▼形質(Traites)
会社の「家族的類似性」を体現する一連の要素。業績に結びつく仕事の行い方と傾向・習慣を改善することで、結果を出せるようになります。企業には多くの形質がありますが、変革を成功させるための重要な形質は、ほんの少しです。 倹約が文化なら、正しい倹約と悪い倹約があるはずです。倹約が本当に会社のためになっているのなら、それに報い、妨げになっているのなら、それを改善すべきです。 重要な形質は、社内全体に共鳴やプラスの感情を引き起こします。良い形質を文化の核に据えることで、目標を達成できるようになります。

要となる行動(Keystone Behaviors)
一部の社員が日常的に行っている、周囲の人々に良い影響を与える少数の行動。それらが広く組織内に行き渡れば、会社の成功につながります。企業の行動は多様ですが、そのメンバーが進むべき道を示す正しい行動は、それほど多くありません。リーダーは、結果を出せる要となる行動を探しましょう。

▼真の非公式のリーダー(Authentic Informal Leaders・AIL)
優れた感情的直感力または社会的ネットワークを備え、際立った存在になっている少数の人々(真の非公式リーダー)。肩書きや地位に頼ることなく、人に影響を及ぼし、活力を与える人であるAILは、他者に影響を及ぼす能力を備えており、クリティカル・フューの行動を下から上へと広めるためのパワーの源になります。

企業には数百人から数千人の意思決定者がいますが、文化の変革は、特別に選ばれた、時には異例とも言えるわずか数人のエネルギーによって始まります。社員が互いに支援や励ましを送ったり、洞察を共有したりするようになると、社員どうしの絆が強まります。社員の一部の優秀なメンバーが率先してクリティカル・フューの行動を奨励し、ほかの社員がそれを気分よく遂行すれば、そうした行動は瞬く間に社内に広がり、定着していきます。

リーダーはメンバーの感情に訴えよう!

すべての産業(そしてもちろん、すべての企業や国際機関)は、それぞれ独自の文化をもっているが、どこにも共通する真実がある。それは、組織が一丸となって大きな変化を起こそうとする時、成功するか否かは、文化への関わり方によって決まるということだ。

もし、あなたが組織の何らかのレベルのリーダーで、自分のビジネスを新たな方向に動かすチャンスを探しているのなら、その努力の一部を組織文化の向上に注げば、成功する確率が高いと著者は指摘します。逆に、文化を無視したり敵視したりすれば、目標は達成できないのです。組織や企業を変革するには、そこで働く人々の行動を変える必要があります。全ての従業員の行動を変えるには、彼らの感情に訴えなければならないのです。企業文化が重要になるのは、ここに理由があります。

組織にとって、ポジティブな感情はきわめて重要であり、あらゆる取り組みを力づけてくれます。リーダーの下で働く人々は、課された仕事に対してポジティブな感情を抱くべきであり、彼らの行動を良い方向に導く唯一の方法は、変化に対してポジティブな感情を持てるようにサポートすることなのです。 

ビジネスは企業文化を形作りますが、企業文化がビジネスを形作るとも言えます。スターバックスとダンキンドーナツというファストフードの成功の企業の文化は異なります。両社はコーヒーや食べ物を提供する外食チェーンで、どちらも成長を続け、顧客満足度が高いことで知られています。
■スターバックス
家庭と職場に続く「サードプレイス」というコンセプトの上に文化を築き、そのすべてが上品な陽気さを志向しています。
■ダンキンドーナツの文化
効率、節約、達成を核としています。同社のスローガン「アメリカはダンキンで動く」は、単なるマーケティング・メッセージではなく、同社の文化を反映しています。

アップル、インテル、グーグル、マイクロソフトについても同様の比較ができる。4社はすべてテクノロジー企業だと言えますが、その文化はまったく異なります。

リーダーが自分の会社を変えたいと本気で思っているのであれば、高いレベルの共感、根気と強い意思、集中的な取り組み、そして何よりも、既存の組織文化から最も良い要素を引き出すための実際的な方法=クリティカル・フューが必要になるのです。

組織のリーダーが望むような全面的かつ短期間での改革はうまくいかないものです。リーダーは今ある文化の強みを見つけ、それを活かすことを考えましょう。

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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