本物の交渉術 あなたのビジネスを動かす「パワー・ネゴシエーション」
ロジャー・ドーソン
KADOKAWA
本書の要約
本物の交渉術の基本ルールの1つは、相手に期待以上の要求をすることです。パワーネゴシエーターは、交渉では最初の要求が常に極端であることを知っていますから、それを気にすることはありません。交渉が進むにつれ、両者が納得できるような解決策を見つけ、中間地点へと向かうことを彼らは知っているのです。
交渉の基本ルールとは?
魔法のようなウィン・ウィンの解決策はあり得ません。相手が購入する場合、相手は最低価格を求め、あなたは最高価格を求めます。相手が売っている場合、相手は最高の価格を求め、あなたは最低の価格を求めます。彼らは、あなたのポケットからお金を取り出して、彼らのポケットに入れたいのです。(ロジャー・ドーソン)
ビジネスには交渉がつきものですが、多くのビジネスパーソンは交渉のルールを知らないことで、多くの失敗を犯しています。今日はこれを防ぐ方法を本物の交渉術 あなたのビジネスを動かす「パワー・ネゴシエーション」から学ぼうと思います。
著者のロジャー・ドーソンは、交渉術に関する米国内トップ講師で、本書には彼のノウハウが惜しげもなく紹介されています。交渉上手なパワーネゴシエーターには、ある共通点があると著者は指摘します。
パワーネゴシエーターは、自分が素晴らしい果実を手に入れているにも関わらず、交渉相手に自分が勝ったと思わせて、席を立たせているのです。そのために彼らは何をしているのでしょうか?
本物の交渉術の基本ルールの1つは、相手に期待以上の要求をすることです。ヘンリー・キッシンジャーは、「会議の席での効果は、自分の要求を大げさに言うことで決まる」と述べています。
パワーネゴシエーターは、相手に先に提示してもらうほうが、通常は有利になることを知っています。
・相手の最初の提案が、あなたの予想をはるかに上回るものである可能性がある。
・相手に何かを伝える前に、相手の情報を得ることができる。
・相手の提案をブラケティング(いったん相手の提案を脇に置いて、より自分にとって有利な最初の提案を申し出る)することができる。最終的に差額を折半することになっても、自分の欲しい額で手に入れることができる。
彼らは、相手が最初に提示する要求が常に極端であることを知っていますから、それを気にすることはありません。交渉が進むにつれ、両者が納得できるような解決策を見つけ、中間地点へと向かうことを彼らは知っているのです。
ビートルズのマネージャーだったブライアン・エプスタインは、ユナイテッド・アーティスツとビートルズの映画出演の交渉を行ないました。ユナイテッド・アーティスツのリスクは、ビートルズの人気の賞味期限がいつまで続くかでした。
そこで同社は、この映画を安上がりなモノクロ映画として企画し、わずか30万ドルの予算で作品を製作しました。出演料が高くなると赤字になるため、ユナイテッド・アーティスツは、利益の25%をビートルズに提供することを計画していました。
1963年当時、ビートルズは世界的なセンセーションを巻き起こしていたので、プロデューサーは彼らに先に値段を挙げてもらうことに非常に抵抗があったものの、勇気を持って交渉のルールを守り通したのです。
彼はエプスタインに2万5000ドルの前金を提示し、利益の何%が妥当だと思うかを尋ねました。 ブライアン・エプスタインは「彼らが映画を作るために時間を割くとは思えないが、もし君が最高のオファーをしてくれるなら、それを持ち帰って、彼らと一緒に君のために何ができるかを考えよう」と言うべきでしたが、自分のプライドを優先しました。
エプスタインはその場で、「利益の7.5%をもらわないと、やらない」と答えてしまったのです。その後、リチャード・レスター監督は、『ハード・デイズ・ナイト ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!』を製作し、世界中で記録的な大ヒットを収めました。低価格の予算と好条件な出演料によって、同社は莫大な利益を上げたのです。
逆にエプスタインはこの交渉ミスで、この映画では利益を上げられませんでした。エプスタインが強気の出演料を伝えたり、その場で即断をせずにプロをチームを入れることで、結果は変わったはずです。
成功と失敗の分かれ目はどこにある?
エプスタインのようなプライドの高い人は、交渉で失敗を犯します。彼らは自分のエゴに支配され、一人で即断しようとします。
●決断が速く、考える時間を必要としない人
●誰にも確認せずに進めてくれる人
●専門家に相談する必要がない人
●譲歩を懇願しない人
●上司の指示に左右されない人
●交渉の進捗状況をメモに残して、頻繁に照会する必要のない人
一方、パワーネゴシエーターは、交渉に長けているため、以下のようなステップを踏みます。時に愚かな者ように振る舞うことが、実は成功の秘訣なのです。
●承諾の危険性や、追加の要求をすることで得られる可能性について十分に考えることができるよう、熟考する時間を要求する
●委員会や取締役会に確認する間、決定を延期する(委員会や取締役に相談する必要がなくとも、この存在を持ち出します。)
●法律や技術の専門家が提案を検討するための時間を要求する
●追加の譲歩を要求する
●グッドガイ/バッドガイを使い、対立を避けながら、交渉を有利に進める。時に良い役を演じたり、タフに振る舞うことで、相手から良い条件を引き出せるようになります。
●交渉内容の記録を見直すという名目で、考える時間を取る
パワーネゴシエーションのプロセスは、坂道で自分よりもはるかに大きなゴムボールを押し上げるようなものです。あなたはボールを丘の頂上まで押し上げようと力んでいます。丘の頂上とは、交渉で最初の合意が得られる瞬間です。そこに到達すれば、ボールを丘の反対側に移動するのは簡単です。なぜなら、最初の合意をした後は、その人は気分がいいからです。緊張やストレスから解放されたという安ど堵感があります。頭の中では、今決めたことを強化しようとする働きがあり、あなたが追加で提案したことも受け入れやすくなっています。
自分が欲しいものを手に入れるためには、本書で紹介されるいくつかの交渉のルールを知っておくべきです。相互利益の交渉は、お互いがWi-Winを目指して、落とし所を探します。お互いが交渉で無意味な競争を続けるのは、時間の無駄なので、時には愚か者を演じて、相手の譲歩を引き出すのです。
タフな交渉人は、“間抜けな行動”が競争心を和らげ、相互利益への道を開くことを知っています。以下の5つのポイントを実践することで、交渉が上手く進みます。
①間抜けな行動は、相手の競争心を和らげる。
②無表情でいることで、相手があなたを助けてくれる。
③言葉の定義を聞いてみる。
④何かをもう一度説明してもらう。
⑤自分の専門分野では間抜けにならないこと。
交渉では、知ったかぶりを避け、相手の説明を丁寧に確認し、抜け漏れを防ぎましょう。大切なことは文章に残し、曖昧さがなくなるまで、取引を決めてはいけません。
本書のノウハウを使えるようにすることで、交渉がスムーズに進み、ビジネスでの成功確率を高めてくれます。相手と無意味な競争をするのではなく、相手が自分が勝者になったと思える交渉を心がけましょう。
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